3、
この家の中は安全
だいじょうぶ
だけどね
一生、家の中で過ごすわけにはいかないよ
だからね
……よく耳を澄ませてごらん
海の向こうの人たちの言うこと、思うこと
ここから近い国にいて、髪と目の色が同じ人たちの思うこと
見えぬ目を開けて聞こえぬ耳を傾けてごらん
わたしは目を閉じる
同時に過去に降り立ったもう一人のわたしも目を閉じる。
新緑の色がわたしたちのまわりを取り囲む
だがそれは一瞬で
わたしたちはあっというまにからりとした白色の世界に入る
目の前には凛とした赤い丸、歪みなく純粋な円形をした日の丸がある
そこで本当のわたしたちは住んでいる
はじめは小鳥のさえずりのように聞こえたがやがてヒトの声になる
~~~~~~
……ああ、あああ
日の丸は美しい
日の丸の湧水はね、驚くぐらいおいしいの
細やかに手のかけられた豊かな大地、手つかずの自然
澄んだ青空と山に川、空気がまたおいしいのよね、
ああ、日の丸は私の憧れ
だから日の丸に住めるようになったらもっといいわね
素晴らしいこと
これらを手に入れよう
日の丸を私たちのモノにしよう
原住民は家来に奴隷に非国民にしよう
……確かにお前の言うとおり
だから待っていなさい、
必ずお前の意に沿うようにするから
俺だって日の丸が気に入っている。
俺の子供たちのため、孫たちのため
日の丸が欲しい、美しい光景が欲しい
原住民は大人しくて気がやさしいので占拠は簡単だ
気の良い従順な愛すべき若者たち
彼らの創るものは知性と退廃が程よく混在していて俺も大好きだ
政治家にはすでに協力者が大勢いる
だが急いては事を仕損じるから慎重に
ゆっくり時間をかけて占拠しよう、な?
ほんと?
楽しみだわ
ではいずれ日の丸はわれらのモノ
いいね、いいね、すごくいい
~~~~~~~~~~~~~~~~~
かれらの声をきいたわ
わたしのからだがふるえるの
こわくてこわくてふるえるの
ふるえるのがとまらないの
こわい
こわいの
わたし こわいの
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