第3話 誰も来てくれない

 それから半年が経った。


 病室の窓から見える大きくて邪魔だった木も、綺麗な花が咲いた。愛花はその木にちょっとだけ、謝った。




「邪魔だなんて思っててごめんね」




 こんなに綺麗だったなんて。


 そう付け加えて、愛花はカレンダーを見た。もう春だ。なのに。


 最初は寒いからだと思っていた。愛花の元にお見舞いが来なくなったのが、冬に入った頃だったから。お見舞いに来てくれる人の服装が厚くなる毎に、徐々に人数が減っていった。


 家族と病院の関係者にしか会えなくなった愛花は、胸にぽっかりと穴が空いてるみたいな、そんな感覚に苛まれた。


 誰も私を心配などしていない。


 誰も私に元気になってほしいと思っていない。


 誰も私を必要としていない。


 誰も私を見ていない。


 と。


 これが孤独かと、これがひとりかと、愛花は手首を握って唸った。




「なんで……誰も来てくれないの……?」




 それを聞いた母親は何も言えなかった。


 愛花の目には涙が滲んでいた。愛花はその涙を目から千切り落とそうとするべく、瞳を閉じた。

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