第46話 宮池島親睦旅行、「憧れの宮池島に到着~!」編

 内浦港を出発してから約3時間、駿河湾の大海原を航行するMISAHONO号の行く手に、海に突き出た様な山が見えて来た。海上に突如として現れた山は、宮池島のシンボルでもある尖った円錐形の山、野元岳であった。

 その堂々たる野元岳が中央に位置して、島の平野部が広がって行く宮池島の姿が現れて一喜一憂する山楽部の面々。


「見えて来ましたよ、宮池島が! あの尖った円錐形の山が野元岳なんですね。明日には、あの山の頂上を目指して登る様に成るんだな」


「何だか島と言うよりも、洋上に浮かぶ山と言う感じがするよな。巨石が積み重なった、あの独特な山容の山頂が気に成るよね。あんな険しい岩山を登る事が出来るのかな?」


「私は10年前の大学時代に宮池島に訪れた事が有り、野元岳に登った経験があるんだよ。見た目は険しい岩山なんだが、しっかりと登山道が整備されていて思っているよりは、すんなりと山頂まで登る事が出来るんだよ。そして山頂では360°の展望が開けて、絶景を眺める事が出来るんだ!」


「流石は先生、この野元岳にも登っているなんて驚きの一言ですよ。見た目は険しい岩山でも、整備が行き届いているんですね。それなら僕達でも登る事が出来そうですよ」


「見るからに険しそうな山だよな。登山の未経験者である俺に、登る事が出来るか心配に成って来たな。でも、登ろうと言う気持ちがあれば、必ず成し遂げられるから、頑張って挑戦してみるよ!」


 宮池島の姿を眺めていた男子達の第一声は、もっぱら島のシンボルでもある野元岳の事であった。尖った岩山の山頂を持つ野元岳は、威風堂々としていて見る者を魅了してしまうのである。

 その野元岳に必ず登ってやろうと、闘志を燃やす男子達であった。そして女子達はと言うと、男子と同じ様に野元岳に目が行き話が弾んでいるのかと思いきや、島の違う場所に目が向いていた。


「ねえねえ、船が島に近づくにつれて海岸線の様子が見えて来たわよ。港の近くには市街地が見えるわね。以外にビルが多く立っているわよ」


「華菜の言う通り、ビルが多く立っている市街地があるわ。自然がいっぱいの島で、民家がほんの少し有る程度の街並みを想像していたから、予想外に発展している島だと言う事が分かったわ」


 友香里と華菜は、港に隣接する様にしてビルが建てられて市街地が形成されている島の中心部に目が行った様である。宮池島はトライアングル諸島の中では最大の島で人口も3万人あり、離島では有るが島の中とは思えない、近代化の建物が港を取り巻く様に作られて、市の中心部は賑わいを見せているのである。


「ちょっとちょっと、港の西側に面している綺麗な海岸線を見て! 凄い真っ白な砂浜が太陽の日に照らされて、キラキラ耀いているわよ。海も鮮やかなエメラルドグリーン色をしていて、まさに南国の海って言う感じがするわ」


「今、見えて来ている綺麗な浜は、東洋一の美しさと言われている前田浜ビーチと言いますのよ。東西7㎞に及ぶ雪の様に白い砂浜と、透き通ったエメラルドグリーンの海は゛宮池ブルー゛と呼ばれていますの。穏やかな海なので、海水浴やマリンスポーツを楽しむ事ができますわ」


「如月さんは、凄く宮池島の事に詳しいわね。あっ、そうか! この島に別荘が有るって事は、当然ながら家族で宮池島に滞在しに来ているって事よね。これは、島の事で知りたい事、分からない事は如月さんに聞けば良いって事よね」


 穂乃花と高坂が島の全景を見て気に成ったのは、港の西側に伸びている白砂浜の海岸と青く透き通った海だった。この海岸は゛東洋一美しい゛と言われている前田浜ビーチと言って、きめ細やかな白い砂浜と透き通ったエメラルドグリーンの海は、見る者を釘付けにしてしまうのである。


「高坂さんと言ったかな、あの前田浜ビーチに真っ先に目が行くとはお目が高いね。先生から貰った予定表では、あの美しいビーチで海水浴を行う事に成っていたかな。だから皆さん、楽しみにしていると良いよ」


「そうなんですね。先生は、あんなに綺麗なビーチで海水浴をするとは教えてくれなかったわ。もしかして先生ったら、この事を隠していたんじゃないかしら? も~う、勿体ぶって教えてくれないなんて!」


「おいおい、そんなに私を白い目で見ないでくれよ。確かに君達には、あの美しいビーチで泳ぐ事は言ってなかったがね、行動予定には゛海水浴有り゛と記載してあっただろ。まあ、予告はしてあったんだし、大目に見てはくれないかね」


「そう言われると、確かに行動予定表には゛海水浴有り゛と書いて有ったわね。そうすると先生は勿体ぶって、わたし達には詳しい事を伝えなかったのね。先生は、お楽しみの事は黙っていて後で喜ばそうとしていたんでしょう」


「ハハハハハ! 高坂さんの言う通りだよ。これだけ綺麗なビーチで泳げる事を黙っていた方が、当日に現地に着いた時に喜びが倍増すると思ったんだ。だから、明日にビーチに行った時は、見た瞬間に驚きまくって感激に酔いしれてくれたまえ!」


