466話 機神解体その7
「何故お前がいる、メール=ブラウ……! お前は死んだはずだ!」
「がなるなよ。……心配しなくても、死ぬさ、そのうちな。ただそれは今じゃないってだけだ」
「意味不明な……! ならばその時を───今にしてやるまでだ!」
絶叫、ンバスクが神速で斬りかかる。メール=ブラウはそれを鎖で受ける───やはり、受け止められる。ンバスクの《神血励起》、彼が妨げられることはないという透過性を無視しているその仕組みを、ンバスクはそろそろ見切りつつあった。
《神血励起》によって強化された《信業》の効果をどうこうできるならば、それは同じく《神血励起》の加護があると考えるのが自然だろう。メール=ブラウの《神血励起》、その効果は推察するに《信業》や《神血励起》の相殺か、あるいは無効化。彼の鎖に触れるものは、その特異性を引き剥がされて地べたへと引きずりおろされるのだ。
いつでも誰かの足を引っ張ることしか考えられないような彼には、実にお似合いの《神血励起》じゃないか。小神から授かった加護すらそんな使い道しか見つけられないとは、いっそ哀れですらある。
タネは割れた。《鎖》のメール=ブラウと呼ばれている彼はその名の通り獲物に鎖しか使わない。おそらく《神血励起》の有効範囲も鎖に限られていて、だから攻撃でも防御でも必ず鎖を介している。メール=ブラウの肉体全部に無効化が働いているということはありえない。
そして《神血励起》を付与された鎖は、どうやらむやみやたらと作り出せるものではないらしい。もともと彼の鎖は《信業》で生成されていることは知っていた。普段の彼であればジャラジャラと騒々しく音を立てて、鞭のように伸ばした鎖で間合いを取って戦う戦型を好んでいるのに、今は鎖を両腕に巻いての
鎖には限りがある。持久戦に持ち込めばメール=ブラウに勝機はない、やがて《神血励起》の鎖を作り出せなくなって致命傷を受けるか、それとも首の失血から意識を保てなくなるか。だが気長に戦っている猶予はない。今にも崩落してきそうな搭乗回廊で、死にかけの男の巻き添えにされるなど御免だった。一刻も早くこの敵手の命を奪い、この危地を脱するために───こうして剣と拳の戦いに応じているのだ。
今度は過たない。
頸動脈を切るなんて生半な手段ではなく、きっちり心臓と脳を破壊して殺しきる。絶殺の決意を乗せた刃が、次第にメール=ブラウを圧倒し始めた。
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