第6話 失うものがないなら挑戦しない理由はない
「ねえ、どうするの?」
向こうの話はひと段落付いたと判断したのだろう。そう
ここまで、俺もそうだが他の3人もずっと沈黙を保っていた。
俺は余計な事をして、悪い印象を与える事を恐れたからだ。
今は友好的であっても、いざ敵対者になったら成す術が無い。
それに、手の込んだドッキリと言う事もある。悪目立ちは良くない。
他の3人が黙っていた理由は分からないけど、それぞれ思う所があったのだろう。
「いや、なんか宝探しとか面白そうじゃね? それに俺、スキルってのに興味津々だわ。なんかこう、出ろ―とかやると発動するのかな?」
そう言って右手を突き出し左手で支えながら、西山は全身の力を込める。
幸いプルプル震えているだけで何も起こらないが、周りを巻き込むような想定外の力が発動したらどうするつもりだったんだお前。
「私は……やるかな。うん、やる」
そう言って両手可愛らしくガッツポーズをしたのは
なんだろう? いつもボーっとしているのに、目をキラキラさせてやる気200パーセントといった雰囲気だ。
もう長い付き合いだが、こんな奈々を見たのは初めてだぞ。
「いいのか? 危険もありそうだぞ」
「うん。でも失敗してもリスクは無いんだよね? それに成功したら、なにか強い力を貰えるんだよね?」
「まあ説明ではそうだな……」
強い力と聞いてふと思った。そういや、スキルってどんな力のだろうかと。
「それでは皆様のスキルを確認いたします。スキルは1人1つ。ですが、実際にどんな力を秘めているのかは確かめるまで分かりません」
実にタイムリー。実際に確認するまで分からないのか。
発動はどうなのだろう? 予想だと出来ないと思う。
スキルってのがどんな力なのかは分からないけど、さっきの西山みたいに試す人間が必ず出る。
それが戦闘でも使える危険な力というのなら、有無を言わさず最初に確認するだろうからね。
「そしてこれからいう事は大変申し訳無いのですが、この世界に召喚できる人数には限りがあります」
例の14人ってやつか。残りは確か……
「現在、26人の召喚者の方々が迷宮に潜っています。それに貴方がたを加えた40人。それと街に残る10名。これが、この世界に存在できる召喚者の数となります」
「それが何か関係あるのか?」
「説明しろー」
まあもう言いたい事はわかるが、俺は続きを聞くことにした。
「そのため、次の3つに該当する方にはお帰り頂くことになっています。一つは参加を辞退する方。もう一つが、スキルが極めて弱く迷宮探索に耐えられないと判断された方、そして一定期間、何の成果も出せなかった方です」
「おいおい、それはちょっと横暴なんじゃないのか?」
「スキルが弱いと何の問題があるんだよ!」
たしかに前者は当然と言える。人数に限りがあるのなら、やる気のない人間には帰って頂くのが正解だ。
最後のも一応は理解できる。彼らも遊びで俺達を召喚したのではないだろう。そして2つ目であるスキルがダメなやつは、自動的に最後の条件に引っかかるとみなされるのだろう。
これで状況は大体理解した。皆もやる気の様だ。なら、俺もやるしかない。俺達は、何時でも一緒だからな。
さすがに未知の世界で迷宮探索なんてのは初めてだが、まあ何とかなるだろう。
「それではスキルの確認を行います。お一人ずつ前に来てください」
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