第49話 NPC殺しはペナルティ。それでも狩り場を目指す者達

 私はトラ猫協同組合の部屋に一歩、足を踏み入れた。


「おっと」


 血まみれになって倒れているドワーフの男に躓きそうになった。


「おい、大丈夫か?」


 返事が無い。

 ステータスを見させてもらう。

 HPが0だ。

 死んでいる。

 そして、何者かに部屋が荒らされ、物が盗まれた様だ。


「ユウタ!」


 私は思わず叫んだ。

 部屋中に声が響く。

 彼が巻き込まれていないか心配だ。

 私は死んだドワーフに手を合わせた。

 何もしてやれず、心が痛んだ。



 森を抜け、辿り着いた武器工房。

 同じくドワーフの男が殺されていた。

 そこも荒らされていた。

 私は手を合わせた。


 子供の頃から、親やジジイから亜人間は殺すなと言われてきた。

 それは、彼らがNPCだかららしい。

 NPCを殺した者はペナルティを負うからだ。

 NPCが何なのか分からない。

 私は彼らと関わることがなかったので、ユウタのことが無ければ思い出すことも無かった。

 ペナルティを冒してまでNPCを殺したのは何者か?

 

 地下室へ向かう。

 髭面の男が言った通り、転移扉があった。

 私は迷わず入った。



 扉を開けると、そこは暗闇だった。

 洞窟か何かに通じていたのだろうか。

 懐中から蛍を取り出し、灯り代わりにする。

 出口を求め、進む。

 それにしても、そろそろガイアからお叱りの通信が来るかと思ったが、未だに来ない。

 あの門番が黙ってくれているのか、ガイアが私を見逃してくれているのか、それとも、わざと泳がせているのか……

 思いを巡らせながら歩いていると、光が見えて来た。



 洞窟を出た。

 赤土の荒野が一面に広がっていた。

 人の気配が無い。

 転移扉を抜けたらすぐに辺境かと思っていたが、その考えは甘かったと言わざるを得ない。

 亜人間側からすれば、辺境から離れた場所に転移扉を作るのは当然のことだ。

 転移扉の存在がバレても、自分達の住処から離れていれば多少の安全は確保出来る。

 それにしても……

 地図ぐらい持ってくれば良かったと後悔しても後の祭りだ。

 どの方角に進めば辺境に行けるかも分からない。

 とりあえず歩き出す。



 一時間歩いたが、何も見えてこない。

 そう思った時、翼がはためく音がした。

 上を見上げた。


「グリフォン……」


 雄大な翼で空を切っている。

 私は目で追った。

 グリフォンの背にはオーガと猫人間が乗っていた。

 亜人間が乗っているということは、このグリフォンが飛んで来た方角に辺境があるということか。

 私は歩を進めた。


つづく

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