孤独なあなたへ
@kitonoto
一、目覚めた(?)男
孤独とは、他の人々との接触・関係・連絡がない状態を一般に指す。 「自分がひとりである」と感じる心理状態を孤独感という。(wikipedia参照)
「ぉえぇ」
男は急に襲ってきた目眩や吐き気による吐きにより、目を覚ました。
汗まみれの背中をさっきまで眠っていたベットから離し起き上がる。
(最悪な目覚めだ。)
心の中で思いながらフラフラの体を制御し、トイレへ向かう。
何か悪いものでも食べたか...。
朦朧とする意識の中でこの体調不良に関する、原因を探る。
昨日の食事を思い出しているとふとあることに気が付いた。
(何も覚えていない...。酒でも飲み過ぎたか?)
昨日のことについて何も覚えていない自分に驚きながらも、酒という原因も考える為。一旦食事については思い出すのをやめた。
トイレに着いたら、便座に頭を向け、いつでも吐ける準備をした。
しかし、いくら待てでも胃液が逆流してくる気配がない。
やはりというべきか吐き気を催した時ほど実際に吐くことはあまりない気がする。
兎に角、自分の消化物を見ずに済んだことに安心し、男は洗面所へ向った。
(顔に水を当てれば、大抵のことは思い出すだろ。)
そう考えていた、男は顔を洗い、バスタオルで顔を拭いていた。
男はふと思った。
自分はいったいどんなひどい面をしているのかと。
目はやつれているのか、頬はコケているのか。
などと思い、髪に付いた水滴を吹き飛ばすほどの速度で鏡を見た。
「........。」
男の中の時間は数分止まっていた。
男は鏡に映っている人物に見覚えがなかったのだ。
髪はぼさぼさで、髭も汚らしく生えており、歯はボロボロで、一部欠けているところもあった。
(誰だ、こいつは。)
こんな奴は知らない。
男は何度も顔に水道水を掛けた。しかし、結果は何も変わらなかった。
(何故だ、こいつは誰だ。)
自分が見知らぬ男になっている、その恐怖が男を支配し、困惑させた。
(俺はこんな顔じゃない、俺は....。)
この時初めて男は気が付いた。
自分のことについて何も覚えていなこと。
いや、ここが何処なのかも、何故ここにいるのかも、何もかも覚えていなかった。
突如男は体の真ん中がくり貫かれたような感覚に陥った。
何も思い出せず、何も覚えておらず、自分自身の名前すらも分からないでいた。
先ほどトイレに向かった時よりも不安定な体を制御し、男は起きた時にいた場所へ向かうのであった。
孤独なあなたへ @kitonoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。孤独なあなたへの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます