第9話 ブレイの大冒険

 ぼくの名前はブレイだよ。本当の名前はブレイデンって言うんだ。かっこいいでしょ? 大好きな大好きなご主人様が付けてくれた大切な名前なの、ぼくの宝物なんだ。


 ぼくのご主人様はぼくと同じオレンジの髪の毛をしていて、毛艶が良くってすっごくカッコイイの、神様でお姫様のぼくを作ってくれたララ様が【イケメン】って言うんだって教えてくれたよ。ご主人様イケメンなの、素敵でしょ。


 ぼくはね、神様で姫様のララ様がご主人様を守る為に作ってくれたんだ、だからご主人様を絶対に守るの、それがぼくの仕事だよ。まだ一回もお仕事してないけれど、これから一杯ご主人様を守るんだ。ぼく頑張るからね!


 それからねぼくにはお友達がいるんだ、ココとモディって言うんだよ。二人共いつもご主人様を守っているんだって、羨ましいな。


 ココは森でララ様に拾われたんだって、それでモディのご主人様も森で拾われたから、銀蜘蛛の姉弟なんだって、姉弟ってなんだろうね? 仲良しってことかな? モディに聞いたら 「ホホホ、そうでございますなあ」 って笑ってたよ。

 ぼくもご主人様と兄弟になってみたいな、いつかなれるかも知れないね。ふふふ、頑張るよー!


 今日ぼくはご主人様のお家にきたの、これからここがぼくのお家になるんだって、ご主人様がぼくにみんなに挨拶しておいでって言ったから、ぼくはグラッツアに付いて行って、みんなに挨拶したんだよ。


 みんなご主人様と同じいい匂い、それにねぼくのことを可愛がってくれるんだ。ぼくの頭をなでなでして、可愛いって言ってくれるの、ぼくの名前は可愛いって意味もあるのかもしれないね。


 だけどね、一人だけ、ぼくに近づかない人がいたの、ご主人様にもあまり近づかない人、ぼくは気になってグラッツアに聞いてみたよ、あの人だあれ? って、そしたらこのお家の下僕って言うお仕事してる人なんだって教えてくれたよ。でもなんだか他の人とは少し違うの、ちょっと臭いの、だからぼくは気を付けようって思ったよ、ご主人様を守る為なら、ぼくは何でも頑張るんだ!


 夜はねご主人様と同じベットで眠るの、ぼくをベットの上でなでなでしながらご主人様は眠るんだよ。優しい魔力が伝わってきて、とっても気持ちがいいの、ぼくはすぐにとろーんとしちゃう、ご主人様の魔力って何でこんなに気持ちがいいのかな? 不思議。


「ブレイ、明日から王都に行くから護衛を頼むな」

(はい!ご主人様!)


 ぼくは初めての仕事が嬉しくって、沢山尻尾振ったよ。ベットのお布団がバサバサって言って下に落ちちゃったけど、何故かご主人様は嬉しそうだった。

 ぼくはね、絶対にご主人様を守るって思ったんだ。だからぼくは、昼間挨拶の時に思ったことを伝えてみたよ。


「下僕のローガン?」

(はい、あの人だけ臭いが違ったのです。何でかなぁ?)

「そうか……ブレイ、ありがとうな、調べてみるよ」


 そう言ってご主人様は眠るまでぼくのことをなでなでしてくれたんだよ、ご主人様、大好き!



 それからね馬車に乗って王都に向かったよ、ご主人様は出かける前に、ベルトランドにローガンを調べる様にって指示を出してたよ、だからパーカーが調べてくれることになったの、でもね、何があってもローガン本人には気づかれないようにしてくれって言ってたの、あの時のご主人様はとってもカッコよかったの! イケメンだったの、さすがぼくのご主人様だよね! とっても素敵。


 大きい宿屋に二回ぐらいお泊まりしたかな? そしたら王都に着いたの、馬車の中ではねご主人様もだけど、下僕のジョンがずっと優しくしてくれたんだよ、同じ下僕でもローガンとは大違いだよ。何でだろうね、あとおっきいジュリアンもぼくの事好きみたいで、チラチラとぼくの事気にしてたよ。ご主人様と同じ魔力だからね、きっとみんなぼくの事大好きになるんだよね。

 あ、そうか、だからローガンはぼくに近づかないんだね……ご主人様と同じ魔力が嫌なんだ……


 そう思ったら何だか急にローガンが大っ嫌いになったよ、ローガンは敵かも知れない、ぼくはご主人様を守る為なら、同じ家のローガンだってやっつけちゃうからね!


 ぼくがそんな事を考えていたらね、知らないお店でキーホルダーから出されたよ。ご主人様がいつもよりキラキラして、カッコイイ服を着ていたよ。


「ブレイ、俺はこれから大事な商談をする。しっかりと護衛を頼む」


 ご主人様にそう言われてぼくは嬉しくなったよ、初めての仕事だからね。ご主人様の近くには、たぶんお店の人だと思うけど、その人たちが口をパックリ開いてぼくの事を見つめてた。

 あれはね間抜け面って言うんだって、後から教えてもらったの、ふふふ、面白いね。

 ぼくは扉の前に移動して、この部屋のみんなを守ったの、ぼくが頑張ったから、夜はご主人様がたくさん撫でてくれたよ、とっても気持ちよかった。ご主人様大好きってまた思ったよ。


 次の日はね、街の中をたくさん歩いたんだ。みんなご主人様の事を振り返ってみていたよ。やっぱりララ様の言う通り、ご主人様はイケメンだからかっこいいんだね。

 きっとみんなご主人様の家族になりたいんだろうね、女の人たちはご主人様を見て赤くなってた。発情期なのかな?

 もしかして番になりたかったのかも知れないね、だけど残念だね、だってご主人様は姫神様のララ様に発情してるんだよ。大好きだって魔力が言ってるの、だから他の人じゃご主人様の番になれないと思うんだ。

 モディもそう言ってたよ、セオも同じなんだって、ララ様は姫神様だから、しょうがないんだって、みんな大好きなの、ぼくも同じ気持ち、僕も姫神様もご主人様も大好きなんだよ。


 ご主人様の実家? ってお店に着いたらね、ローガンみたいな嫌な匂いがプンプンしてたの、特にね少しだけご主人様に似た毛色のギャーギャー五月蠅い人が一番嫌な臭いだった。キーホルダーから飛び出して噛みちぎってやろうかと思ったよ。

 でもね、ご主人様のからの合図が無かったから我慢したよ、それにご主人様は全然相手にしてなかったからね、弱い犬には興味がないんだよ。でもぼくはもしあいつがご主人様に何かしようとしたら、絶対に許さないって誓ったんだ。

 僕はご主人様の為なら弱くても手加減なんてしないからね、覚悟してろよ!


 そこからご主人様が連れて来た、ランスはとっても良い匂いだったよ。ご主人様もとっても嬉しそうだった。それにぼくの事みて、とっても目がキラキラしてて少しだけ怖かったけど、何だか温かかったの、ご主人様が大好きって気持ちが伝わって来たよ。ぼくはこころがぽかぽかになったの、凄く嬉しかった。


 王都からの帰り道、突然大きな音がして、馬車に何かを投げつけられたみたいだった。馬車は急停車すると、周りをくさーい臭いをプンプンさせた男たちが取り囲んで来たんだ。

 こいつら絶対にお風呂入ってないって、ぼくは思ったよ。それにパンツも汚れてるんじゃないのかな? だって鼻が曲がりそうになるぐらいに臭かったの!


 ジュリアンがすぐに馬車から飛び出して、剣を構えたよ。ご主人様も剣を構えてる、カッコイイね。


「お前たちは何者だ!」


 ジュリアンが大きな声でそいつらに威嚇を掛けたよ。


「へん、何者でもないさ、俺達は盗賊だ。命が欲しかったら荷物を置いていきな! それから今着てる服も脱いで行ってもらおうか……」


 一番偉そうな男が笑って答えたよ、周りの臭い男たちもニヤニヤしている、とっても嫌な笑い方だよ。ぼくはねご主人様を守らなきゃって思ったの!


「ガルルルル……」

「なっ、なんだ、その犬は……」

「ブレイ!」


 ぼくの体がずんずん大きくなるのを感じた、こいつら絶対に許さない! ぼくの大切なご主人様を襲おうとするなんて!


 ぼくの体に魔力がどんどん流れてきて、体は馬車と変わらないぐらいまで大きくなった。


(ぼくのご主人様に近づくな!!)


 ぼくがそう吠えた途端に、ぼくの体の中から魔力が飛び出して、竜巻みたいになったよ。盗賊達はその勢いでみんな馬から落ちたり、地面から吹っ飛ばされたりして動けなくなっちゃった。


 良かったやっつけられたみたい……


 ぼくがホッとして後ろを振り返ったら、ぼくたちの馬車まで吹っ飛ばされちゃったみたいで、へこんでた。それにね、ご主人様が真っ青になって、今にも倒れそうになっていたの。

 ご主人様に駆け寄ったぼくの体はすぐに元の大きさまで戻ったよ。ぼくはご主事様にごめんなさいしたの、ご主人様は汗を額に浮かべて、とっても辛そうにしている。ぼくが魔力を吸い取ってしまったからなんだ、ぼくのせいでご主人様が苦しくなっちゃったよ、どうしよう……


「ブレイ……」


 ご主人様はぼくを呼ぶと、優しくぼくを撫でたよ、嬉しそうに微笑んでいる、ランスも後ろで嬉しそうに微笑んでいたよ


「ありがとうな……お前は命の恩人だぞ……」

(ご主人様!)


 そう言ったあと、ぼくはキーホルダーの中に戻ってしまったよ。ご主人様がぼくを出していられる状態じゃなくなってしまったみたいなんだ、ぼくが魔力を使いすぎてしまったからだよね……


 こんなの本当に守ったって言えないよね、ぼくは何だか悲しくなった。ご主人様を守ることが出来ないなんてそんなの護衛失格だもん。

 でもね、ご主人様はその後もぼくをずっと褒めてくれたの、ブレイは凄いって、俺の自慢の護衛だって、何度も何度もそう言って、ぼくの事を撫でてくれたの。

 だからね、ぼくはもっと強くなって、今度こそ本当にご主人様を守るって誓ったんだ。

 だから今はアーニャやアルに戦い方を教わってるんだ。勿論、友達のココとモディも一緒だよ。みんなで強くなろうねって、約束したんだ。


 そしたらね、ご主人様もぼくに相応しい主になれる様に修行するんだって言ってた。ぼくのご主人様って、本当にカッコイイでしょ! ぼくはご主人様の護衛になれて本当に幸せなの、絶対にご主人様を守るんだ!


 お家に帰った夜に、そっとベルトランドとパーカー、それに、ランスがご主人様の部屋に入って来たよ。みんなとっても渋い顔をしているの、何か報告があるんだって、みんながソファに座るとパーカーが喋り出したよ。


「ローガンですが、どうやらロイド様と連絡を取り合っているようです。何かあるたびに飛脚郵便を使っていることが分かりました。送った郵便の内容までは分かりませんが、送り先はロイド様に間違いありません」

「そうか、やっぱり兄貴か……」

「それにしてもリアム様、どうしてローガンが怪しいと気付かれたのですか?」

「ああ、ブレイのお陰だ。ブレイ、良くやったぞ、お手柄だ」


 ご主人様はそう言って、ぼくを優しく撫でてくれた。みんなは理由が分からないみたいで首を傾げていたよ。ローガンが臭いってみんな分からないんだね、不思議。


「リアム様、いかがいたしますか? ローガンを絞め上げますか?」


 ご主人様はパーカーの言葉を聞いて、少し考えたよ。みんな心配そうにご主人様の事を見てたの。


「もうララたちの事は兄貴たちに伝わっているだろうな……ランス何か知っているか?」


 ランスは首を振ったよ、何も知らないみたい。


「定期的にロイド様に手紙は届いておりました。それがローガンからの物と思われますが、最後に届いたのは一か月前ぐらいでしょうか……」

「……そうか、まぁ、良い、暫く泳がせよう」


 ご主人様はニヤリと笑うと、みんなに向けて喋ったよ。


「俺はララたちと共に店を開く、いずれは実家の家を乗っ取る気でいる、それぐらいの店を作るつもりだ。皆協力して欲しい、頼むぞ!」


 ご主人様はそう言って、みんなに頭を下げたよ。みんなとっても嬉しそうな顔をして、「はい」って返事してた。

 ご主人様はとーっても嬉しそうに笑ってたから、ぼくも何だかとっても嬉しくなっちゃった。ふふふ、ご主人様てやっぱりカッコイイ!



 夜になってベットに入ったら、ご主人様が沢山、沢山撫でてくれた。とっても優しい顔して笑っているの、その笑顔を見てたらぼくもとっても幸せな気持ちになったの。


「ブレイ、お前は俺の宝物だからな……」


 ご主人様はそう言って、いつまでもぼくを撫でた。ぼくはもっと強くなって、大好きな優しいご主人様をいつまでも守ろうって誓ったんだ。絶対にご主人様を幸せにするからね、ぼくに任せといて! 頑張るよ!

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