「だそうですよ、高坂さん。詳しい事は黙っていて、皆んなを驚かせる作戦だったなんて。流石は山岸先生ですね。その焦らし作戦に答えてに明日は思う存分、宮池ブルーと言われている前田浜ビーチを満喫してやりましょうね」


 東洋一美しいと言われているビーチで海水浴をする事を、詳しくは皆んなに伝えていなかった先生。その焦らし作戦に見事に引っ掛かってしまったが、穂乃花と高坂は寛大な心で先生を許して、明日のビーチでの海水浴に期待に胸を膨らますのだった。

 んん? ところで他のメンバー達は、今の話を聞いて居たのか? 近くに居たのだから聞いていたのかと思いきや、隼人と岸本はそのまま山の事に夢中で、友香里と華菜は市街地を指さしながら話に没頭中。見晴らしの良い船の操舵室から見て感じる所が違い、千差万別の様である。

 まあ、明日の海水浴の時間が来れば、その場に立った時にビーチの美しさに度肝を抜かれて、皆んなの喜ぶ姿が目に浮かんで来ますね。そんな、入港前の賑やかな面々が乗るMISAHONO号は、着々と港に近づいて行き内港に入ると速度を落とし、ヨットやクルザーが停泊する場所に移動して行く。

 そして、所定の接岸位置に辿り着きエンジンが停止して係留ロープが掛けられて、遂に宮池島の港へと入港を果たしたのである。


「さあ、これで係留が完了したよ。皆さん、MISAHONO号は只今、宮池島に接岸しました! さあ、これで桟橋を掛け終わったら、皆んな橋を渡って宮池島の上陸をしなさい」


 係留ロープを掛けて桟橋を渡し終えた雅也は、大きな声を上げて、宮池島到着を皆んなに宣言する。その報を聞いた一同は、一斉に喜びの声を上げる!


「やったー! 遂に僕達は、宮池島に来たんだ。憧れのリゾートアイランドに来たんですよ」

「おう! 宮池島に到着したね。これから俺達は上陸して、記念すべき第一歩を島に刻むんだね!」


 船の手摺から身を乗り出し、真っ先に喜びの声を上げる隼人と岸本。到着を果たした事で、テンションはMAXの様である。


「私達は、とうとう宮池島に到着したのね。山々の澄んだ空気や鮮やかな緑、エメラルドグリーンの海。全てを兼ねそなえた魅惑の島に来たのよ〜」


「早く島に上陸して、記念すべき第一歩を踏みしめたいわ。ねえねえ、船から降りる時に女子4人で手を繋ぎながら掛け声を上げて、一斉に上陸をしましょうよ!」


「ちょっと待ってよ、杉咲さん! 船から降りる時はあの細い桟橋を歩いて行くから、手を繋いで一斉に降りるって無理じゃないかしら? 他に降り方を考えた方が良いんじゃないかしら」


「高坂さんの言う通りよ。確かに手を繋いで一斉にと言うのは無理が有りますの。……それじゃあ、こうしたら如何かしら。一列に並んだら、前の人の肩に両手を置いて繋がって、電車ごっこの様にして桟橋を渡って上陸を果たせば良いんじゃないかしら」


「あっ! それ良いんじゃない。如月さんは、良い事を思いつくわね。その様にしましょうよ、友香里、高坂さん!」


「うん、それで良いわよ。宮池島に到着~って感じで降りましょう」

「わたしも、オッケーだわ。そうと決まれば、荷物を背負ったら実行に移しましょう!」


 女子4人組は息を合わせて一心同体になり、記念すべき宮池島への第1歩を踏み出したい様である。そうと決まった途端、直ぐさま女子達は自身の荷物を背負うと、一列に並び肩に手を置いて電車ごっこのポーズを決め込め込んで行く。だが、ポーズを決めようとしたところ、何故か動きを止めようとしてしまう。


「ちょっと待って! 先頭にいる華菜は両手が空いているからバックも持てると思うけど、後ろにいる私達は背中に背負っているザックは良いとしても、前の人の両肩に手を掛けているからバックを持つ事が出来ないわ!」


 どうやら大きな荷物が2つ有る為、前の人の肩に手を掛けるのに支障が有る事に一早く気づいた友香里が声を上げた。すると、その様子を見ていた先生が口を開く。


「君達、2つ荷物を持ちながら電車ごっこのポーズを決め込むのは、無理がある事に気づいた様だね。まあ、その解決策を私が教えて上げても良いんだがね」


「えっ? 解決策が有るの。勿体ぶってないで早速、教えてください先生!」

 先生から解決策が有ると聞かされて、すかさづ教えて欲しいと問い掛ける友香里。


「良いだろう教えてあげるよ。解決策は至って簡単だ。バックを両肩に掛けて胸に抱え込む様にすれば良いじゃないか。そう、私が笠取山で如月さんを手助けする為に取った行動を実行すれば良いのさ」


「そうか! その手が有ったわ。あの時に先生が取った行動を真似れば良いのね。そうと分かれば、皆んなもバックを肩から掛けて胸で抱き抱えるのよ」


「分かったわ! あの穂乃花の窮地を救ったバック胸抱え作戦をすれば良いのね」

「えっ? 何々? そのバック胸抱え作戦てどうゆう事なの。わたしには皆目、見当が付かないわ」


「まあまあ、高坂さん。深く考えないで、わたくし達と同じ様に行動を取ってくださいね。そうすれば、両手が空くと言う事が分かりますわ」


 先生から、あの笠取山での手助け作戦の時の様にすれば良いと聞いた女子達は、持っていたバックを速やかに肩に掛けると、胸で抱き抱えて行く。そして華菜を先頭にして友香里、高坂、穂乃花の順に両肩に手を掛けて電車ごっこポーズを決め込む。


「おお~まさに私が笠取山で取った行動の様に、背中と胸に背負う事が出来たね。よ~し、これで準備が整ったではないか。早速、出発して桟橋を渡り、宮池島に上陸をしたまえ!」


「先生から、出発のゴーサインが出たわよ。じゃあ皆んな、桟橋を渡って宮池島に上陸するのよ。出発進行~!!」

〚オッケー! 宮池島に上陸しましょう。出発進行~~!!〛


 友香里から掛け声が掛り、電車ごっこのポーズを決め込みながら桟橋を渡って行く女子達。たった5mの桟橋を渡るのに、どれだけの準備と時間が掛っているのだろう。荷物を背中と胸側との両方で背負い、見た呉はカッコ悪い状態で上陸を試みなくても良いと思うのだが。

 女子達は、そこまでして一心同体で島に上陸を果たしたかったのだろうか。その一心同体で渡る桟橋も僅か5mなので、ほんの30秒足らずで渡り切ってしまうのだった。





「やったー! 宮池島に上陸を果たしたわよ。あたし達、女子が一番乗りね!」

「憧れの宮池島に上陸ー! わたし達はこの地への第1歩を踏み締めたのね」


「ちょっと変な格好で上陸してしまったけど、記念すべき宮池島の第1歩を皆さんと踏みしめられたわ」


「荷物に身体をサンドイッチ状態に挟まれながら電車ごっこをしての上陸。わたくしは何回か宮池島に来ているけど、何だか変わった上陸の仕方で思い出に残りそうだわ~」


 電車ごっこの状態で一心同体に成り、桟橋を渡り切って宮池島に上陸を果たした途端、両手を挙げて喜びを爆発させる女子達。すると、その後に続いて先生と隼人、岸本の男子達が追う様にして桟橋を渡って来て上陸を果たす。


「おーし! 遂に南国の島、宮池島に上陸したな。派手な女性陣とは違って、男性陣はごく普通に歩いての第一歩を刻ませて貰うよ」


「女性陣の電車ごっこ行進での島への第1歩を見せつけられてしまいましたね。僕も電車ごっこ入場に参加したいくらいでしたよ。何はともあれ、とうとう宮池島に足を踏み入れましたね!」


「最後に到着するのは俺だよ! 女性陣に比べれば、俺達男性陣は地味な到着の仕方だけど、皆んなが宮池島への記念すべき第1歩を踏み入れたね。これからの島での生活をエンジョイしましょう」


 荷物を担ぎ普通に桟橋を歩いて地味に上陸を果たした男子達も、到着した嬉しさからか満面の笑みを浮かべて、お互いにハイタッチを交わし合って喜びを爆発させる。

 こうして山楽部御一行は、親睦旅行の目的地である南国のリゾートアイランド、宮池島へと上陸したのであった。そして、山楽部御一行の到着した喜び様を見届けた雅也と美沙が、最後に桟橋を降りて駆け付けて来た。


「皆さん、凄い喜びようですね! それだけ、この宮池島へと思いを馳せていたと言う事でしょうな。島での3日間の生活を存分に満喫して行きましょう」

「ここまでの船旅、お疲れ様でした。この南国の島で、これからの3日間を皆さんと楽しく過ごして行きたいと思いますので、宜しくお願いしますね」


「はい、こちらこそ宜しくお願い致します。ここまでの船旅だけでも、素晴らしい体験が出来ました。これから島で過す3日間も、そちら様の別荘に泊まらせて頂く様に成りますので、宜しくお願いします。君達も、改めてお願いを申し上げる様に!」


〚はい! これから3日間、お世話に成りますので、宜しくお願い致します!〛


 山楽部の面々は宮池島での3日間、宿泊先の別荘を提供してくれる如月夫妻に対して再度、深々と頭を下げて感謝の念を伝える。そして、その意気込みを受け取った雅也と美紗は、コクリと頷いた後、笑顔を見せながら口を開いた。


「女性陣の電車ごっこ上陸作戦は、見ていて面白かったですよ。穂乃花が一緒に成って行動するのを見て、皆さんと仲が良いのが分かりましたよ。とにかく、これで全員が宮池島に上陸をしましたね。これからの3日間、この南国の楽園の島で沢山の思い出を作って行ってください!」


「皆さんの丁寧な感謝の気持ちを受け取りましたよ。島での3日間、私と家内も山楽部の一員に成った気持ちで過ごさせて貰いますよ。

 それでは、まづは別荘の方に案内を致しましょう。この港に倉庫を借りて有りましてね、そこに自家用車を止めて有るんです。車は2台有るので、私と美沙の運転でご案内しますよ」


「おお~何と、この島の中で自家用車を持っていると。しかも2台も! 流石は如月家ですね、驚きましたよ。これで別荘まで行くのも、速やかに移動できますね。お言葉に甘えさせて頂きますので、宜しくお願いします!」


