第197話 からの

「おい! ユウタ! あれが魔王か!?」


 黄金の甲冑をガシャガシャいわせながらやって来たのは、タイチだった。


「ど……どうして、ここに!?」

「どうしてって? 俺より強い奴を求めてここに来たんだ」


 狂戦士はニッと笑って見せた。

 何と、彼のレベルは100だった。

 魔王も彼のステータスを見て驚いたのか、後ずさり態勢を整えている。


「この世界でレベル100になったのは俺が初めてらしいぞ!」

「すごいね!」

「お前らに捨てられてから、ずっと惨めだった俺は、一念発起してこの世界で最も強くなろうとモンスターを狩りまくったんだ。睡眠もとらずになあ!」


 戦闘バカのタイチらしいや。


「……でも、急にモンスターも強くなり出してな。だけど、レベル100の俺の敵じゃなかったよ。何か、特別みたいだなレベル100は」


 アスミがいたらレベル100についての解説も聞けたかもしれない。

 兎に角、前人未到は多くの報酬がもらえるらしく、彼のステータスには『狂戦士』、『最強の悪あがき』、『無双転生』などといった勲章が輝いていた。


「で、外の世界のモンスターは全部駆逐したから、後は魔王だけだと思ってここに来た」


 タイチはバトルアクスをブゥンと振り回した。

 突風が吹き荒れた。


「タイチ! 待ってよ!」


 後ろから細身の影が二体。

 セイラと、あと一人は誰だ?


「急ぎすぎですわ! タイチさん」


 この場に似つかわしくないメイド服にツインテール。

 確か、鉄騎同盟のバックについてる親ギルド。

 何だったかな……?

 あっ、絶対成敗のギルドマスター、モモだ。


「まったく、戦闘バカばかり集まったな」


 この冷静な声は……

 おお、リンネも起き上がった。

 そして、僕はエリスに裏切られた夜を思い出した。

 酷い仕打ちを受けている最中、僕はタイチ達に助けられた。

 今まさに、その場面が再現された。

 勇気が湧いて来た。


「まったく、これでナオシゲがいたら完璧なんだが。おい、ユウタ、お前、蘇生魔法使って蘇らせろ」


 タイチが無茶難題を言う。

 周囲から笑いが起こる。


「さぁ! やるぞっ!」


つづく

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