第257話 いやそんなつもりはないぞ
そんな事をしている内に、3ヵ月の研修期間は終了した。
結局一度も地上には帰らなかった。それだけ戦利品は少なかったって事だ。
だけどまあ、最初としては何のトラブルもなく生きて帰って来ただけで十分な成果だ。これからの探索は彼らに任せても良いだろう。
帰還した彼らを祝して、簡単なパーティーを開いた。
出席者は全員。これは本当に嬉しい。何かトラウマを抱えて引き籠っていたりなんかしたら本気で困る。
パーティーは立食形式。他の現地人との交流もしてもらいたかったからね。
因みに翻訳は神殿庁の女の子たちにやって貰っている。まだちょっとぎこちないが、結構日本語を覚えてくれたしね。
向こうからはこちらが認識できないので、自分から声をかける事にした。
「やあ、
「うわっと! は、話しかけるならもう少し合図してくださいよ」
思いの外慌てた彼は、持っていた料理を落としそうになってしまった。不意打ちに弱いタイプらしい。これは申し訳ない事をした。
「もう少し判別できるようにした方がいいかな。こう、全身ローブを纏うとか。ただ顔とかは人間性とかは隠すけどね」
「それで浮遊すると、なんか幽霊みたいになるそうですね」
「クロノス様ですよね? どうしてそうやって姿を隠すのですか?」
そう尋ねてきたのは戦闘のワントップ、
他の4人は高校の制服を着てきたが、彼女だけはこの世界のドレスを纏っている。
そして当然ながらこの世界だ。布地は多い方とはいえ、上はクロスしたブルーの布地で乳を隠しているだけ。布地の下は生だからとはいえ、結構大きいな。ちなみに背中は丸見えだ。
黄色く少し透けたスカートは床に近いほど長いが、それは後ろだけ。前から見ると鮮やかなブルーの下がモロだ。まあ下着というより少し厚手の水着といった感じではあるが。
早くもこの世界の服を受け入れている辺り、適応力が高いのだろう。
というか――、
「私は周辺国など召喚者を快く思わない者たちに命を狙われていてね。自分だけならまだいいが、連中は平然と民間人を巻き込むからな。普段から特定できない様に、こうして姿を隠しているわけだよ」
これ最初に説明したよな?
ワントップの分、スキルの使用が多かった。もう精神的にヤバいか?
見た限りだとそうでは無いが、俺も壊れた召喚者に詳しいわけじゃ無いからな。
ここは大事を取って――、
「ああ、そんな事言っていましたね。ちょっと舞い上がっちゃって、ちゃんと聞いていませんでした」
うん、そうならいいんだけどね。
「体調や気分に関して不調があったらすぐに休息を取るようにな。
「クロノス様は別行動ですか?」
「やっぱり最高司令官ともなると、地上勤務ですか」
「いや、こっちはこっちでちょっとやる事があってね。これでも結構、忙しいんだよ」
そんな談笑をしながら、どうしても
彼女は三角帽子を持っていた
大皿に山盛りの肉や野菜を乗せてモリモリ食べている。
かつての教官組の一人。俺とは縁が全く無かったが、普通の召喚者に教官組が務まるとは思わない。ここからどのように成長するのか気になる所だ。
その夜、俺は久しぶりにケーシュとロフレの二人を相手に汗を流した。
いや実際に、ずっと認識を消しているのは疲れる。実際にはスキルを切って休んだりもしていたが、目を離すと何をしでかすか心配でずっと緊張しっぱなしだった。
今こうして心の平穏を得られた幸せに感謝だな。
「……もう動けない」
「久しぶりで嬉しかったけど……クロノス様激しすぎ」
「ああ、すまない。久しぶりに会えて嬉しくってね」
「そう言って頂けるなら嬉しいであります」
本当に素直でいい子たちだな。だけど――、
「でも、もし他に彼氏とかが出来たらいつでも言ってくれよ。ちゃんと祝福して送り出すからな」
「……同郷の人が来たから、ボクたちはもう不要なの?」
ロフレの表情が見る見る曇る。もう分かってはいるけど、結構感情の上下が激しい子だな。
「そんなわけあるかよ。俺がこの世界の人間だったら、決して手放したりしないさ。だけど以前に話したけど、俺は子孫を残せない。それでミーネルとも別れたんだ。だから――」
「子供を産むだけが、人の幸せではないであります」
「不要になったら何時でも言ってください。でもボクは……」
「分かった、申し訳ない。なら、御婆ちゃんになるまで俺が面倒を見るよ」
ふと思ったが、これをプロポーズというのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます