第7話 無人島に持って行くとするなら

栗葉が嫉妬している気がする。

何故、嫉妬しているのか分からないが愛花と戦いをしている様な。

そんな感じの嫉妬だ。

俺は首を傾げながら.....栗葉を見る。

栗葉はやる気に満ち満ちていた。


そんな光景を見ながら俺は窓から外を見る。

何というか授業中だから、だ。

因みに俺はこんな暇人みたいな事をしているが成績はそこそこに上だ。

何故そうなっているかと言えば1年間、引き籠っている際に勉強したから。

その為、頭が柔らかくなり頭が良くなった。


俺はそのせいで成績も上だ。

だけど勿論、サボる気は無い。

俺は真面目にノートを取りながら.....問題を解いていた。

教師が黒板に書き記す内容を頭の中で砕いていく。


そうしているとチャイムが鳴った。

俺はチャイムの音を聞きながら教師が、じゃあ今日はここまで、という合図を聞く。

それから.....掃除に入る為に動き出す周り。

俺はその光景を一瞥して立ち上がる。

今日は掃除当番では無い。


「道春。帰ろう」


「.....ああ。帰るか」


栗葉がニコニコしながら寄って来る。

俺はそれに少しだけ笑みを浮かべてそうして教室の外に出ていると。

目の前に愛花が立っていた。

俺を見ながら笑みを浮かべている。

何をしに来たのか。


「帰るんですよね。道春さん」


「.....そうだが。どうした愛花」


「私と一緒に帰りましょう。今日は部活が無いので.....」


「.....そうくるか.....でも御免な。俺は栗葉と帰るんだ。すまない」


栗葉は、そうよ、と勝ち誇った様に愛花を見る。

愛花は少しだけ栗葉を見てからそして俺を.....見てきた。

駄目ですか?、と首を傾げる。

だがそれを栗葉が遮った。


「お兄ちゃんは私の!」


「貴方には聞いてないです」


「聞いてようがきって無かろうが私のお兄ちゃんを取らないで」


「.....ハァ.....分かりました。これ以上やって道春さんに嫌われるのも嫌ですし」


また今度一緒に帰りましょう、と俺に言い残してそのまま愛花は頭を律儀に下げた。

そして栗葉を睨んでからそのまま去って行く。

俺は盛大に溜息を吐きながら.....栗葉を見る。

お前さ.....、と呟いた。

すると、何?お兄ちゃん。私が悪いとか言いたいの、と俺を見てくる栗葉。


「いや.....そんなつもりは無いが何でここまで嫉妬する」


「.....それは.....」


「.....」


「お兄ちゃん。行こう」


少しだけ顔を赤くしながら俺を見てから俺の袖を引く栗葉。

俺は首を傾けながらその光景を.....見る。

結局、何故なのか教えてはくれないらしい。


俺は.....、まあいいか、と思いながら歩き出す。

そうしているとスマホが鳴った。

俺はスマホを見る。


「.....姫野か?」


(そっちに愛花ちゃんが行ったよね?どうだった)


栗葉と一緒に歩きながら。

そのメッセージに返事を送る。

そして画面を見つめる。


(確かに来たが。お前がもしかして俺は此処に居ると言ったな?お前。修羅場になっているぞお陰で)


(アハハ。ごめんね。どうしても.....愛花ちゃんが知りたいっていうから)


(.....お前ももしかして俺に戻って来てほしいのか)


(本音を言うと、心から言うと当たり前だよね。それは誰だって同じだよ。君の才能は非常に.....素晴らしいから。先生も勿体無いって言ってるし)


(有難いけど本当に俺は傷を負い過ぎた。ごめんな。姫野)


勿論私は無理にとは絶対に言わない。

でもいつか君が来た時の為に席を空けておくよ。

と姫野は優しくメッセージを送ってくる。

俺はその言葉に、ああ、と返事をした。

それから下駄箱で靴を履き替える。


「もしかして姫野さん?」


「姫野だ。愛花が来たのは姫野のせいみたいだ」


「.....そうなんだ」


「すまんな。お前にも何だか嫌な思いをさせて」


私は別に構わないよ。

全然.....愛花さんに負けるつもり無いから、と俺を見てくる栗葉。

意を決した様に、だ。

俺はその姿に、そうか、と返事をした。

それから外に出ると栗葉がこう聞いてくる。


「お兄ちゃんは.....愛花さんと私、どっちが好きかな」


「.....好きという感情は無いな。というか考えるつもりは無い。俺は.....どっちも心から大切だ」


「.....じゃあその.....無人島に連れて行くのに女の子を選ぶとするなら」


「.....何故無人島になる。何故女の子。意味が分からない」


「良いから答えて」


赤い顔で俺を見てくる栗葉。

何故ここまで、と、思ったが。

試しに答えを考えて言葉を発そうとしたが。

喉につっかえた様に出て来なかった。

俺は言葉を変えて答える。


「.....御免な。.....やはり答えが出て来ない。いや。正確には.....昔の件でつっかえて出て来ない」


「.....お兄ちゃん.....」


「.....だけど分かってほしい。俺はどっちも大切だ」


「.....うん。分かった。じゃあそういう事にしておいてあげる」


それは良いんだが。

しかし何故いきなり無人島なんだ、と俺は聞くが。

栗葉は、追求しないの。女の子には秘密が沢山有るんだから、と、一切教えてはくれなかった。


俺は.....顎に手を添える。

やはり無理なのか、と。

こんな単純な事も.....答えれないのか、と。

若干に悔しかった。

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