「ああ~良いのだよ。先ほども言った様に、私共もこの3日間は山楽部の一員に成って行動を共にさせて頂く所存です。車の送迎も当然ながら、させて頂きます。では、私と美沙は倉庫に行って車を取って来るので暫くの間、ここで待って居てください。美沙! 早速、倉庫の方へ行こうではないか」


「はい、貴方! 速やかに車を取って来ましょう~」


 倉庫は、船が停泊している場所から200mほど離れた所であろうか、雅也と美沙は自家用車を撮りに行く為、倉庫の方へ歩いて行く。そして2人が倉庫に辿り着き、5分ほど経った時、シャッターが開かれて2台の車が姿を現した。1台は軽自動車、もう1台はミニバン車の様だ。

 エンジンが掛けられた車は倉庫から出て一旦止められると、ミニバン車から雅也が降りて来てシャッターを閉める。そして再び雅也が車に乗り込み、2台の車は再発進して皆んなが居る所へと到着をするのだった。2人は到着すると直ぐに車を降りると、笑顔を見せながら皆んなに近寄り口を開く。


「さあ皆さん、2台の車に分乗して乗ってください。どの様に分乗するのかですけど、私のミニバンには女性陣の4人に乗車して貰いましょう。あとの男性陣の3人は家内の軽自動車に乗ってください」


「ここから、私達の車にて別荘へと送らせて貰います。別荘は島の市街地を通り過ぎて行った所に有り、ここから20分ほどで着きますわ。さあ皆さん、車にお乗りください。男性陣は、私が送らせて貰いますね」


 車に乗るのを促された山楽部御一行は、女子達は雅也の車に、男子達は美沙の車に分乗して行く。そして、乗り終わったのを確認した雅也と美沙は車のエンジンを再始動させて一路、別荘を目指して車を走らせて行く。

 先に走るのは雅也のミニバン車、あとに続くは美沙の軽自動車だ。港を出た2台の車は市街地に入り、島で一番の繁華街通りを走って行く。


「これは、凄く観光客が多いですね。今、車が通っているところは、何と言う名前の繁華街になるのかしら?」


「流石は宮池島で最大の繁華街だわ。沢山のお土産屋さんが連なっているから観光客も集まって来ると言う事ね」

「お土産屋さんだけではなく、飲食店も多く有るようよ。ここに来れば、食事に困る事は無さそうね!」


 沢山の観光客で賑わいを見せる繁華街を目の当たりにした女子達。島に上陸した早々に、気持ちが昂ぶってワクワクしている様だ。


「この通りは国師通りと言ってね、宮池島で最大の繁華街で有るんだよ。お土産屋さんは勿論のこと飲食店や娯楽施設など、ここに来れば何でも事足りてしまうんだよ。そうだな~自由時間があったら是非とも、この繁華街に来て楽しんでみると良いよ」


「お父様の言う通り観光客が楽しむには、この国師通りに来れば事足りてしまうと思うわ。確か行動予定表には、明日の夕方の時間に自由時間が設けられていましたの。その時にお土産を見がてら、この繁華街に来ましょうね!」


 宮池島に別荘を持っている為、当然ながら国師通りの繁華街にも来ている雅也と穂乃花は、添乗員に成ったかのごとく話す。その話しを聞いた友香里と華菜、高坂は、期待に胸を膨らませて、この繁華街に来ようと誓うのであった。

 その期待に胸を膨らませる山楽部の面々を乗せた2台の車は、国師通りを通り過ぎると住宅街に入って行く。どうやら、如月家の別荘が有る場所に近づいて来た様である。


「さあ皆さん、もう次期この住宅街の一番奥に赤い屋根の2階建の建物が見えて来ます。その建物が、今日から泊まって頂く別荘に成りますから、皆さん有意義な時間を過ごしてください!」


 雅也から次期に別荘に着く事を告げられた女子達は、期待に胸を膨らませて今か今かと赤い屋根の別荘が現われる方向に目を注ぐのだった。そして、雅也のミニバン車の後ろを走る美沙の軽自動車の中でも、もうすぐ目の前に現れるだろう赤い屋根の別荘に心を馳せている男子達が居た。


「この住宅街の一番奥に赤い屋根の別荘が有りますのよ。もうそろそろ、建物が見えて来ると思いますわ」

「赤い屋根の別荘だから、一目見ればそれだと分かりますね。泊まらせて頂く別荘はどんな所か楽しみですな」


 美紗から、別荘がもう時期見えて来ると聞かされた先生と2人の若者は、泊まる事になる赤い屋根の建物を見ようと、車の中から前方に目を注ぎ心を馳せているのだった。すると、その時! 後ろの席に座る岸本和也が前方を指差しながら声を上げた。


「あー! 真直ぐ先を見てみて。赤い屋根の2階建ての建物が見えて来たよ。あれが泊まる事に成る別荘じゃないかな!」

「あっ! そうだね、赤い屋根の建物が見えて来たよ。何て大きな2階建ての建物なんだろう。庭も広くてプールまで有るじゃないか」


「君達は、神経を研ぎ澄ましていたんだろうな。いち早く別荘を見つけた様だね。私は今、気が付いたところなんだよ。それにしても、豪勢な建物だね。まるでお城の様じゃないか。これは泊まるのが楽しみに成って来たよ!」


