第121話 友達はちゃんと選ぼう!
僕らが転移した場所は、何の変哲も無い空き地だった。
見慣れた建物が見える。
どうやら、今度は街に転移出来た。
「ここからなら、割と近いです」
ガイアが言うには、ここから
「おお、何だ? 何だ?」
「いきなり人が出て来たぞ」
僕らを見た人々は目を丸くしていた。
そりゃそうだ。
突然、光と共に人が現れたら誰でも驚く。
「驚かせてゴメンね〜」
フィナが明るい笑顔で周りの人々に頭を下げる。
「お、エルフだ」
「珍しい」
皆、フィナを興味深そうに見ている。
人間と亜人間は仲が悪い。
だが、ここにいる人間達はエルフのフィナの可愛さに惹かれている様だ。
人々の好意的な視線に気を良くしたのか、フィナは愛想良く笑顔を振りまいていた。
「私達ね〜、これから最強の戦士とお友達になりに行くんだよ」
「おいおい、フィナ、余計なこと言うな。行くぞ」
僕はフィナの手をつかみ、先を急いだ。
「こっちです」
先頭を行くガイアがそう言った。
彼女の指差す先には、木造のギルドホールが見えた。
これが
立派な和風の建物だったと思われる。
だが、DEATHの連中に襲撃されたせいで、見るも無残な状態になっていた。
瓦屋根は崩れ、木の柱から火の粉が舞い、煙が天に向かって上がっていた。
「ひどいな……」
思わず僕は呟いていた。
◇
足元には鉄の塊と化した扉が、転がっていた。
それをまたぎ、ギルドホールの中へと進む。
この先に、僕らの敵がいる。
そして、その敵はフィナが言うところの友達になろうとしている人物だ。
◇
「ユウタ!」
入るなり、聞き慣れた声が耳に響いた。
「リンネ!」
僕は反射的に呼びかけに応えた。
リンネは二階へと続く階段付近にいた。
彼女の付近には、襲撃に耐え生き残ったと思われるギルドメンバーが数名いた。
そして、彼女の足元には老人の死体が転がっていた。
「大祖先様!」
ガイアが走り出した。
彼女は入口から階段までの間を駆けていった。
「あああ! 何と言うことでしょう!」
彼女は泣き叫んだ。
「救世主、やっと来たか」
さっきからその様子を、広間の片隅でじっと見ていた人影が、声を発した。
「マリアン!」
ガイアは赤毛の女を睨みつけた。
マリアンはガイアを見て、嘲笑した。
僕は驚いた。
はじめはマリアンが椅子に腰掛けているのかと思ったが、それは見覚えのある人だった。
「タイチ!」
僕のかつてのギルドマスターが無残な姿でそこにいた。
その横にはローブを血で染めたセイラもいた。
ガイアからだいたいの話を聞いていたが、これほど酷いとは……
マリアンが立ち上がった。
「ユウタ。辺境の狩り場では世話になったな。私がこうしてここに現れたのは他でもない。お前と取引をしたいからだ」
「取引?」
「そうだ」
そう言うと、マリアンはタイチの頭に剣を突き立てた。
「こいつはまもなく死ぬ」
紫色のオーラに包まれた刃先が、タイチの頭にめり込んだ。
彼は麻痺していて動けない様だ。
「こいつの命が欲しければ、お前の命をよこせ。そうすればこいつの命は助けてやる」
つづく
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