第138話 それでもこの世界で生きていく
ラストダンジョン。
それは、この世界の大陸の真ん中にある。
街から飛行生物で2時間。
上空から見ると、砂漠の真ん中に穿たれた黒くて四角い穴。
それが全13段からなる魔王が棲み処だった。
瘴気が溢れ出るその穴に一歩足を踏み入れる。
「マリアンさん、待ってください」
私を呼び止める男。
振り向くと、鉄の鎧を着たずんぐりとした戦士が震えている。
名はフラン。
レベル80
「私、ラストダンジョンに入るのは初めてなんです。ちょっと深呼吸していいですか」
フランは怯えている様だ。
彼の後ろに4人いた。
彼のパーティのメンバーだ。
そのメンバー達もラストダンジョンに入るのを躊躇していた。
「怖がるな。私がついている」
私は、ロゼが編成したパーティの支援者として、今回の探索に参加していた。
ロゼは持ち回りだからと仕方なくパーティを編成していた。
元々、私とロゼは魔王討伐派ではないので、お茶を濁す程度に探索を行う。
当然、パーティのメンバーはやる気のない者や臆病者になる。
「行くぞ」
私は彼らを無視してダンジョンの奥へと進む。
◇
ソロの私が、探索パーティを引き連れる形でダンジョンの中を進む。
1段目の『羊』の段。
2段目の『牡牛』の段。
3段目の『双子』の段。
これらはボスモンスターの攻略が済み、出て来るのは少数の雑魚モンスターばかりだった。
それを次々と倒していく。
「なんだ。大したことないな」
フランが安堵の声を上げる。
「ボスがいないからだ」
「はぁ……」
「ここからが本題だぞ」
4段目の『蟹』の段。
目の前に無数の透明の泡が広がる。
その泡に無数の私が映り込んでいる。
まるで無数の目に睨みつけられているかのようだ。
集中し、泡を睨み返す。
『蟹の泡の結界
レベル95以上の戦士で、竜神の剣を使いこなす者のみがこの結界を切り裂くことが出来る』
レシピテキストにはそう書かれていた。
私は竜神の剣の柄を握り締めた。
私とロゼが出した結論は
この世界で生きていく。
というものだった。
神がこの世界の成長を止めようとも、創意工夫し生きていく。
素材の種類が限られるならば、バグを利用して増やして行けばいい。
瑕疵を利用してこの世界を楽しむことにした。
そのためには、エルフに慕われる必要がある。
私は紫色のオーラが噴出された剣を振り上げた。
斜めに袈裟切り気味に振り下ろす。
泡は弾け、飛沫を飛び散らかした。
「うわっ!」
後方の臆病なパーティにもそれは飛び掛かった。
視界が広がる。
目の前に祭壇があり、そこには一本の剣が突き刺さっていた。
つづく
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