第23話 暗殺者の美少女は、初恋の相手ともう一度一緒に戦いからって、無茶ばっかりする

 私にとって初めての殺人は、10歳の時だ。

 タイチの指示で、鉄騎同盟と対立するギルドのメンバーを殺した。

 その相手は、当時の私にとって強敵だった。

 私は瀕死のダメージを受けた。



「私がリサを殺したんだ」

「なっ……」


 私の告白にタイチが絶句している。


「なんでだ?」


 タイチが深呼吸して問い掛ける。


「私達を騙し、兄者をバカにしたからだ」


 私は抗争の一部始終を話した。


「……だからって、ソロの治癒魔法使いを襲うのは卑怯じゃねぇのか……」


 確かに。

 ギルドに属さないソロの治癒魔法使い程、非力な者はいない。

 アンデットが相手なら回復系や聖系の魔法で対抗出来るが、それ以外の相手に対しては攻撃のバリエーションが少ない。


 相手が治癒魔法使いかどうかは置いといて……

 この世界において、ギルドに属する者がソロを殺すことは好まれていない。

 一般的に、ソロは集団より非力だとされているからだ。

 事実、私は神からペナルティを受け、レベルが63から62に下がった。


 (ソロが不利か? そんなことはない、と私は考えている。ソロは戦いでは苦戦するが得られる経験値はギルドやパーティの時よりも多いし、何よりアイテムは独り占め出来る。ま、この辺りはプレイスタイルに寄るのだろうが)


 ……って、タイチはリサに騙され、コケにされたにも関わらず、この期に及んで真っ当なことを言う。

 我が兄ながら純粋でバカ。

 これだから騙されるんだ。

 というか、未だにリサに未練があるのか。(死んだけど)


「……ってことは、私達、結構ヤバいじゃない」


 セイラが怯える。

 彼女を安心させるつもりはないが、私はこう言う。


「大丈夫だ。誰が殺したか何て分からない」

「どうしてそう言い切れるの?」


 リサのメガネレンズが光る。


「私達はペガサス旅団と和解した。傍目から見て、私達がリサを殺す動機が無い」

「なるほど」


 タイチが頷く。

 そして、こう言う。


「でも殺すことは無かったよ」

「兄者、いい加減にしろ」


 バカが。


「そうよ。あんな女」


 セイラが私の側についたかと思うと、こう続けた。


「でも、リンネ。あなたの単独行動は褒められたもんじゃないわよ。親ギルドの絶対成敗にバレたら、私達、粛清されるわよ」


 お姉さん風をふかして、私を説教する。


「独断で動いたのは謝る。本題はここからだ」


 私は居ずまいを正した。


「兄者、復讐だ」

「復讐……」


 その言葉に、タイチの目が光った。


「どちらにしても……リサが殺されたことはいずれ、私の仕業だと分かる。そうなる前に、ペガサス旅団やDEATHを潰そう」


 先手必勝で、ねじ伏せる。

 向こうが仕掛けて来た喧嘩だ。

 買ってやるのが上等。

 DEATHからポンの商売を取り戻せば、親ギルドの絶対成敗も鉄騎同盟に一目置くだろう。


「そうは言っても、俺達の戦力じゃなぁ……」


 タイチはギルドメンバーを見た。

 期待の星だったナオシゲが死に、他にいるのはレベル10から20台の鍛冶屋、盗賊、吟遊詩人……他に行くところが無い者ばかりだ。

 戦力になるのは、セイラと私くらい。

 それでも、私は何とかなると思っている。

 私には二つ案があった。

 一つは、


「兄者、ユウタを呼び戻そう」



 私が初めて殺した相手は、レベル30の戦士だった。

 私はレベル21。

 相手の裏をかく戦法で何とか倒したが、私は深手を負った。

 その時、ユウタが


『永遠の回復補助エターナル・リカバリー・アシスト


 を唱えてくれた。

 私は死を免れた。

 私だけは彼が究極の治癒魔法使いだと知っている。

 もう一度、彼と一緒に戦いたい。


つづく

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