2.フォトスターの『YUーMA』って
「じゃあ、とりあえずヨロシク!」
叔母さんはロックミュージシャンの様な口調と仕草で、私と片桐さんの肩を叩くと上機嫌で部屋を出ていった。
「僕もそういうのあまり得意ではないですけど、何か協力できる事があれば言ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
流石の観察眼で、片桐さんは一瞬にして私がSNSが苦手だと察してくれたようだ。
……片桐さんも、見るからにそういうの好きなタイプではないよね。
経営会議を終え、私達はいつもの業務に戻った。
エントランスにあるコンシェルジュ・デスクで、今日一日のスケジュールを確認する。
石川様は外出中で夕方帰宅予定、長谷川様は22時帰宅予定で夕食の用意は不要と……
今日は珍しく夕方までは裏方の業務以外は特に差し迫った仕事はない。
……仕方ない。SNS、早速取り掛かってみようか。
私は早速、スマートフォン片手に通称「
皆、被写体は勿論、背景やカメラのアングルまで拘りを持っていて、プロのカメラマンが撮ったのかと思える程、素敵な写真が沢山並んでいる。
改めて比べてみても、私のセンスとは大違いだ。
まず、こんなアイディアが思い浮かばない。
皆、誰かに教わって、こういうセンスを身に着けるんだろうか……
人気のある
アカウント名は『YUーMA』。
「ユウマ」と読むのだろうか……
どの写真も目線は少し伏せてあるが、コーディネートも私物らしき小物も全てがスタイリッシュでかっこいい。
モデルではないようだが、彼の写真に付いたコメントはどれも「かっこいいですね」「おしゃれですね」「どこの洋服ですか」など、彼を絶賛したものばかりだ。
……この人、モテるんだろうな。
写真の世界観に惹きつけられてしまって、仕事も忘れ片っ端からチェックしてしまう。
外見と言うよりも、彼の写真全体から醸し出される雰囲気が一目で気に入ってしまったのだ。
「こういう方がタイプなんですか?」
「ひゃっ!」
気づくと片桐さんが私の背後から、ぬっと現れて、スマートフォンの画面を覗いていた。
……いつから居たんだろう。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「驚かせてすみません。あの良かったら昼食、済ませちゃいませんか」
「は、はい。書類を片づけたらすぐに行きますね」
どうやら私に昼食ができたことを知らせに来てくれたみたいだ。
こんな時に限って、内線を使わずに直接来るなんて。
必死に顔の火照りを両手で仰ぐようにして誤魔化す。
片桐さんは天然なのか、たまに私をどきりとさせる。
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