ショートショート集

光希

「レッドカード」

 父さんは立派なサッカー選手だった。「正々堂々」というモットーを掲げる素晴らしい選手だった。

 そんな父さんに昨日、レッドカードが渡された。そのせいで父さんは遠くに行ってしまう。母さんも婆ちゃんも姉ちゃんも、みんな泣いている。辛そうな家族を見て悲しみが溢れかえった僕は、叫ぶように父さんに聞いた。

「カードを無視しちゃダメなの!?」

「無視すれば、みんなに迷惑がかかるんだ」

 父さんは今まで見たことないような、悲しみと苦しみがごちゃごちゃした顔で言い放った。

「新しい戦いに行くんだ。そっちでも正々堂々やるよ」

 父さんはそれだけ言い残していった。婆ちゃんは、爺ちゃんもこうして未来を奪われたんだってずっと泣いている。

 いつか僕もあのカード貰って、また家族は泣くのかな。泣く家族もいなくなっているのかな。死ぬときは、カードを渡すやつをたっぷり恨んでやらなきゃ。

 戦争なんか始めたやつを____

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る