ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
第27話 昔のギルドメンバーが僕に恋してるけど、今のギルドで恋人が出来たから、今さら、もう遅い
第27話 昔のギルドメンバーが僕に恋してるけど、今のギルドで恋人が出来たから、今さら、もう遅い
「ユウター? どうしたー?」
「ちょっと待ってて、フィナ」
僕は彼女の手を離した。
ネスコに頭を下げ、フロアの隅まで移動する。
<取り込み中か? すまん……>
「リンネ、僕は今……」
<兄者を説得した。ギルドに戻って来てくれ>
タイチが……
それはつまり、彼が僕の治癒魔法を認めてくれたということか。
そして、兄に従って来たリンネは、遂にタイチに意見することが出来たということか。
リンネは成長したんだ。
だけど、もう遅い……。
「ごめん。もう他のギルドに入ったんだ」
<えっ……!?>
「それに、僕はもう君達と戦える立場じゃなくなった」
<どういうことだ?>
ちょっと、余計なことを言い過ぎた。
僕はそう思った。
「兎に角、これで終わりにしてくれ」
僕はリンネをフレンドリストから削除しようと決めた。
<待ってくれ!>
彼女の声が震えている。
「リンネ」
<何だ?>
「どうしても一緒に戦いたいというのなら、君が僕のギルド『トラ猫協同組合』に来ればいい」
<それは……>
リンネの困惑の表情が手に取る様に分かる。
僕は自分が意地悪だと思う。
リンネは兄であるタイチを捨てることは出来ない。
だから、このやり取りはこれで終わりだ。
「じゃ」
僕は通信を切った。
「終わったか?」
ネスコが問い掛ける。
「うん」
「ユウタ。我々は魔王を倒すため救世主であるお前を導く必要がある」
「うん」
「つまり、それは……我々がお前の標になることを意味している」
「うん」
「お前が道を誤らない様に」
ネスコは先生が生徒に教える様に、僕に言う。
彼の糸目は強く光っていた。
「ユウター! 落ち込むなー!」
フィナが後ろから抱き着いてくる。
いつか感じた二つの柔らかいものが背中を押してくる。
◇
転移扉を内側から開けた。
外は真っ暗だ。
ネスコが明かりをつけてくれた。
彼の背中に着いて行く。
洞窟から出た僕は、辺りを見渡した。
赤土の荒野が一面に広がっていた。
人の気配が無い。
「なんでこんなところに?」
「転移扉を亜人間の国の中心に作った方が確かに便利だ。移動に関しては、な。だが、考えて見ろ。人間がこの転移扉の存在に気付いたら……。この扉を利用して人間が亜人間の国に容易に行き来できてしまう。だから、敢えて国から離れた洞窟の中に作った」
僕の疑問について、ネスコはあらかじめ想定していた様だ。
それは、亜人間と人間の仲が悪いことを意味していた。
僕はフィナの方を見た。
「私はユウタのこと大好きだよ。だから人間と私達が仲良くなれたらいいのに」
言うや否や、僕の二の腕にガシッとしがみついて来た。
故郷に戻れるのが嬉しいのか、尖った耳がピンと立っている。
ネスコが指笛を鳴らすと、遠くの空から黒い影が。
それが、僕らの前に着地する。
鷲の様に大きな翼。
獅子の様な強靭な下半身。
グリフォンだ。
「乗れ」
その背に乗っている男が言う。
一見、人間だが、体の大きさとゴツゴツ感、牙が生えていることからオークだろう。
「ゴリッチュ。頼む」
「任せとけ。ネスコ」
彼は
僕らはグリフォンの逞しい背に乗った。
すると、ゴリッチュはグリフォンの手綱を握り空に舞う様、指示した。
◇
「ユウタ……」
私はギルドホールの片隅で、力が抜け、膝が崩れ、座り込んでいた。
「ちょっと待ってて、フィナ」
その言葉が頭の中にずっと響いている。
つづく
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