125. 翔子と撤収
結局、スケルトン(つるはし装備)を駆逐したあと、三十分ほどで水が出なくなったので撤収開始。土嚢やオークの死体、スケルトンだった骨とかをどうするのか気になるけど『高度に政治的な判断』みたいなやつだよね。
排水ホースを引き上げ、古代魔導具はまだ一応動いていたのでチョコに止めてもらう。稼働を止めると座標固定も外れるので、私たちはそれだけ持って撤収予定。排水装置もろもろはしばらくはここに置きっぱだそうです。
「では、我々は撤収します。後の監視はお任せしますが、何かあった場合は連絡を」
「はっ! 了解しました!」
魔素は無くなったはず、というか撤収作業時にサーラさんにちょっと奥を見てもらったけど「無くなってるね」とのことだったので、しばらく様子見に。予定では明後日に突入という手はず。
「忘れ物はないな?」
「「はい」」
「ないよー」
「ワフン」
ハンヴィーにてさくっと帰りましょう。ほとんど何もしてないけど疲れたよ……
***
「お帰りなさい!」
戻りを連絡してあったので、本邸前で美琴さんやルナリア様、マルリーさんがお出迎え。はいいんですけど、美琴さんハグが痛いです。それだともう鯖折り……
「サーラー、どうでしたー?」
「何も問題なかったよ。魔導具もちゃんと動いてたし、オークとスケルトンが出て来たけど、私たちの出番はなかったかな」
「あら、それは良かったわね」
なんか先に報告始めちゃってるんだけど、一応、館長さんを優先したい気分。いや、でも、ルナリア様は絶対って気がしなくもない。
「その話は夕食後にでも」
「そうね。先に報告してらっしゃい。終わったら夕食にしましょう」
ルナリア様は夕食を早く食べたいだけなのでは? と思うけど口には出さずに。
「はいはい、行きます行きます。……館長さんは?」
「あ、応接室で待ってますよ」
じゃ、急がないとということで本邸に入る。汚れてないよね? 着てたローブは杖と一緒に車の中。後で洗濯してもらわないと。
「ワフッ!」
扉を開けるとヨミが飛び込んでいって、いつも通り館長さんに撫でまわされる。その間にいつもの席次で着席し、お茶が配られて準備オッケー。
「皆、お疲れだったな! 智沙、頼む」
「はい。では、順を追って……」
準備から魔導具の稼働、オーク、スケルトンの襲来と淡々と話す。オークとスケルトンが来たことに驚いていた館長さんだが、陸自の人たちで解決できたことに喜ぶ。
「そうかそうか! まあ、これで今後はもう少し楽になりそうだな!」
「まだ安心するのは少し早いかと。明後日の突入で何事もなければ良いのですが」
智沙さんが軽めに釘を刺す感じ。チョコやマルリーさん、サーラさん、ルナリア様もそうだけど、自身が抱えている魔素があれば普通に生きてはいるはず。こっちが銃火器で押せるようになったけど、向こうも生死をかけて抵抗してくるよね……
「わーってる。まあ、陸自の連中だって前回こてんぱんにされて、またってことはねーはずだ。ちっとは信用してやれ」
そいやそうだった。なんかクロスボウとか準備してたしね。あ、そうだ。
「今日倒したオークの死体とか、スケルトンの骨とかどうするつもりなんでしょう?」
「ああ、それは焼却処分するってよ。最初は解剖だのどうこう言ってたが、それで変な菌でもついたらどーすんだ? って言ったらな」
「「あー……」」
そんなことになったら、また誰が責任取るんだみたいな話が始まって以下略って感じだよね。
いや待って。私、向こう行って帰ってきてるんだけど? なんか持ち込んだりしてない? ああ、でも、こっちから転移したり転生した人も、向こうで普通に過ごせてるんなら問題ないのか。カスタマーサポートさんだってそうだもんね。
「さて、飯にしようぜ!」
館長さんがパンと膝を打って立ち上がる。いつもと同じ報告会終了の合図。今日の晩御飯はな〜にっかな〜?
***
「なるほどー、ではー、明後日に廃坑を探索し尽くせば終わりなんですかー?」
「ええ、それも私たちは基本的に待機ですね」
「あの廃坑、結構広いと思うんだけど一日で終わるの?」
そういや前に助けに行った場所からさらに奥があったし、なんならその手前の丁字路のところもまだまだ未踏破だった気がする。
「電波が通るようになったことだし、UGVを使うのではないかと」
「「UGV?」」
「無人地上車両と言った方がいいだろうか?」
「「ああー」」
ゴリアテ……は違うけど、遠隔操作型の無人機を使った方が楽だし早いよね。魔物がいても、最悪その無人機が尊い犠牲となるだけで人的被害は出ないし。
「こういうやつですよね?」
チョコがタブレットでググって動画を出してくれる。なんかGPSと連動して動いたりするけど、廃坑の中だと無理だよね。となると有線……あれ?
「なんか最初から、このUGVを使って探索すれば良かったんじゃ?」
「おそらく最初はそれを試したはずだ。だが、燃料がディーゼルやガソリンだとすると……」
ああ、内燃機関は魔素があるとダメだった。瓦礫除去とかだとパワー必要になるし、電池だときついのかな。って言うか、そもそも駆動時間が短くなっちゃうよね。最初から有線で電源外部供給も考えられたUGVって……汎用人型決戦兵器っぽい。
「面白いわね。変わったゴーレムみたいに見えるけど、近しいものなの?」
動画に見入っていたルナリア様が聞いてくるので簡単に説明を。とはいえ、あっちの世界で動いてたゴーレムみたいに賢くないし、そもそも遠くから操縦するから別物かな? 最近だと自律型もあるみたいだけどね。
「なるほどねえ。偵察だけならこういうのもありだね」
とサーラさん。実際、アメリカの特殊部隊とかって小型無人機で部屋の先を偵察したりするんだっけ? アレってFPSの中だけ?
「これって急な坂道とかは大丈夫なんでしょーかー?」
「あー、キャタピラ……こういう車輪がついてるのは急な坂道とか、激しい段差とかはちょっと苦手ですね。なので……」
チョコが別の動画を開くと、そこには四本足のロボットが。軽快な足取りで険しい山道をえっさほいさと登っていく。
「うわ、何これ? 馬ゴーレム? 馬っていうか山羊?」
動画に見入るお三方。最初のうちは山道を走ったり、氷の上を走ったりと、まあまあ普通(?)の動作をしてたんだけど……
「「「……」」」
タップダンスや大縄跳びし始めたあたりで頭に?マークが飛び始める。
「翔子。これは一体何のためなの?」
「いや、えっと、バランスがすごくいいとか、こんな器用なことができますよっていうアピール的なもので……」
私だってよくわかんないよ!
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