第298話 突然手が空いてしまった
さてそんな訳で新たな住人と現ラーセット人という新たな火種が出来てしまいましたので、4庁会議を開きます。
……としたかったのだが、正直言って軍務庁も内務庁もそれどころではない。というか、彼らが最前線だからな。
ここで無関係の俺が会議を開いたって、この世界の先輩でありプロである彼らに対して何が出来るというものでもない。
となると――、
「暇だー」
なんだか、本当に久しぶりに手が空いた。
じゃないな。今まで手を空けなかったんだ。そんな暇があったら、やる事は幾らでもあった。
新規の召喚者が
まあ
でも心配じゃん!
だけど実際、彼らの自立を促す為にもある程度は自分でやらせた方が良いのも事実。
……本当にどうしよう。
本来なら、これを待っていたんだよな。
召喚者が増え、団結し、トラブルなく探索する。
当然ラーセットは復興し、戦災を体験した彼らにとっては召喚者とは救世主だ。
よほど頭が膿んでいない限り、そんな彼らと望んでトラブルを起こすような馬鹿はいない。
多少は羽目を外すものもいるが、そこは教官組が目を光らせている。
完璧すぎて怖い位だ。
そしてこの状況になったら、俺はようやく自由の身……って訳ではないな。まだ北にあるマージサウルという敵国に睨まれている。
まったく、和平はいつになるのやら。
だけどそれなりに自由な時間が作れるのは確かだ。
出来ればこの機会に奴の本体を見つけて討滅する。状況を考えるとまだそこまでは動けないかもしれないが、全てはそのためにやって来た訳だよ。
でも落ち着いて考えてみると、色々と考えなきゃいけない事が多すぎるんだよね。
今更だが、少しおさらいしておこう。
高校生の俺はやがてこの世界に召喚される。というか、召喚する。そして時計の針を体内に入れて地球へ帰す。
そうしなければ、ラーセットが最初に襲われた時、俺が召喚されなくてこの国が滅んでしまうからな。
当然、その俺はラーセットでの記憶をなくし、
その怒りと憤りが原動力となって、俺はあの狂気の世界の中でも自我を保って生き延びたんだ。
いや待てよ?
それは必要かと言われると分からない。だけどこちらの世界で、奴らをスキルで一掃できた。
でも高校生の俺が、イェルクリオの首都ハスマタンで戦った時には無理だった。
あの研究成果は、何らかの形で俺の中に根付いていたのではないだろうか?
まあ無ければ無いで、ラーセットがもっとボロボロになっただけで対処は出来たと思う。
というかさ、
多分だが……もなにも間違いなく、今までの俺は生きた人間を地球に帰すことは出来なかった。
もしできるのなら、
となると、答えは限られる。今までの
……まあ後者の方が確率は高いな。二人まで地球に帰せるのなら、俺なら俺と
でもまあ、一緒に居られる期間はせいぜい10年か……。
だけど奴さえ現れなければ、
やはり本体が地球に行く前に倒さないといけないな。
ただ実に面倒くさいが、その場合は向こうで奴の研究は出来ない。
再度召喚された俺よ、すまないな。お前は何の知識も無しに奴らを倒し、この国を救わなくちゃならない。頑張ってくれよ。
さて、その高校生の俺を、奴らと戦えるまでに鍛えるのも俺の仕事だ。
弱ければ弱い程、ここに召喚された時に役立たずになる。最悪の場合、命尽きてエンディングだ。
当然ながら、高校生の時や日本に帰ってから死んでしまっても同じ事になる。
ぐるぐると輪を作っていた時間の紐は、ラーセットの滅亡を気に一本の糸となるわけだな。
もうその先は一切変わらない。俺にとっても地球にとってもエンディングだ。
……困ったな。今までの
昔、勝手に動いて勝手に死んじゃう奴をゴールまで導くゲームを先輩とやった事があるが、何と言うかそんな感じだな。しかも超ハードモードじゃねーか。
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