「皆さん、あれが如月家が所有する別荘ですのよ。8LDKの広い建物ですから、皆さんに清々と寛いで貰えるとおもいますわ。さあ、前を行く主人の車に付いて別荘の駐車場に入りますわよ~」


 遂に山楽部御一行を乗せた2台の車は、宿泊地である如月家の別荘に辿り着き駐車場へと車は到着をする。到着すると一斉に車から降りた山楽部一同は、豪勢な赤い屋根の別荘をジッと見つめるのだった。


「おお~凄く大きな建物で、何だかお城の様に見えて来てしまうね。こんなに豪勢な別荘に泊まれるなんて私達は幸せ者だな。皆んな、改めて如月夫妻にお礼を言う様にしましょう。星野さん、この場は君が号令を掛けたまえ !」


「尖った赤い屋根をしていて、変わった形をしている建物だなあ。何だか、清流学園の校舎を彷彿させてくれますよね。こんなに素敵な場所で泊まる事が出来るなんて、本当に僕達は幸せ者ですよ。

 この別荘に入る前に、皆んなで感謝の念を如月夫妻に伝えましょう。泊まらせて頂き、有難うございます!」


〚素敵な別荘ですね。お世話に成りますので宜しくお願いします!〛





 先生から号令の音頭の指令を受けた隼人は大きな声で感謝の言葉を述べると、他のメンバー達も呼応して頭を下げながら大きな声で感謝の念を如月夫妻に送るのだった。一体、今日一日で何回感謝の言葉を言い頭を下げて来たのだろうか。それだけこの親睦旅行には、如月家のバックアップが大きく関わっているのだから無理も無いのである。


「まあまあ皆さん、そんなにかしこまらないでください。この3日間は私共も、皆さんと同じ山楽部のメンバーの一員に成ったつもりで居るのです。だから誠心誠意、皆様のバックアップをして行く所存ですよ」


「主人の言う通りですよ。何か私達の好意を受ける度に頭を下げられてしまっては、わたし達も戸惑ってしまいますわ。ですから今後はもう、どの様なもてなしをしても、普通に受け止めてざっくばらんにして欲しいですわ」


「そうですか、その様な温かいお言葉を頂けて本当に嬉しいですよ。お言葉に甘えて今後は、そちら様のご好意を有難く受け止めて気を楽に過ごして行く様にしましょう。君達も今後に控えている、おもてなしの数々に気を楽にしながら受け止める様にしなさい!」


〚分かりました。今後は、ご好意に甘える様にして行きます!〛


 雅也と美沙から、かしこまらづに、もっとざっくばらんに接する様にと言われた山楽部一同は、その事を受け止めて好意を受け留める事を決意し、笑顔を見せながら声を上げるのだった。


「これで皆さんと私達は、やっと一心同体になれましたな。この親睦旅行中は私共も山楽部の一員として楽しく一緒に過ごして行く所存ですよ。それでは、別荘に案内致しますので各自、荷物をお持ちに成って私の後に付いて来てください」


「ご好意に甘えると言う返事を聞かせて頂き嬉しいです。これからの3日間、楽しく山楽部の皆さんと過ごさせて貰いますわ。では、わたし共の別荘にご案内いたしますわね」


「そうですね、今日からの旅行中は如月夫妻も山楽部の一員として一心同体に成ると言う事ですな。それでは諸君、荷物を速やかに持ったら別荘の中を案内して貰いましょう!」


 先生からの言葉を貰ったメンバー達は、速やかに車から荷物を降ろして持つと雅也と美沙の元へと整列をする。その様子を確認した2人は、皆んなを連れて別荘に通じる階段を登って行く。

 そう別荘は小高い丘の上に建てられていて駐車場から階段を登る必要があるのだ。その階段を登りきって別荘の玄関前に辿り着いた一同の目の前には宮池島を見下ろす景色が広がっていた。その景色を見て声を上げる山楽部御一行達。


「うわ~別荘が他の建物よりもだいぶ高い位置に有るから、宮池島の海岸線まで見渡す事が出来るわ」

「まさか、こんなに高い位置に別荘が建てられているなんて思いもよらなかったわ。こんなに素敵な景色が見られる別荘に泊まれるなんて、あたし達は幸せ者だわ!」


「まさに、リゾートアイランドの宮池島を堪能する為に建てられた別荘よね。建物も何だかお城の様なデザインで、お姫様気分で泊まる事が出来そうね」


「この別荘は小高い丘の上に建てられているから、宮池島の市街地や海岸線を見下ろす事が出来ますのよ。皆さんに泊まって頂く部屋は2階の海側の展望抜群の部屋に成りますの。これから両親が部屋に案内しますから、楽しみにしていてください」


 小高い丘の別荘から望む宮池島の展望に息を呑む女子達。更にお城の様なデザインの別荘を目の当たりにして、中に入る前からテンションは上がる一方の様である。


「海側を望める部屋に泊まれるなんて素晴らしいじゃないですか。早く中に入って、部屋に行きたいですね!」

「この場所からでも眺めが良いから2階の部屋からは、もっと素敵な景色が眺められそうだよな。とにかく、早く部屋に案内して貰いましょう!」


「おいおい、星野さんと岸本さんは気が流行り過ぎだぞ。泊まらせて貰うんだから、もっと謙虚にならなければ駄目じゃないか。今から、如月夫妻が案内をしてくれるから、大人しく待って居なさい!」


