第177話 魔王に勝つ方法

「行こう!」


 僕は魔王の元へ続く階段を指差した。


「ユウタさん」

「はい」


 ガイアに呼び止められ僕は振り返った。


「急ぐのは分かりますが、魔王についてアスミさんに聞いておいた方がいいのではないですか?」


 タイムリミットは後30分。

 それまでに魔王を倒さなければ、運営側が設定したタイムリミットが来てこの世界が崩壊する。

 時間は惜しかった。

 が、確かにガイアの言う通り。

 運営側に属するアスミから魔王について知っていることを、聞いておいた方がいい。


「ま、ガイアが呼び止めなかったら、私が救世主ユウタを呼び止めていたがな」


 アスミは前置きした。

 そして、こう続ける。


「私とユウタだけで通信を通して話をする。他の者は休んでいてくれ」

「何故です!?」


 言い寄ってくるガイアをリンネが制した。


「恐らく、救世主だけが知っていればいい事実なのだろう」

「……だけど」

「世の中には知らなくていいこともある」


 リンネは僕の方を見て頷いた。

 その目を見た時、彼女もある程度の事実を知っているのだと僕は分かった。

 モンスターを殺すことが地球ちきゅうにいる人間を殺すことに繋がるということを。

 彼女は知っている。

 僕とアスミは通信し合った。


<魔王がA国の王と紐づいている>

「それはこの前聞いたよ。A国の王は強いの?」

<強い>

「僕の奇跡でも倒せる?」

<五分五分だ>

「そんな……奇跡を発動した僕は無敵状態じゃないのか」

<ユウタ、もし仮に地球ちきゅうに戻れたら、何かゲームで遊んでみろ。ほとんどのラスボスは無敵状態で倒せるほど都合良い設定をされていない。作る側はプレイヤーにゲームを楽しませるために、あれこれ試行錯誤する。だから、ラスボスは他のモンスターや中ボスとは差をつけるものなんだ>


 僕は頭を抱えた。


「奇跡が使えなければ、どうやって戦えばいいの!? 難易度を高められた魔王に僕達は勝つ方法があるの?」

<実を言うとユウタ、私も魔王がどんな姿をしているかは知らない。魔王の姿やスキルは一部の開発者しか知らない。だから私は、こういう一般的なことしか言えない>


 アスミは首を振った。


つづく

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