第172話 その頃、他のギルドでは
街にモンスターは攻めて来れないはずっ!
そう思っていた時代もありました。
あたしはずーっとそう教わって来たし、パパやママ、そしておじいちゃん、おばあちゃんから、この世界はそうだって教わって来た。
でも、あたしの目の前に広がってるのは街の建物や人間達を駆逐しながら、こちらに前進して来るモンスターの群れだった。
「モモ様! ここはお任せください!」
あたしの前で剣を構え、モンスターの前に立ち塞がったのは、戦士クラスタ。
あたしがギルマスをやってるギルド絶対成敗の筆頭メンバーにしてレベル92の最強の戦士!
そして、ちょーイケメン。
他のメンバーが死んだ今、彼だけがあたしの頼れる騎士様だ。
「来い!」
ホブゴブリンがクラスタに飛び掛かる。
そう、あたし達は今、情けないことにゴブリンの群れに蹂躙されていたのだった。
「くっ……」
ホブゴブリンのパンチを剣で受け止めたクラスタは、苦しそうに顔を歪めた。
彼は今の攻撃でかなりのダメージを受けた。
HPが半分になっていた。
負けじと彼も剣を振り上げる。
「げぺっ!」
袈裟切りにされたホブゴブリンは身体が半分になった。
それでもHPは10000もあり、片足だけでピョンピョン飛び跳ねながら向かってくる。
「モモ様、やっぱりこいつら変です! ついこの前までは弱体化していたのに、今はスライムでさえもちょっとしたボスモンスターと同じレベルに強くなってる」
血の匂いをかぎつけたゴブリン達が、戦いに参加しようと土煙を上げながら走ってくる。
それ程数は多くないのが救いか。
だが、一体一体のステータスが以前のゴブリンのものではない。
クラスタが言うように、雑魚モンスターであるゴブリンもスライムも強化されている。
「逃げてください! モモ様!」
クラスタは振り返り、笑顔でそう言った。
彼の優しさが伝わった。
あたしに不安を与えないために作った精一杯の笑顔。
悲壮感漂う彼の純白の甲冑を見ながら、あたしは唱えた。
「
妖術師が使える最強の炎系魔法。
竜の形をした炎があたしの手から飛び出す。
「モモ様! ありがとうございます!」
「あたしはあなたのお陰で、安全に詠唱し魔法を発動することが出来ましたわ。ありがとう」
これだ。
この連係プレイが楽しくて、この世界でモンスターと戦って来たんだ。
半径10メートルに存在するすべてのモンスターを焼き尽くしていく、炎の竜。
長大な体を渦巻かせながら、ゴブリン達を黒焦げにして行く。
そして、一定時間経つと竜は天へと昇って行った。
「え!?」
それでも、ゴブリン達は黒焦げのまま生き残っていた。
つづく
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