 男子達は展望抜群の部屋に泊まれるとあって、既に気分は別荘の中に行ってしまい有頂天に成っている様で、先生から落ち着く様に注意を受ける始末だ。


「まあまあ先生、良いじゃないですか。別荘が気に入ってくれている様ですから、私共も嬉しい限りですよ。それでは別荘の中を案内しますなで、皆さん私共の後に付いて来てください」


「男性陣は特に流行る気持ちを抑えきれない様ですね。そんなに、わたし達の別荘が気になるなんて嬉しいですわ。では、いよいよ別荘の中に入りますから、楽しみにしていてください」


 雅也と美紗は、自分達の別荘を気にしてワクワク感が止まらない山楽部の面々を見て、ご満悦の様である。そのご満悦の表情を見せながら、2人は玄関を開けて皆んなを別荘の中に誘って行く。玄関を入ると一同の目の前には、2階まで吹き抜けの玄関前エントランスが現れる。

 2階部分に有る窓から燦々と陽射しが差し込み、明るさ抜群のエントランスと成っている。その開放感の気持ち良さからか、両手を広げて何故か深呼吸をする山楽部の面々。まるで山頂に着いて達成感を感じている時の様である。


「皆さん、それでは別荘内の案内を致しますよ。玄関エントランスを入って左側に有るのがリビングルームになります。広さが売り物のリビングで20畳間ほどの広さが有ります。どうぞご覧ください」


 雅也は、まずリビングに皆んなを案内して行く。案内されたリビングは、広々とした部屋の中央にテーブルとソファが置かれている。そして、その隣には、これまた広々としたキッチンが。その様子を見て゛ふ~ん゛と感心した表情を見せる山楽部御一行。 

 そして雅也と美沙はリビングを出ると、今度は反対側のドアを開けて案内をする。そのドアを開けると、洗面所と脱衣場がある。そして雅也は、脱衣場のドアを開ける。そこには、一度に5〜6人は入れそうなジャグジー機能を備えた湯舟が有り、広い洗い場が備えられている。


「こちらが、サウナ施設も併設されている、この別荘ご自慢の大浴場に成ります。後ほど、疲れた身体を癒やしに、ゆったりと入浴してください」


 案内された大浴場のスケールの大きさに、またまたド肝を拔かれてしまう御一行達。この親睦旅行では、如月家のステータスの大きさに驚かされるばかりである。


「さあ次は、いよいよ皆さんがお泊りする部屋に案内しましょう。2階に成りますので、私に着いて来てください」


「部屋割りとしては、女子の方は一部屋2人入って貰って二部屋に分かれて貰います。男子の方は先生は一部屋使って貰い、あとのお二方で一部屋使ってください。では、後は主人が案内しますので。わたしはキッチンの方で支度が有りますので、そちらに向いますね」


 美紗は、キッチンに行く事を皆んなに告げると脱衣場を出て行く。そして雅也は皆んなを連れて、2階へと上って行くのだった。2階に上がると長い廊下が有り、その廊下に剃って4つの部屋が作られていたのだ。全ての部屋が宮池島の海岸線を見下ろす様に作られていて、何とも贅沢な部屋の間取りである。 


「はい、それでは部屋割りを伝えます。一番奥の部屋を先生に使って頂き、その隣なりの部屋を星野くんと岸本くんが使ってください。一番手前の部屋は娘の穂乃花と沢井さん、その隣が杉咲さんと高坂さんがお使いください。       

 では早速、部屋にお入りください。4時位まで寛いで貰ったあとは、1回のリビングへと降りて来てください。それまでには夕食のバーベキューの準備を整えておきますので」


「有難うございます、如月さん。有難く部屋の方を使わせて頂きますよ。バーベキューの準備の方も宜しくお願いします。それでは皆さん、各自の指定された部屋へと入って寛ぐ様にしなさい!」


〚はい、分かりました! 部屋へと入ります~!!〛


 先生と山楽部の面々は掛け声と共に、各自の部屋へと入って行く。それを見届けた雅也は階段を降りて、リビングへと向かうのだった。部屋に入った皆んなは、改めて宮池島の景色を見下ろす展望にあっけにとられてしまう。

 街並みより小高い丘に作られた別荘は、美しい海岸線越しにコバルトブルーに輝く海が望めて、うっとりとした気分にさせてくれるのだ。その展望を眺めて、皆んなは心を癒やされながら、1時間半の休息をゆったりと部屋で過ごすのだった。

