第24話

 エリスさんは隣の1-Cに転入となった。外国人の転入生という事で、うちのクラスもザワザワしている。やはり今のグローバル社会でも、外国人と直接接する機会は少ないのだ。

 そして時間が進む事に、色々な情報が流れて来る。出身地や家族構成、好き嫌い等々…。あの外見で人当たりも良いので、情報はどんどん伝播して行った。

 そして放課後。俺は早速1-Cへと向かう。

 教室を覗くと、放課後にも関わらず彼女はクラスメイトに囲まれていた。その横顔を見る限り、少々不機嫌そうに見えた。

 俺は意を決して中に入り、直ぐ隣へと向かう。そして声を掛けた。

「エリスさん。準備室の場所は判るかな?判らないようなら案内するけど…」

 するとエリスさんを含め、周囲の人達が一斉に俺を見る。…この雰囲気は苦手だ。

 エリスさんは荷物を手にすると立ち上がり、俺に腕を絡めて来た。

「有難うリーダー!じゃあ早速、案内して欲しいな」

 そう言うなり、何故か俺が引き摺られて行く。

 そしてクラスからある程度距離を取ると、溜息を付いた。

「…あーウザかったわー。終始あんなんだもの。全く、何が楽しいのかしら」

 腕は組んだまま、どんどん引っ張られて行く。道順は判っているのだろう。

「…俺は都合良く使われたって訳か」

「ちゃんと助かったわよ。断り難い雰囲気だったし」

「まあ騒がしいのは最初のうちだけだろうし。あとちょっとの我慢じゃない?」

「直ぐに止めて欲しいわ。あんなの疲れるだけよ」

 そうして準備室に到着する。他の二人は既に到着していた。

 御堂さんが俺達を見て、不機嫌そうに一言告げた。

「…手が早いのね」

 見ると、エリスさんは未だ俺と腕を組んだままだった。俺は急いで腕を振りほどく。

 するとエリスさんは察したように口を開いた。

「あら、勘違いさせちゃったみたいね。大丈夫よ、浮気じゃないから」

「…お気になさらず。私と彼はそういう関係ではありませんので」

「じゃあ何で機嫌を損ねたのかしら。私、とっても気になるわ」

 エリスさんはにこにこと微笑み、それを御堂さんが睨んでいた。

 俺は空気を変えるべく、亮に目線を送る。彼はしっかりと頷いた。

 亮はその場に立ち上がり、口を開いた。

「茅人は今フリーだ!ダチの俺が言うのも何だが、とても良い奴だ!優良物件だぞ!」

 彼女らは呆れ顔になった。空気を変えるのは成功したのだろうが、亮に任せたのが失敗だった。

 俺は取り敢えず全員に告げる。

「…今日は中層に行って、先ずエリスさんの実力を見させて貰う。その後はいつも通りだ。特に何か無ければ早速行くよ」

 そう告げ異界へと向かう。皆もそのまま付いて来た。

 さて、一番の興味は彼女がどんな武器を使うかだ。

 見ると、何だかおもちゃのような銃を構えていた。俺の杖と似たような水晶が付いているのが特徴だろうか。

「日本じゃ見掛けないでしょうね。これは魔力銃よ。魔力をエネルギーにして弾が撃てるの」

「という事は、そこそこ魔力量はあるって事かな?」

「一般人よりは、って感じね。ウィザードをやるには足りないわ」

 俺はその答えを聞きながら、いつも通り仲間に強化魔法を掛けて行く。

 そしてエリスさんも女性なので、確認の為に聞いてみた。

「仲間には身体強化の魔法を掛けているんだけど、エリスさんも掛ける?継続すると筋肉が付くんだけど」

「マッスルになるのね。程々なら構わないわ。トレーニングの一環なんでしょ?」

 そう言われたので、エリスさんにも魔法を掛ける。

 そして今後の為に俺は尋ねた。

「向こうでは、どんな戦い方だったの?」

「全然面白く無かったわ。皆リアルガンでハントしていくだけなんだもの。それが嫌で転入して来たのよ、私」

 想像するに、FPSゲームのような感じか。魔物を倒すまで皆が銃を撃ち続けるだけ。爽快感はあるかも知れないが。

 だがそう考えると、俺達の戦い方はロマン寄りだろう。何せ剣や魔法で戦うのだから。

「しかもバレットにもお金が掛かるから、皆お金に厳しかったわ」

 そんな話をしていると、良く見る猪型の魔物が現れた。

「じゃあ一人で倒してみようか。突進が速いから気を付けて」

「りょーかい。じゃあ行くわね」

 そう言うと銃を構え、集中する。魔力を流しているのだろう。そしてトリガーを引くと、俺の魔法にも似た弾が魔物に向け飛んで行った。

 それは見事に魔物の頭部を捉え、そのまま貫通した。魔物が塵になって行った。

「…お見事。それ、何発くらいまで撃てる?」

「50発位かしら。そこそこ撃ったら、こっちに切り替えるわ」

 そう言うと、銃身から魔力の刃が出現した。魔力銃剣とでも言えば良いのだろうか。普通の剣より扱い難そうだが。

 そうして数体を彼女に倒して貰い、Bランク程度の実力がある事は充分確認出来た。此処からは普段通りに進めて行こう。


 御堂さんが未だ不機嫌なままだったが、俺達は先へと進んだ。

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