第12話 街に帰って来た

 休憩を終えた私達は、街に向けて歩き出した。


 ひぃろのサーチで安全なのだけど、ミントさんとローズさんは、やっぱり落ち着かないみたい。周りを警戒しながら歩いている。

 本当だったら、私もそう歩かないとなのだろうけど、ひぃろがとても頼もしくて、任せっきりになっている。


「だいぶ日が傾いてきたね。夜までに街に着けるといいのだけど。ちょっと厳しそうだね」


「そうだね。もし無理そうだったら、早めに野営準備をしないとだね」


「そうね、無理して進んでも良いことはないわね」


 ミントさんもローズさんも野営に賛成だったので、場所を探して準備をする事にした。


「ひぃろ、野営出来そうな所はあるかな? ベリーは疲れてないかな?」


『分かったくま。帰り道から少し離れた所に、広場があるからそこに向かうくま』


『大丈夫だぴょん。みんなにヒールだぴょん!』


「ベリー、ありがとう」


 ベリーのヒールのおかげで疲れが取れて、みんなの足取りが軽くなった。野営場所までひぃろに案内してもらう。魔物には遭遇しなかったので、思ったよりも早く着いた。


「ミントさんとローズさんは、野営準備って何か持ってきていますか?」


「私達はゴブリン討伐だったから、何も持ってきてないの」


「じゃぁ、テントが大きめなので、私達のテントを一緒に使ってくださいね」


「いいの?」


「なんだか申し訳ないわ」


「困った時はお互い様ですよ」


「「ありがとう」」


『ぼくとベリーはお外で大丈夫くま~』


『大丈夫だぴょん』


「全員入れそうだったら、ひぃろとベリーも入ろうね。私も寂しいし……。まずは、テントと火を起こす為の薪が必要だね」


「私達が薪を拾ってくるわ」


「わ、ありがとうございます。お願いします」


『ぼくもお手伝いするくま!』


『私はハルのお手伝いするぴょん』


 テントを取り出して組み立てていく。

 大きめのテントを買っておいて良かった。この広さなら十分全員寝られると思う。


 テントを組み立て終わったら、お夕飯の準備を始める。

 テント周りにシールドを張って安全だから、お肉とか焼こうかな。この前手に入れた、ブラックウルフのお肉とウルフのお肉両方食べ比べてみよう。


 ミントさんとローズさんの気持ちが、少しでも落ち着いてくれるといいな。


 コンロを出して、お肉を切り分けていく。パンはアイテムボックスに入っているからそれを出そう。後はスープが欲しいな。

 玉ねぎとキャベツにトマト、ソーセージを刻んで鍋に入れる。美味しいお水もお鍋にだして煮ていく。


 お皿がないから、土魔法でお皿とスプーンを作っておく。

 ……雑貨屋さんでお皿とか買っておけば良かったな。この前雑貨屋さんに行ったのに気が付かなかった。今度行ったら多めに買っておこう。



 ミントさん達が戻ってきたので、薪に魔法で火を起こす。やっぱり魔法は便利だな。

 みんなで火の側に座って食事をする。お肉が2種類あるので、パンにそれぞれ挟んでお皿に乗せてみんなに渡していく。スープはミントさんがよそって渡してくれた。


「今日はブラックウルフとウルフの食べ比べセットとスープですよ~。ブラックウルフのお肉は初めてなので楽しみです。」


「「ブ、ブラックウルフ!?」」


「そ、そんな貴重なの食べていいの?」


「先日たまたま狩ったから気にせずどうぞ~」


「たまたま狩ったってそんな軽く言うなんて……」


 とお二人にびっくりされました。


『おなかすいたくま~』

『おなかすいたぴょん』


「そうだね、温かいうちに食べましょう。いただきます」


 みんなで挨拶をして食べ始めた。


『ハル、ブラックウルフすごいくま! ウルフよりもジューシーで蕩けるようくま。ハルの作ったスパイス塩との相性もばっちしくま!』


『お昼に食べた物よりもさらに美味しいぴょん!』


 やっぱり最初にひぃろが味について言い出した。ベリーも気に入ってくれたようでよかった。


「なにこれ……美味しすぎて言葉が出ない」


「美味しい……ウルフとの違いが凄すぎですわ」


 私もブラックウルフのお肉を挟んだパンを食べてみた。

 

「んんっ!!! 美味しいっ! 美味しいしか出ないくらい美味しい」


 またブラックウルフに遭遇したら積極的に狩ろうと心に決めた。


 みんな食べ終わって挨拶を終えたら、ミントさんが不寝番について言い出した。


「これだけお世話になっているのだから、ローズと私で不寝番するよ」


「そうね。それくらいしないと申し訳ないわ」


 とローズさんまで言うけれど、必要ないのよね。

 

