第86話 この世界で私は無敵! 入れ替わりスキルで人間を倒す!

 人間同士の殺し合いはPK《プレイヤーキル》と呼ばれ、忌み嫌われている。

 その理由……それは、その行為を成した後、何らかのペナルティが課せられるからだ。

 それでもPK《プレイヤーキル》は無くならない。

 無くならないどころか、月日が経つにつれ増え続けている。

 人間の欲望は尽きない。

 誰かが持ってる武器やアイテムを殺してでも手に入れたい。

 あいつが嫌いだから殺してやりたい。

 あいつが邪魔だから殺してやりたい。

 そんな私利私欲な動機で、PK《プレイヤーキル》は行われる。

 私は時々、思う。

 本当に恐ろしいのは魔王ではなく、人間なのではないかと。


「ま、私も人のことは言えないがね」


 私は神龍の剣の刀身を、舌なめずりした。

 高難度クエスト『禍々しき運命の輪』をクリアした時に手に入れた超レアな武器。

 妖しく紫に光る両手剣を携え、私はガイアの背後に忍び寄る。

 彼女は様々な聖魔法を操る、この世界随一の治癒魔法使い。

 だが、ま、私は負ける訳がない。

 特別なスキルが私にはある。


「!」


 振り返ったガイアの瞳に私が映り込んでいる。

 彼女の瞳の中で私の赤毛がはためいている。

 やっぱり奇襲なんて小細工、この女には通じない。


天使戦慄エンジェルドレッド!」


 白い光がガイアの手の平から発せられた。

 一瞬、視界がホワイトアウトする。

 その光は私を包み込み、消滅させるほどのダメージを与える。


「なんてね」


 ガイアは白い光に包まれ、聖なる業火で滅却されようとしていた。


「な……何で!?」

「冥途の土産に教えてやろう。これこそが私のスキル」

「スキル……?」


 ガイアの身体は真っ白な炎で、美しく焼かれていた。

 ユウタが私を睨みつけている。


物理交換フィジカルエクスチェンジ


 このスキルを使えば、私の身体と相手の身体の位置を瞬間的に入れ替える。

 ただし条件がある。


 私のレベルより低いものにしかスキルが効かない。

 人間だけにしか効かない。


 ガイアのレベルは90。

 私のレベルは95。

 この世界に私よりレベルの高い者はいないはず。

 だから、条件など関係ない。

 私は無敵。(対人間に関しては!)


「ふはははは!」


 高笑いすると、森に潜む鳥が一斉にバサッと飛び立って行った。


天使戦慄エンジェルドレッド!」


 ユウタもガイアと同じ魔法を放って来た。

 私は念じる。


物理交換フィジカルエクスチェンジ


 SPが消費される。

 ユウタと私の位置が入れ替わる。


「なっ……!」


 ユウタに向かっていたはずの白い光が、私の方に向かってくる。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る