第120話 ある世界でのレベルの話
私の目の前には胸を切り裂かれ、苦悶の表情のまま絶命した老人の死体が横たわっていた。
その死体の名前はレゴラス。
大祖先ことガイアの祖父。(地球での名前はミヤナガ・タダオミ)
「後は頼む」
そう言い残し、彼は竜神の剣の刺突により絶命した。
その剣の使い手、マリアンは彼を見下ろしこう言った。
「救世主を早く呼べ」
レゴラスはマリアンを説得しようとした。
ゲームクリアには彼女の力が必要だと、強く訴えた。
レベル90の戦士は少数だが存在する。
だが、レベル95の戦士は彼女しかいない。
この世界において、レベル90台に突入するとレベルを一つ上げるのに大量の経験値を必要とする。
大量の
レベル91を超えた存在は魔王討伐に必要な人材だった。
だが、その訴えも虚しく、名・
この世界で死んだ者はどこに行くのか、それはこの世界で生きている者には分からない。
一つだけ言えることは、この世界、つまりゲームをクリアすれば死者の魂は地球に転生するかもしれない。
ということだけである。
レゴラスは我々、生き残った者に後を託したのだ。
<リンネ>
ガイアからの通信が入った。
「何だ?」
<あなたのヒントのお陰で、双子の段のボスモンスターを倒すことが出来ました。ありがとうございます>
「うむ」
私の憶測が役立ったのは嬉しいことだった。
間違えて転移した先で、ボスまで倒してしまうとはガイアとユウタには驚かされる。
<もうすぐそちらに到着します>
ラストダンジョンはここからだいぶ遠いはず。
どうやって行くのか。
その疑問に、先回りする様に答えられた。
<ボスモンスターが転移玉をドロップしました。それを使い、ギルドホールの近くまで転移出来たのです>
「なるほど」
もうすぐユウタに会える。
そう思うと胸が高鳴った。
「何をしてる?」
突如、低い声が耳朶を打つ。
タイチを椅子代わりに座るマリアンが、こちらをじっと見ている。
「もう救世主が来るのか?」
彼女は竜神の剣に付着したレゴラスの血を、クロスで拭きながら笑い掛けて来た。
「ああ。もうすぐだ」
「楽しみだな。奴は見た目、レベルだけが高い弱そうな治癒魔法使いだ。だが、私達、人間ではもう手の届かないくらいほど強い存在になっている」
レベル95の彼女をして、ユウタはそれだけの存在になっていた。
ユウタが遠い存在になったような気がした。
つづく
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