第156話 一気にイージーモードへ!

「一旦、ダンジョンから出て態勢を整えよう!」


 僕は皆にそう宣言した。

 多くの犠牲が出た。

 ここは一旦、出直した方がいい。

 僕の提案に皆、頷いていた。

 ただ一人、アスミだけが正面を向いたままだった。


「いいですか? アスミさん」


 僕は不安になり、彼女に問い掛けた。

 彼女は運営側の人間だから、何か思うところがあるのだろうか。


「救世主ユウタ」

「はい」


 救世主と修飾子を付けて呼ばれると、やっぱ照れるなぁ。

 僕はそんな大それたもんじゃない、ユウタでいいですよー。


「このまま一気に魔王のところまで行った方がいい」

「え?」

世界更新アップデート後、ゲームの難易度が変わった。ラストダンジョンのボスモンスターは今の我々でも倒せるレベルになった」


 概要には難易度の調整と書かれていたが、弱い方向に調整されたのか。

 何故、運営はそういう調整を行ったのか。


「早くゲームをクリアしろという運営側からのメッセージ」


 アスミはそれ以上何も言わなかった。

 今まで続いて来たこの世界、つまりゲームを突然早く終わらせようとする意図は一体何なのだろうか?

 この世界に閉じ込められ、ここで死ぬまでゲームをしなければならない最初の世代の人間達。

 そもそも彼らをここに閉じ込めた理由は何なのだろう?

 僕の両親、そして先祖もきっと最初の世代に含まれるのだろう。

 彼らは二つに分かれた。

 一つは、魔王を倒し、この世界から地球ちきゅうに戻ろうとする者。

 もう一つは、マリアンの祖先の様にこの世界に留まり一生ゲームをするという選択をした者に分かれた。

 ここに来て、この世界を作った神である運営が、そのゲームをクリアさせようとする意図は一体……?


「行こう」


 アスミは僕を促す。

 だけど、僕は首を横に振る。


「……それでも、犠牲が多い。一旦、装備やパーティを整えてから行きましょう。アスミさんのパーティメンバーも皆死んでしまったことだし」


 僕は死んでいったメンバーの死体を指差した。


「その必要はない」

「え?」

「今、ここにいるメンバーだけでも十分行ける」


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る