第15話 約束だぜ

有希は俺の為に絵を描き続けてくれた。

何故かというと、俺を描くのをまたやってほしいという意味で、だ。

その事には.....本当に感謝しか無い。

俺の為に幼馴染が頑張ってくれたのだ。


そして遂に5月30日。

体育祭当日になって体育祭が始まった。


俺は体育祭の最中、長石に声を掛ける。

長石は直ぐにこっちを見た。

それから笑みを浮かべる。


「おう。何だ?」


「有難うな。お前のお陰で励みになった」


「.....何もしてねぇだろ。ハッハッハ」


「.....いや。お前のお陰でもある。そして.....みんなのお陰で.....決めれたよ」


「.....何をだ?」


長石は首を傾げた。

俺、やっぱり絵を描くのを頑張ってみる。

と笑みを浮かべながら告げる。

それから.....俺は目の前を見つめる。

そこでは栗葉が、愛花が踊っていた。


「.....いやー。女子達の踊りはやっぱ良いよな。たるんたるん胸が揺れるしよ」


「いや、相当な変態だなお前.....」


「.....ハッハッハ。良いじゃねーか。俺達は男なんだしよ」


「そうは言えど.....」


でも確かに気にはなるな。

俺達は男だしな.....。

その中で、だろ?、とニヤニヤする長石。

長石の同じ様に思いたくはないが.....。


「.....でも可愛いよな。栗葉さんも愛花さんも」


「.....輝く女の子は可愛いのさ」


「.....おう?名言か?ハッハッハ」


「名言とかじゃないさ。ただありのままだよ」


「.....そうか」


確かにな。

輝く女の子って可愛いよな。

と長石はニコッと笑顔を見せる。

俺はその姿に、ああ、と返事をした。

それから俺達はまた視線を女子達に向ける。


「終わったみたいだな。次は.....何だっけ?」


「組体操はさっきやったよな。次は.....リレーだな」


「面倒臭いな。俺の活躍か」


「おう。でも無理はすんなよ」


「.....ったりめーよ。大丈夫だ」


長石は足を見てから親指を立てて笑みを浮かべる。

戻って来た栗葉が俺と長石を見てから笑みを浮かべた。

それから頑張ってね、長石君、と見送る。

そして長石は期待を背負って行った。


「.....長石君.....大丈夫かな」


「.....まあそうなるわな。無理をしない様に見守ろう」


「.....だね。お兄ちゃん」


それからリレーが始まろうとする。

俺は参加選手の姿を見ながら、頑張れ長石、と思った。

こんなに他人を応援するのも初めてだな。

この体育祭が、だ。

考えながら.....俺は目の前を見る。


「お兄ちゃんがこんなに応援するのも初めてだよね。大声で」


「.....そうだな。初めてだと思う」


「気持ちでも変わったの?」


「.....もしかしたら変わったかもな。お前らのお陰もあって」


「.....そうなんだ。嬉しいな」


栗葉は手を合わせて笑顔を見せる。

だから俺は絵を描く。

その様に決意しながら.....頑張ろうと顔を上げた。

そして駆け出し始める長石。


「長石!!!!!」


「長石君!!!!!」


俺達は大声で応援する。

すると一生懸命に走っている長石がこっちを見た気がした。

俺は見開きながらも.....必死に声を掛ける。

ボッチなりに、だ。


「.....長石君速いね!やっぱり!」


「そうだな。確かに早い。頑張ってる」


俺は真剣な顔で見つめる。

それから5位、3位、2位、という感じで次々とぶっちぎっている。

そして遂に長石は逆転した。

つまり現在は1位になっている。


そう言えばそんな長石がこう言っていたな。


『俺が1位取ったら.....俺の絵を描いてくれよ』


「.....今思えば無茶苦茶だよな。アイツもアイツで」


「どうしたの?お兄ちゃん?」


「.....いや。何でもない。長石の言葉を思い出したんだ」


「.....どんな言葉?」


秘密だ、と俺は苦笑する。

アイツが1位を取ってから.....俺は考えよう。

思いながらいるとラスト半周になった。


俺は手に汗を握っている。

この感覚は本当に久々の様な気がする。

そしてジッと見守った。

栗葉が手を叩く。


「いけそうだね!」


「そうだな」


だがゴール直前で2位に超えられた。

しかし.....その2位はゴール直前でぶっ倒れた。

躓いて転んだのだ。


俺は見開きながら長石を見る。

そして長石は.....1位でゴール。

まさかだった。


「長石ー!!!!!」


「やった!凄い!」


そして1位になった長石はこっちに親指を立てて旗を持っていた。

俺は何だか.....背中を押された気分だ。

自然と涙が浮かんできた。

それから.....俺は戻って来た長石を見る。


「やったぜ。ぶっちぎったぜ。1位だ。.....約束通り俺の自画像でも描いてくれ」


「.....ああ。約束だ。お前の為に絵を描く」


「あ.....そんな約束していたんだね。アハハ」


「そうなんすよ。ハッハッハ」


長石は俺に口角を上げる。

それから.....俺はそんな長石に笑みを浮かべた。

そして体育祭は進んでいく。

約束を果たす為に.....頑張ろうと決心もした。

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