047話 女子談話その4
「で、実際さ。どうなの? ユーヴィーのこと」
「どう、って?」
「やだなあ、はぐらかすのはナシだよ。ボクにだけ教えてくれればいいさ。彼のこと、どう思っているのか、ね」
微笑んで、たぶん彼女は何かをしたのだがよく分からない。カリエとジグレードが困惑していると、
「……しまった。
「ぷ」
いつもなんでも分かっていますよというフウなバスティの、彼女らしからぬ失敗だった。愉快になって一度笑ってしまうと、テーブルは堰を切ったように笑いに包まれた。
「……バスティさんが、教えてくれたらいいですよ」
「何を?」
「同じです。ユヴォーシュさんのこと、どう思っているのか。言いっこなら、恥ずかしくない気がするから」
「そう来たかあ。……じゃあ、お互い秘密にしよっか」
「ええ? そこまで言っておいてそれはないですよ」
「ごめんごめん。でもね、キミたちに誠実であるためには、そうすべきだと思うんだよ?」
「それは、何故?」
バスティは年相応の少女であるかのようにはにかんで、
「───ボクにも、分からないからさ」
◇◇◇
探窟都市ディゴール。
信庁の権勢も届かぬ都市。その実態は《冥窟》が存在するという強みにある。《冥窟》を受け入れ、《冥窟》に向かう者を受け入れ、《冥窟》に向かう者と寄り添う者を受け入れ、ディゴールは価値あるものを何であれ受け入れる。
来るものは拒まない。
それが《信業遣い》や、神であっても。
「───ここに、《割断》がいるっての?」
ディゴールを囲う城壁。いくつかあるうち、オルジェンス大街道に接続する門は、名前をシンプルに外壁正門という。それを見上げるついでに、背筋を伸ばしてごきりごきりと鳴らす女性がいた。
小柄だが生命力に満ち溢れている。ディゴールの偉容に単身で相対しているような存在感。
その傍ら、彼女の存在感に霞むような長身の人影。頭巾をかぶり、口元を布で覆い、面相を伺われることに病的な嫌悪感を抱いているようなスタイルだ。
「そう出たねぇ。本当に寄っていくの、ニーオ?」
ぼそぼそと呟く言葉は、本当に人体から発されたものかと思いたくなる嗄れた声。
「本当だろうな?」
「私を疑うなよ。神だぞ。罰当たりだぞ」
「当てるなら当てろよ、
せせら笑うニーオに、表情の見えない人影は黙って首を振る。
「さっさと行くぜシナンシス。噂じゃ、もう一人《信業遣い》がいるらしい。どうせ外れだろうが、せっかくだから
「分かったよ、ニーオリジェラ。だからあんまり急かさないでくれよ、この義体はもうガタが来てるんだ。君だって知っているだろう」
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