第2話
私はアユミと別れたあと、都内のとある喫茶店へと向かっていた。
『しかし、アユミは本当に軽いなぁ。』
私はアユミのリアクションが予想以上に軽かったことに驚いていた。ウザい、死んでくれと思っていた人であっても、本当に死んでしまったらそれなりに驚き、なんとなく自分のせいだと落ち込むかと思っていたから。
喫茶店に入り店内を見渡すと、窓際の席に連絡された通りの服装をした人が座っていた。
「すみません、四谷さんですか?」
四谷と思われる人物は私のことを全く見る事なく座るように促した。私は促されるまま座った。
すると、四谷はカバンから一枚の紙を差し出した。書類には、請求書と書かれていた。書類に一通り目を通した。請求書には、『請求額500円』と書かれていた。私は恐る恐る四谷に質問してみた。
「あの、本当に500円で良いのでしょうか?」
四谷はただ一度頷くだけで、声を全く発しなかった。ただ、どうしても人を殺してもらった報酬が500円という金額が信じられなかった。
「本当に私が警察に捕まることってないでしょうか?」
四谷は再び頷くだけで声を発しなかった。言葉一つ発しない状況に私は一抹の不安を覚えながらも財布から500円を四谷に差し出した。四谷は、500円を受け取ると律儀に領収書を渡してきたので、私は思わず、
「領収書なんて要りません。こんな証拠になってしまいそうなもの残さないでください。」
とツッコみを入れてしまった。
四谷は領収書をカバンの中に戻そうとしたので、
「すいません、その領収書をちゃんと破棄してくれるか心配なので四谷さんの控えと合わせて私に破棄させてもらって良いですか?」
私は四谷にお願いをし、自分で破棄するようにした。
「あの、四谷さん。最後に一つだけ質問しても良いでしょうか?」
四谷はまた静かに頷いた。
「なんで、人殺しのリスクを負っているのに、料金はたった500円になのでしょうか?」
四谷はカバンからノートを取り出し、ペンを走らせた。差し出された紙にはたった一言。
『企業秘密』
とだけ書かれていた。
そして、四谷は無言で立ち上がると私に一礼をし、伝票を持って喫茶店を後にした。
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