第67話 危機一髪! 悪夢の森からの離脱。救ったのはペガサスに乗った追跡者。

 オルトロス。

 レベル80。

 ゲリュオンよりは弱い。

 だが、今の私にとってはかなりの強敵だ。

 そにれしても、一体何なんだこの森は?

 モンスターの出現率は低いが、一体一体が強力過ぎる。

 森の周辺の狩り場でいい気になった人間がここに入ったら、面食らうだろう。


「グルルルル」


 嚙み合わせた口の間から不揃いだが鋭い牙がのぞいている。

 私を食い殺すつもりか、よだれまで垂らしている。


「くっ……」


 背後は崖。

 落ちたら落ちたで、下にいるゲリュオンと鉢合わせだ。

 私は覚悟を決めた。

 道は自分で作る。


「よいしょと。思ったより軽い」


 おどけた様な声が頭上でしたと思ったら、私の両足は空を切っていた。

 正面にいたはずのオルトロスがいない。

 そして、この浮遊感。

 下を向くと、悔しそうに吠えまくる双頭が、どんどん小さくなっていく。


「大丈夫でしたか? 狩場に入った辺りで見失ったので、助けるのが遅くなりました。すいません」


 私の襟首を掴んでいる男は穏やかな声でそう言った。

 黒髪で糸みたいな細い目の優しそうなこの男は、地球アースのギルドホールで門番をしている男だ。


「しっかり私の腰を掴んでいてくださいね」


 私はひょいと持ち上げられて、この男が操縦するペガサスの後ろに乗せられた。


「お前は……」

「私も騙されましたが、お見事な残像ですね」


 何故、今彼がここにいるのか?


「紹介が遅れました。私の名は、ロドリゴ。ガイア様に頼まれてあなたの後をつけていたんです」


 飛翔するペガサスの背に揺られながら、私は思った。

 ユウタにフレンドリストの登録をお願いすれば良かった。



 地球アースのギルドホールが見えて来た。

 ロドリゴはペガサスを厩舎に預けると、私をガイアの執務室まで案内した。


「ガイア様、リンネさんを連れてきました」


 文机に向かい、何か書き物をしていたガイアは顔を上げた。

 そしてこう問い掛けて来た。


「ロドリゴの目を欺いてまでここを抜け出した理由を、教えて下さい」


 私はどう答えるべきか迷った。

 どちらにしても、ユウタのことは伏せておいた方が良さそうだ。

 そう思っていた矢先、ガイアはこう問い掛けた。


「辺境の狩り場にて、ユウタ殿には会えましたか?」


 私はなるべく感情を表に出さない様に努めた。

 そんな私を見て、ガイアは笑顔になった。


「失礼を承知で、あなたの鉄騎同盟での人間関係は調査済みです」

「なるほど」


 誰の想い人が誰で……といったことまで調査してたのか。

 こいつは今は味方だが、敵にまわすと面倒そうだ。


つづく

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