 そして、時刻は3時50分。雅也から指示のあったリビングへの集合時間が近づき、息を合わせた様にして部屋を出て2階の廊下へと出て来る先生と山楽部の面々。


「なんだなんだ、皆んな息を合わせた様に部屋から出て来たね。何だか余りにもタイミングが良過ぎて、気持ちが悪いじゃないか!」

 余りにもタイミングよく一斉に部屋の外に出て来た面々に、先生は声を大にして驚く。


「そうね、皆んな本当にタイミングが良すぎるわね。きっと、全員がテレパシーで通じ合っているんじゃないかしら~」


「そうよね、このタイミングの良さはテレパシーで通じ合っていたのかもね。わたしは部屋に居て、今が出るチャンス! って言う何かを感じたのよ!」


 先生の問い掛けに、これはテレパシーが通じ合っているのではないか! と言う事を口にする華菜と高坂。


「テレパシーで通じ合っているなんて、華菜と高坂さんは思いもよらぬ事を言うわね。私達は部屋に居て、そろそろ集合時間も近いから、なんとなく部屋を出たんだけどね」


「わたくしは、10分位前には行動を始めた方が良いと思って、沢井さんに声を掛けたんです。でも、同時に皆んなが部屋を出て来たなんて、何だか不思議な感じがしますね」


 友香里と穂乃花は、集合時間が近いから何となく部屋を出たのだと言う。もしかして何か他からの力が加わり、そうさせたのであろうか。


「僕は、そろそろリビングに行こうかなと思っていた時、何かビビビッと感じたものがあって部屋の外に出た感じかなあ」


「隼人もそう感じたんだね。俺も何かビビビッと感じたから外に出ようと思ったんだよ。そう何て言うか、背筋がぞ〜と凍る様な感じがしたんだよ」


「そうなのか、和也もビビビッと来たんだね。確かに僕も背筋がぞ〜としたんだよ。これって、もしかしてアレの仕業なのかな?」

「そう、もちろんアレの仕業なんじゃないかな。これだよ、こんな風に近くに居たんじゃないかな!」


 隼人と岸本は、何か感じて部屋から出たのだと言う。そして、そうさせたのはアレの仕業だと言い出して、岸本にいたっては女子達の前で、アレ(幽霊)の仕草を真似て驚かすのだった。このアレの仕草を真似る岸本を目の当たりにした女子達の中で、いち早く驚き慌てふためく人物が!


「キャ~嫌だ嫌だわ! そんな幽霊がいるだなんて、幽霊が皆んなのを後押しをしたなんて言わないでよー!!」 


 いち早く驚きの声を上げたのは、見かけによらず怖がりの人物、そう! 杉咲華菜である。臆病な華菜はビビリまくりながら、その場から駆け足で立ち去って階段を降りてリビングに行ってしまう。





 「あ~あ! 華菜ったら、本当臆病なんだから。あっと言う間に階段を降りて行ってしまったわ。もう、隼人くん達が幽霊の仕業だなんて言ったりするからよ!」


「杉咲さんが、あんなに臆病な人だったなんて以外だわ。人は見かけによらないと言う事ね。それにしても、岸本さんの幽霊の演技はリアル過ぎて怖い位だったわよ〜」


「高坂さんの言う通り、迫真の演技だったですの。なんだか、岸本さんに幽霊が乗り移った様な感じでしたわ!」


「あ~何て言うか杉咲さんが、あんなリアクションをしてくれると思わなかったです。アレの真似を、ちょっとだけ真似て見ただけなんですけど。そんなに俺の演技は上手かったんですかね」


「うんうん、岸本さんのアレの演技は最高にリアル感が有って上手かったよ。こんなに演技が上手かったら、夜の肝だめし大会でアレの役をやってみたら良いんじゃないかな!」


 華菜をビビらせた、岸本の幽霊を真似た名演技に周りにいた友香里、穂乃花、高坂は驚きの声を上げる。すると隼人は、その演技力を買って肝試し大会で幽霊の役をやったらどうかと提案する。そして、その様子を見ていた先生はクスクスと笑いながら口を開いた。


「岸本さんは、なかなか面白い人だね。演技力が素晴らしくて、役者に成れるんじゃないかな。この演技力を買って夜の肝だめし大会の幽霊役を任したいと言ったところだがね。

 ……でも、残念ながら君の活躍の場所は無いかな。今日の肝試し大会は、この別荘周辺の林道を歩いて近くの展望公園に行って再び別荘に返って来るんだよ。森の中の霊気を感じるリアル心霊体験ツアーと言ったところかな!」


「ええ~! そうなんですね。俺はてっきり、誰かが幽霊役を行って皆んなを脅かすのだとばかり思ってましたよ。まさか、森の中の霊気を感じに行く肝試しだとは、恐れいりました先生!」


「そうか~先生は、よく有る学校の文化祭で行われる様な、人が作ったお化け屋敷は行わない様にしたいと言う事なんだ。この別荘の裏山を越えてく林道を歩けば、森の中に潜んでいるアレが出て来て僕達に近づいて来ると言う、リアルな心霊体験ツアーを先生は考えた訳なのですね!」


 先生は、岸本の幽霊演技力を買って、夜の肝だめし大会で幽霊役に抜擢するのかと思われた。だが、夜の森を歩いて森の中に有る霊気を感じる、リアルな心霊体験をさせたい様である。 

 その事を聞いた皆んなは、リアルな心霊体験が出来るとあって、驚きの表情を見せているのだった。するとその時! 階段下から、大きな声が上がった。


「ちよっと皆んな! いつまで2階の廊下で話しているのよ。心霊体験がどうのこうの言ってなかった? そんな背筋の凍る様な話しなんてしてないで、さっさと降りて来て頂戴。中で如月さん夫妻がお待ちかねで居るわよ!」


