MnCr-marble
篝火
1枚目 初景
この世界にある物質、物体、物象には色彩が宿っている。炎の色は熱く、水の色は冷たい、そんな色を使い人々の生活は豊かになってきた。大地には色の通った地脈が流れ、自然と色が溜まり、人々の住む土地にはそこが基盤となり歴史が築かれた。
時は進み、土地をめぐる色の利用方法は様々な用途に分岐し発展している。最たる例として、新たな領土の開拓を主とした職業の冒険者が使用する武器、防具が挙げられる。そんな冒険者は、今では帝國に包括化されて冒険団として大衆に認知されている。そんな中、色彩武具を使用せず己の体に色を宿した冒険者が登場し始めた。
そして、ここは、遺跡と呼ばれる場所。
遠くから鳥のような生き物の鳴く声が聞こえる。森林を掻き分け、物々しい雰囲気を醸す黒いマントを身に纏った男が遺跡に向けて進んでいる。彼の後ろには同じ様に奇抜な格好の仲間が数人、それぞれ武器のようなものを担いで歩いていた。
「遺跡はまだかかりそうかー」
「もうそろそろ着くはずですが」
先頭をいく黒マントが問いかけるとハンマーを持ったメガネが返事をする。
彼らは装備などの様相からここまで戦ってきたことがわかる。遺跡までの道のりは都市から出てすぐに広がるキャンバス平原を超えるものである。もちろん平原にも森林にも
「このデカい扉の向こうにあるのか」
「やっと着いたね……」
「こんなに削られるなんて想定外だな、ヤマト」
「あぁ、でもな……」
「俺がいるから大丈夫だ、全快したら突入するぞ」
団員が各々勢いよく返事を返す。
今、この集団が入っていったのは森の遺跡と呼ばれている場所。内部は扉をくぐった先とは思えない空間が広がっている。空は青く広がり木々が生い茂っている。目を向けると、薄緑色の牛のような生物が二足直立で歩いている。その
*****
なんだよこの強さは。全然歯が立たねぇじゃねえかよ。持ってる色をぶっ放すだけでだいたい勝ててた今までが遊びだったみたいだ。現に団員は俺以外床に突っ伏して倒れてる。アイツには土埃のせいで見つけられていないがそれも時間の問題だろう。
「くっそ……強くなれた気がしてた、俺いい気になってたんだ」
呟いた刹那、無骨な棍棒が襲いかかる。走馬灯が頭をよぎる。冒険を始めた頃は良かった、知らない世界に連れてこられた不安なんか与えられた自分の力を目の当たりにしたら吹き飛んだ。最初の町から少し出て
*****
既の所で攻撃が止められる。汚れてボロカスになったマントに向けられた棍棒は大きく弧を描いて遠方に飛ばされた。
「大丈夫かい、異界からの冒険者さん」
攻撃を往なした男はヒラヒラと語りかける。状況も相まってか否か、男の体躯は倒れているマントの少年より筋量、背丈ともに大きく見える。だが、その態度に圧はなく、むしろ優しさを取り繕っているような薄っぺらさすら覚える。
「戦闘続行可能……では無さそうだね」
黒マントは生唾を飲み込み、ゆっくりと首を縦に振る。
「想像より遺跡のやつらは強かったろうね、だけど君は自分の戦闘に足りないものに気づけたはずだ」
話を遮るかの様に雄叫びを上げながら棍棒の持ち主のドン・ブブが突進してくる。だが、その進行はすぐに遮られることとなる。
『
「少しおとなしくしててね」
その男は手に収まるくらいの石を刀に変形させて、投擲した。ドン・ブブは吹き飛ばされ樹木の幹にその身体ごと磔にされた。
「一撃で……」
「君にもこのくらいならできるさ、それだけの能力はあるはずだ」
「どうだい?まずはそこに伸びてるのやっつけてレベル上げときなよ」
「いや、でも……」
「いいからいいから」
起こして背中を押す。重い足取りで歩き、先程圧倒されていたものが虫けらみたいになっている様子をマジマジと見せつけられる。
「適当に色出してみな、体力もうほとんどないだろうから」
『
「思い切りがいいね」
黒マントのレベルが上がった。ドン・ブブを倒した分の経験値がごそっと入る。
「さて、ここで提案なんだけど、今みたいに」
男が樹木から刀を引き抜き、少し溜めてこう言った。
「お手伝い、入りませんか?」
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