第87話 救世主はピンチになると力を発揮する!
私は白い神聖なる光を浴び、HPが1/5程減少した。
黒王の鎧の所々が欠けている。
「……っく」
ユウタは私に
その瞬間、ユウタと私の位置は入れ替わった。
私の元居た位置に瞬間移動したユウタは、
事実、白い光はユウタに向かっていた。
つまりこう言うことか。
ユウタが
信じたくないが、そういう現象が起きたとしか思えない。
「これが救世主……」
無傷のユウタを見て、ついそう思ってしまった。
私は頭を振り、冷静さを取り戻そうとする。
彼は私を無視してガイアに治癒魔法を唱えた。
「マリアン、何故、あなたがここに……?」
その問いには、答える必要はない。
お前と救世主はどうせ死ぬのだから。
この世界はずっと続く。
そのために邪魔者は消えてもらう。
「
竜神の剣から紫色の閃光が走る。
所詮は治癒魔法使い。
攻撃の術は限られている。
攻撃に特化した戦士職の私に肉弾戦で勝てる訳が無い。
ガイアの前にユウタが割り込む。
救世主が唱える。
「
光の障壁が私の攻撃を防いだ。
「ぐおおおお!」
私はそれを力づくで砕く。
砕け散った光の壁から姿を現したユウタは、私に手の平を向けていた。
そこから無数の光の帯が飛び出した。
触手の様に伸びたそれらは、私の五体を刺し貫いた。
勢いで跳ね飛ばされる。
「つっ……強い!」
鎧を通して開いた小さな穴ぼこから、血が噴き出す。
二度目のユウタの攻撃に、私は真っ向から挑んで負かされた。
HPは半分まで減少した。
私のプライドはズタズタだ。
こんな……救世主とはいえ……非力そうな治癒魔法使いにっ……!
「ユウタさん、一体それら魔法は!?」
「分からない……、必死に、皆を守らなきゃって思ったら自然に……」
何て奴だ。
自分のためでなく人のために戦う者が、この世界いるとは。
救世主に選ばれる人間とは、こういう者なのか。
そして、救世主には神が特別な力を宿すというのか。
「死ねえ!」
私は刺突の構えで、ユウタに突進する。
ユウタが構える。
彼の前で急角度に向きを変え、緑の髪の女に切り掛かった。
ステータス確認。
名前、フィナか。
「やめろ!」
ユウタがフィナの間に割って入る。
また、障壁でも作る気か。
そうはいかない。
「
私とフィナの位置が入れ替わる。
フィナはユウタに守られる様な位置にいた。
それはつまり、ユウタの背後にいるということだ。
「ユウタ! 危ない!」
ユウタの正面にいるフィナが叫ぶ。
「フィナ、どうしてそこに!」
ユウタの驚いた顔が目に浮かぶ。
「死ね!」
私は背後からユウタを一突きにする。
つづく
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