 声を上げたのは、怖がり屋の華菜であった。心霊体験の話しをしている皆んなの話しを聞き付けて、引きつった顔を見せながら声を掛けて来たのだ。


「あ~ごめんなさい、華菜! 今からリビングに向かうから、先にリビングで如月夫妻のお相手をしてて頂戴いね!」

「華菜さん、待たしてしまってごめんなさい。ちょっと、今日の肝だめし大会の事で盛り上がってしまっていたのよ」


「そうそう、森の霊気を感じる事の出来る肝だめし大会が開催されるそうですの。華菜も楽しみにして居てね」


 怖がりの華菜をかまう様にして肝試し大会の事を楽しそうに話す友香里と穂乃花と高坂。その話を聞いた華菜は、またまたビビった表情を見せながら口を開く。


「ちょっと~何よ! あたしを驚かそうとしてるの。そんな風に、夜の森の中に入るなんて嘘を言ったって無駄よ。騙されやしないんだからね。ほらほら、そんな事を言っていないで早く下に降りて、如月夫妻の元へと来てよね~!」


 華菜は驚かすのはヤメロ! とばかりに怒った顔を見せながら、早く如月夫妻の元へと来る様に告げると、再びリビングの方へ入って行くのであった。


「やれやれ今の杉咲は、いつもの威勢の良い杉咲だったな。あんなに威勢の良い子が、小さな虫が苦手だったり、幽霊の話しに弱かったりするんだからね。人は見かけによらないものだな。君達は、動じなく居るようだから杉咲の様な感じは無さそうだね。まあ肝だめし大会は、度胸試しで夜の森を歩いて見ようではないか!」


「先生の言う通り杉咲さんは、見かけによらず臆病なところが有りますからね。今日の肝だめし大会が、その臆病さを治してあげる良い機械になるかも知れないですね。あっ! この廊下で長居をしてしまいましたね。それでは皆さん、如月夫妻が待つリビングへと向いましょう!」


〚オッケー! 皆んなで如月夫妻の元へと行きましょう!〛


 隼人の合図と共に皆んなは、ようやく長居した2階の廊下から階段を降りて行き、リビングルームの入口前へと来たのだ。そし入口ドアを明けて山岸先生を先頭に、リビングへと入って行く。すると、そこには待ち構えた様にして雅也がたっていたのだ。


「ようこそ~皆さんが来るのをお待ちしておりました。既に、夕食のバーベキューの支度は出来ておりますよ。杉咲さんは、家内と一緒にバルコ二ーの方へと先に行って待ち構えていますから、行って上げてください!」


「これはこれは遅くなり、すいませんでした。バーベキューの用意までして頂いて有難うございます。お言葉に甘えて、バルコニーの方に行かさせて貰います。それでは皆さん、移動しましょう」


〚準備して頂き有難うございます。バルコニーの方へと向かいます!〛


 雅也に誘われた一同は、リビングから出て外のバルコニーへと移動して行くのだった。するとそこには、20畳ほどの広々とした屋根付きのバルコニーが有り、中央にバーベキューコンロが2台置かれ、それを取り囲む様にしてテーブルと椅子がセッティングされていた。

 テーブルの上には沢山の食材と飲み物が置かれて、直ぐにバーベキューが出来る支度が整っていたのである。


「あっ! やっと皆んな来たわね。あたしは待ちくたびれてしまったわよ。さあさあ、バーベキューの準備は万端よ!」


「お待ちしておりました。準備は整っていますわ。皆様、こちらのテーブルの周りに来てくださいませ。飲み物はお好きなものを取って頂きまして、乾杯をしましょう~」


「いや~これはこれは沢山の食材と飲み物が用意されていますな。早速、飲み物を頂いて乾杯するとしましょう。皆んなも、こちらのテーブルに寄って飲み物を持ちなさい!」


「何だか、杉咲さんが一番待ちくたびれている様ですね。遅くなってすみませんでした。皆さん、乾杯の準備をしましょう!」


 待ちわびて居た華菜と美沙から早速、乾杯をする様にと急かされた先生とメンバー達。皆んなはテーブルの周りに集まって行き、次々とお好みの飲み物を手に取って行く。すると遅れてバルコニーにへと入って来た雅也も近寄って来て合流をしたのだった。


「さあ皆さん、お好きな飲み物を手に取った様ですね。我が家の別荘で旅の疲れを癒して頂く為にも、先ずは。食べて飲んで、お腹いっぱいに成ってください。後には、別荘周辺での肝試し大会が控えておりますよ。

 楽しい島の夜を一緒に過ごして行きましょう! それでは只今より、バーベキューを開催しようではありませんか。皆さん、宮池島でのご旅行を満喫して行きましょう。乾杯~~!!」


〚はい、宮池島旅行を楽しみましょう。乾杯~~!!!〛


 コップを持つ手を高々に上げて、乾杯の声を上げる如月夫妻と山楽部御一行。いよいよ如月家の別荘にて始まったバーベキュー大会。宮池島に上陸してから初日の一大イベントは、まづは食べる事からである。

 今までの清流学園山楽部の動向を振り返ると゛食゛に対する事には計り知れない労力をつぎ込んで来た部活なのである。今回のバーベキューは如月夫妻が用意してくれたので、もしかして高級志向の食材が食せるのかも知れない。

 はてさて、この後のバーベキューは如何なる事やら。次回のバーベキュー話し回を楽しみにしていましょう~!!






















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