第102話 兄妹の別れ それぞれの道
私とタイチのやり取りを、皆、じっと見ていた。
自分達の立場が今後どうなるか、皆、そのことを心配しているのだ。
それもそのはず、ギルドマスターを失った
その状態からギルドマスターが一週間以内に決まらないと、ギルドは解散となる。
私は人差し指と中指を立て、こう言った。
「ギルドを抜ける方法は、二つ。クビになるか、本人の意思で辞めるか、だ。私は自分の意志で
私は自分の心臓に小刀の先端を押し当てた日から、変わった。
この世界でたった一人の肉親である兄と
「おい、リンネ。分かってるだろ? 俺達はそう簡単に離れ離れになれないってことを」
今度はなだめる様に、私に言い聞かせてくる。
ギルド=家族だった。
鉄騎同盟は魔王を倒すため、私の両親が結成した。
モンスターからの攻撃を父親が身を挺してかばってくれたこと、母親が夜通し武器や防具を修繕してくれたこと。
思い出が頭を駆け巡り、涙が込み上げてくる。
タイチの大きく節くれた両手が、私の頭を包んだ。
長い黒髪を10本の指で撫でる様にクシャクシャにかき回す。
私は兄者に、頭を撫でられるのが好きだ。
「やめてくれ」
だけど、私はその手を払いのけた。
「お前……」
「私は好きな人のために生きる」
兄者は困惑と諦めが混じり合った様な、複雑な表情を浮かべていた。
タイチは踵を返した。
去って行く背中が、小さく見える。
「行くぞ。セイラ。俺達だけでやって行こう」
声を掛けられたセイラは私を一瞥すると、すぐにタイチの方に向かって歩いて行った。
◇
ガイアが決めたことに誰も反対しなかったため、私は
「今後とも、よろしくお願いいたします」
ギルドメンバーが私の前に膝まづき、頭を下げる。
そういうのが初めてだから、何だか照れくさいし、どう対応していいか分からない。
「おっ……おう」
真っ赤になった顔を頭巾で隠したいくらいだ。
さて、ギルドマスターにはなったが、まず何をすればいいのか?
とりあえずユウタとガイアが戻って来るのを待つか……
「リンネ様、まずはギルドホールを修繕しましょう。それと、DEATHがまた攻めて来るはずです。それに備えなければ」
「うむ」
ロドリゴに提言され、私は頷く。
「大丈夫です。皆、あなたを支えます」
彼は私の良いサポート役になるだろう、そう確信した。
「現在、有力なメンバーはラストダンジョンにて3段目の『双子』の段を探索中です。よって、すぐには戻って来れないそうです。彼らがいないのは痛いですが、ガイア様とユウタ様が戻って来るまで、ここは我々だけで乗り切りましょう」
ラストダンジョンとは、この世界の中心にあるという、13段からなるダンジョンのことだ。
その最下層に魔王がいるとのこと。
つづく
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