53. 翔子と第七階層
ディアナさんから向こう側の世界の第七階層から第九階層までは、きっちりとクリアリングされたと聞いた。けど、第十階層は手付かずらしい。
なんでも、よくわからない状態になっていて、近づくのも躊躇われるからだそうで。
「よくわからない状態っていったい……」
「そうだな。言葉で表すのは難しいのだが……世界が歪んでいる感じだったな」
あー……なんとなく理解した。
二つの世界の接続部分になってて時空が歪んでる? 亜空間とかそういう感じなのかな。
「ですのでー、こちら側でも第九階層までしか行きませんからねー」
「了解だ」
智沙さんが答え、私たちも頷く。
そんなところに入って出て来れなくなったら『考えるのをやめた』モードになりそうだし。
「ではー、翔子さんとヨミちゃんお願いしますねー」
「はい」
「ワフッ!」
場所は第七階層へと降りる階段前。ここから先はアンデッドが跋扈してるはず。
というか、向こう側の第七から第九までもアンデッドだらけだったそうで、ディアナさんとマルリーさんはそちらが終わったから、こっちに来てくれたとのこと。頼りになります。
「
聖域を作り、続いて加護をかける。
続いてディアナさんが精霊魔法を唱えた。
「光の精霊よ」
ふわっと浮いた光の玉が階段の先を照らす。すごい。
「じゃー、行きましょー」
緊張感ゼロの掛け声と共にさくさくと階段を降りていくマルリーさん。彼女を聖域の端から出さないように私たちも追いかける。
前は寒気というか嫌悪感がすごかったけど、今日はそれが全くない。やっぱり聖域と加護のおかげなのかな?
階段を降りたところから伸びる通路に照明はないけど、光の精霊に照らし出されたのは……
「たくさんいますねー。まずは私とチョコさんと智沙さんでー」
スケルトンがうじゃうじゃと……
私たちに気づいたのかスケルトンがこちらに向かって動き始め、マルリーさんがそれを受け止めるかのように前へと出た。
「えいー」
接敵したマルリーさんが
シールドバッシュだっけ? それ
「お二人もー」
「行きます!」
「了解した」
槍や警棒で骨は辛いのでは? と思ってたんだけど、骨の隙間から見えてる魔石を直接突くといいらしい。
えーっと、掠るだけでぼろぼろと崩れて光の粒となって消えてるんだけど、これ加護のおかげだよね?
結局、向かってきた三十体以上のスケルトンが光の粒となって消えるまで五分もかからなかった。
「はいー、よくできましたー」
「これって加護があるから効いてるんですよね?」
「そうなんですけど、翔子さんに掛けてもらった加護はヨーコと同じぐらい強いですねー」
「え?」
マルリーさんが知る限り、普通の神官に掛けてもらった加護では、アンデッドが光の粒になったりはしないらしい。
せいぜい攻撃した部位を穿つ程度らしく、動かなくなるまで攻撃を続ける必要があるんだとか。
「マルリーさんの
その
「でもー、チョコさんの槍や智沙さんの警棒が掠るだけでアレですからねー」
……なんで? 特に信仰心とかは以下略なんだけど?
「あ! ヨミが優秀だからですよ」
「ワフ〜ン」
首を横にふりふりするヨミ。えーっと違うの?
「まあ、それは後にして先へ進まないか?」
「ですねー。次はディアナさんと翔子さんがお願いしますねー」
ということは、弓と魔導拳銃の遠距離で倒せってことだよね。了解了解。
しばらく進んだところで道は左に折れて続いていた。その先には部屋かな? 多分、結構いると思うんだけど……
「どうします?」
「ディアナさん、お願いしますねー。敵が近くまで来た場合は、私、チョコさん、智沙さんでカバーしましょうねー」
全員が頷いたのはいいんだけど、ディアナさんにお願いって何を?
「光の精霊よ」
光の玉がもう一つ現れ、すいーっと前方へと飛んでいった。釣ってきてくれるってことでいいんだよね?
ホルスターから魔導拳銃を抜いてセーフティーを外す。マガジンは氷弾。
マルリーさんの話では、加護がかけられた魔導具から発せられる魔法も加護の力を持つらしい。
つまり聖氷弾……聖水が凍ってるわけじゃないと思うけど。
「来たぞ」
ディアナさんがそう告げてマルリーさんの右後ろへと。私は左後ろに移動して片膝をつく。
光の玉に釣られるようにヨタヨタと走ってくるスケルトン。慎重に狙いを……
ヒュンッ!
右側から聞こえた風切り音はディアナさんが放った矢から。
それはほぼ真っ直ぐ飛んでいってスケルトンを光の粒に変えた。
「マジ?」
私の心の声がチョコから漏れる。
静止してる的ならともかく、相手動いてるんですけど……
「翔子さんもー」
「は、はい!」
感心してる場合じゃなかった。というか『エルフは弓が得意』ということで気にしない!
弓はなんだかんだ連射はできないので、矢のリロードの間に近づいてくる骨に撃っていく。
いきなり魔石に命中はしないけど、体の中心に当たれば加護のおかげで倒せてる模様。
「いい感じですよー。魔素が辛くなったら言ってくださいねー」
氷弾を単発で撃ってる分には全然平気。なんというか一発撃って、次を撃つ前には回復してる感じかな。
これならバースト射撃できる魔導護身銃を持ってきた方が楽だった気がするけど、あれって自分で使っててもヤバい気がしてくるんだよね……
結局、また三十体ほどのスケルトンを寄せ付けることなく殲滅完了。
うーん、ちょっと拍子抜けというかビビり過ぎてたのかな?
「加護の力のおかげが大きいので過信はしないでくださいねー。みなさん一通り戦闘はしたので、これからはしっかりと役割を守って行きましょー」
さくっと釘を刺されました。正しいと思います。
役割といってもあまり難しい話ではなく、マルリーさんがメイン盾、チョコと智沙さんがDPS、私とディアナさんがサポートというわかりやすいやつ。
今までと同じような相手が続くなら、無駄に矢や魔素を消費しなくてもいいしね。
「ワフッ!」
「うんうん、ヨミも頼りにしてるからね」
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