ワンコイン殺人
乃木希生
第1話
「ねぇねぇ、ワンコインで殺人請け負ってくれる人がいるって知ってる?」
「知らない。マジでワンコインで人殺してくれるの?」
「うん、そうらしいよ。今、ネットで話題になってるんだよ。」
「でもさ、依頼した人も捕まるよね?」
「それがね、依頼した証拠がないから大丈夫らしいよ。」
「え?そうなの?」
「うん。だってさ、もし『あいつ殺してやる』とか『死んで欲しいわ』とか言ってるだけで捕まえてたら、今頃日本人の半分以上が塀の内側に入っちゃってるでしょ。」
「確かにね。それで捕まってるなら、私なんて一生、塀の内側だわ。」
「あんたはちょっと言い過ぎだけどね。」
「だって、本当に死んで欲しい人ばっかりなんだもん、私の周りにいる人たち。」
「だったらさ、試しにワンコイン殺人の依頼してみたら?」
「えー、本当に大丈夫って証拠がないと流石に怖いよ。」
「大丈夫だよ。だって、ワンコイン殺人がネットで話題になってから半年以上経つらしいんだけど、依頼した人が捕まったっていう話は出てないから。」
「じゃあさ、二人で一緒に頼もうよ。」
「別に良いけど、私たちが共通して死んで欲しい人なんているかな?」
「いるでしょ。バイト先によく来る気持ち悪い客いるじゃん。」
「あー、あいつね。確かに、あいつなら死んでも誰も困らないだろうし、むしろ社会の為には殺した方が良いかもね。」
「でしょ。じゃあ、決定。どうやって頼めば良いの?」
「それは知らない。」
「知らないって。せっかく、あいつの顔を見なくて済むって喜んだのに。私の喜び返してよ。」
「ちょっと調べておくから。」
「お願いね。多分、今日もまた来るんだろうな。マジで憂鬱だわ。」
三日後。
「ねぇ、知ってる?」
「なにを?」
「三日前に話したあいつ、死んだらしいよ。」
「え?マジ?」
「マジ。」
「あんた、いつの間に依頼したのよ。」
「私、依頼してないよ。あんたが依頼したんじゃないの?」
「私もしてないよ。」
「え?怖い怖い怖い。」
「まぁ、とりあえずあいつが死んでくれたなら、死んだ理由とか誰が依頼してくれたとかどうでも良いや。」
「相変わらずあんたは軽いね。」
「悩んでも仕方ないことってあるからね。」
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