「必要ないですよ?」

『いらないくま』

『いらないぴょん』


「「えぇっ!」」


「テント回りにシールドを張っているので、みんな安心して寝られますよ~」


 のほほんと言う私に、2人はびっくりしている。


「なので、みんなできちんと寝て明日元気に街に帰りましょう!」


 2人にはお礼を言われたけれど、ゴブリンに連れ去られた人に不寝番させるのも気が引けるし、シールドが使えて本当に良かったと思う。

 ついでにみんなにクリーンを掛けてテントに向かった。テント周りにはシールドを2重に張っておいた。


「ひぃろ、ベリーおいで」


 2人に向かって両手を広げると、2人とも腕の中に飛び込んできた。もふもふむぎゅむぎゅしてラブラブしておく。


「あの、もし良ければ……私も撫でてもいいかな?」


『いいくま~』


『いいぴょん』


 社交的な2人だった。でもひぃろとベリーは可愛いから撫でたいよね、むぎゅーも好きだけど。

 ミントさんは、2人をそっと優しく撫でてくれる


「ふわぁ、気持ちいい~」


「わ、私も撫でていいかしら?」


 ローズさんも誘惑に勝てなかったようで、なでなでしている。


「気持ちいいですわ」


 全員ベリーのヒールのおかげで、疲れはだいぶ取れていたものの、ひぃろとベリーの癒し効果に負けてぐっすり眠った。


 朝になって、みんなで挨拶を済ませた後、昨日のスープとパンで簡単に食事を取って、テントの片づけをする。街にはお昼までには着けるかな。


「よし、じゃぁ出発しよう。ひぃろまたお願いね」


『任せるくま!』


 またひぃろとベリーがぽよんぽよんと先導してくれる。

 3人でぽよんぽよん弾む2人をみて、和みながら歩いて行く。すっかり緊張感はなくなっていた。


『ハル、5匹くま』


「了解。」


 という会話をして、さくっと倒しながら街を目指す。


「なんだかハルちゃんはすごいです。倒すのが早すぎて何も出来ないです」


「本当に……年上の威厳なんて何もないわ」


 なんとも返答に困って黙ってしまった……。


 その後は、のんびり話をしながら歩いて、お昼前に街に着けた。

 冒険者ギルドに着いたら大騒ぎだった……。


「ハルちゃん!!」


 と呼ばれたかと思ったらむぎゅー! と抱き着かれた。

 誰かと思ったらサラさんだった。どうしたのだろうか。


「サラさん? どうしたんですか?」


「だって、昨日戻ってこなかったし宿にもいないって聞いたのだもの。心配したわ」


「わぁ、ごめんなさい。ちょっとトラブルがあって、泊まる事になって……」


「ハル! 大丈夫だったか!? 良かった。俺や他の冒険者も今から探しに行く所だったんだ」


「えぇー! そ、それはごめんなさいっ!」


「あの、私達のせいなんですっ! ごめんなさい!」

 とミントさんとローズさんは頭を下げた。


「いやいや、お二人は被害者なだけですよ」


「何があったの?」


 とサラさんに聞かれたので、ギルマスやアルスさんにも聞いてもらうことになった。

 お二人が連れ去られた事、ゴブリンの集落があったこと、ゴブリンキングの事など全部話した。


 全員びっくりしていた。確かに、12歳の少女がゴブリンキング倒して、集落を一人で潰すとかびっくりすぎる。


「怪我はなかったのかしら?」


「私達の怪我は、ハルちゃんの獣魔が治してくれました」


「私も怪我はなかったですよ」


 良かったわと言いながら、またサラさんにむぎゅーとされた。かなり心配をかけてしまったみたいで申し訳ない。


「集落はまだ残っているのですが、どうしたらいいですか? 後、まだゴブリンが数匹残っていると思います。ミントさんとローズさんの安全第一で帰ってきてしまったので……」


「いや、それで良い。後はこちらに任せてもらって構わない。宿に戻って、安心させてあげてゆっくり休むように」


 と心強い一言をくれたギルマスさんにお礼をいう。


「はい、ありがとうございます」


 集落の残りは、アルスさん達が潰してきてくれるみたいだ。ちょっとホッとした。

 ミントさん達も、特にペナルティなどないと聞いたので安心した。ゆっくり休んで欲しい。


「サラさん。新しくテイムしたので、獣魔登録お願い出来ますか?」


「あら、本当。今度はうさぎさんみたいなスライムちゃんなのね。可愛いわ。私はサラよ、よろしくね」


『ベリーだぴょん。よろしくだぴょん』


 サラさんは、ベリーをなでなでしながら挨拶をしていた。サラさん結構可愛いもの好きみたいです。


「獣魔登録だけするから、今日はゆっくり休んで、明日依頼の報告をしてね」


「はい、ありがとうございます」


 さて、宿に向かおう。

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