ブラウザと家具とサブスク
犬丸寛太
第1話ブラウザと家具とサブスク
仕事から帰りパソコンを立ち上げる。
別にパソコンで何か作業をするわけでもないが、もはや日課というよりこれは癖だ。
やはり特に調べ事もないがブラウザのアイコンをダブルクリック。
メールが届いている。とあるオークションサイトからのメールだ。無事、落札されたとのことだった。
先日私は自宅にある一切の家具を出品した。
契約していたサブスクもすべて解約した。
別に金に困っているわけではない。
巷ではやりのミニマリストとやらを試してみようと思っただけだ。
テレビや雑誌が言うには周囲から物をなくしてしまえば執着心がなくなり心がスッキリするらしい。
近頃心に淀みを抱えていた私は本当に心がスッキリするならばとすぐに行動した。
ひとしきりメールをチェックしたあとあることに気づいた。
未読メールが一件残っている。
おかしい。今日届いたメールはすべて目を通した。それに私はこういった通知の類は消してしまわなければ耐えられない性分だし、そもそも昨日までは無かったはずだ。
急いで未読メールを探す。
最近のメールではないようだ。探しても見当たらない。しらみつぶしにだんだんと時間をさかのぼって探していく。
見つけた。どうやらアカウントを作成してから一番最初に届いたメールのようだ。
早速確認してみると、妙な内容だった。
弊社の月額サービス「LIFE」にご入会いただきありがとうございます。入会キャンペーンとして22年間無料でお楽しみいただけます。※キャンペーン期間の終了はご登録いただいたメールアドレスへ送信されます。サービスを継続されるお客様はフォームに従って当該メールへご返信をお願いいたします。
陳腐ないたずらメールだった。
しかし、アカウントを作成してすぐにメールアドレスが流出するとはグーグルは何をやっているのか。
未読通知を消したことで安心した私はメールを閉じようとした。そこであることに気づいた。
やはりこのメールはおかしい。
タイムスタンプには199×年×月×日とある。これは私の生年月日だ。
生年月日まで流出したのか。
しかし、よくもまぁ、質の悪いいたずらを考え付くものだ。半ば感心しながら今度こそメールサービスを閉じようとした。
新着メールが届いた。また家具が落札されたのかと思いタイトルを確認する。
「LIFE」サービス継続に関してのご案内
またこれか。
今度は内容を確認することもなくメールをゴミ箱に捨てた。
近頃は残業ばかりだ。
「普通に考えて新入社員に残業させねぇだろ。」
悪態をつきながら時計を見る。
時刻は11時。
「もう11時か・・・、なんか疲れたし寝るか。」
布団をかぶって目を閉じる。
そういえば今日誕生日だったな。
「くそ、もう全部やめてやる。」
最近一人言が多くなったな。
ブラウザと家具とサブスク 犬丸寛太 @kotaro3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
春をくゆらす/犬丸寛太
★2 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます