第6話 初恋

淋しい夜が訪れて 

心に霧がかかる時 

いつも思う あの人を


初めて出逢った 夏の午後

あの日から

心に住みついた人


何も云えずにいたけれど 

あなたを想うだけで 

倖せだった


言葉を交わすこともできずに 

ただ見つめ合うだけの 

一年でした


出逢った時と 

同じ夏の日に 

あの人から 封一つ


“好きよ”


ひと言 ありました


夏が過ぎ 

木の葉が散る淋しい 

秋の黄昏に


遠い町に行った 

と 

風の

便りに聞きました


ほんの少しの勇気が持てずに 

一歩を踏み出せなかった


年上のあなた ……

大人のあなた ……

子どものぼく


ほろ苦い初恋でした

------

(独り言)

文芸部に所属していた定時制高校時代のことです。

一年生のわたし、そして四年生の先輩。(定時制高校=夜間の勉学で4年間通います)

平安美人を思わせる、清楚な女性でした。

でも、とても芯の強い女性でした。

わたしが書き上げた作品(地獄への招待=後に、愛・地獄変として書き直しました)を読まれて、悲しげな目を見せながら「あなたには、夢がないのね」とのひと言。

グサリと来つつも、なぜか誇らしくも思う自分がいました。

その方は、高校卒業後すぐに嫁がれました。

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