目つきの悪い令嬢と思ったら目が悪いだけだった
黒月白華
第1話 目つきの悪い令嬢と出会った
その目つきが恐ろしく怖い令嬢にぶつかった俺は思わずビクッとした。
夜会で人にぶつかるなんてことはよくある事だがめっちゃこえええよ!!!睨んでくる睨んでくる!!
何だあの人を目だけで100人は瞬殺出来そうな恐ろしい眼光は!俺は思わず
「うへっ!こっわ!」
と口走り後悔した。
咄嗟に出た言葉とは言え、この後きっと一発殴られることくらいは予想して青くなった。
その間にもめっちゃ睨んでくる!
俺はしがない一騎士だ。一応王宮騎士団に所属している。イケメン過ぎな団長のヴァイダル・ハマーフェルドさんと比べて俺は背が低い童顔の可愛らしいさを売りにしたような騎士で副団長を始め、団員達からからかわれるような奴だ。
俺の名はクラース・ルーテンバリと言う。
薄桃の真ん中訳の髪に瞳は蒼い。
この姿で美人のお姉様令嬢にはいい顔をしつつ、お姉様方からは子犬系とよく言われる。
休日に特定ではないけど少しお姉様達とデートに行き奢ってもらう。そう、俺はこう見えて守銭奴でお金のあるお姉様が大好きだ。もちろん身体の関係なんて持たない。ワンコは綺麗なワンコだよ?
ていうか好きな女が出来たことがない。そういうのは好きな女とスルし童貞も好きな女で捨てると心に決め婚約も結婚も愛人も断りつつなんとなくチャラチャラ生きてきた。デート一回につきお金はいくらかもらうがキスなどの安売りはけしてしない。そこはどんなに迫られても譲らない。女なんて甘い顔向けてれば適当に可愛がってくれるし、お金もくれる。
騎士になったのもワンコだけど強いんですよ。というステータス目的で特に団長みたいに真面目にこの国を守る為に命捧げます!みたいな性格ではないのは確か。
悪く言えば本当の俺はチャラい!が似合ってる。いや、身体関係はないよ?
そんなわけで有力貴族様の開かれる夜会の警護とかを本日もダラダラしちゃってた訳ですが、お姉様方に散々可愛い子ね♡とか食べちゃいたい♡とか誘惑されつつも適当に必殺愛玩スマイルで潜り抜けトイレへ行こうとした時にその怖い令嬢にぶつかった。
ぶつかってお互いに尻餅をついたが、めっちゃ睨まれるとる!!そりゃぶつかった俺も悪いけどそんな怒んなくても…。
「あの?すみません…大丈夫ですか?」
と手を出すとその手をグイと捕まれ至近距離でめっちゃガン飛ばされた!!
ひいいいっ!こっわ!!何この人!関わりたくない!!本能的にそう感じた俺は逃げ腰だ。
「……………どうも…ごめんなさいね」
とめっちゃ低い声で睨まれながら言われる。
「あ…い、いえこ、こちらこそ…すみません…お、お怪我は?」
慰謝料とか請求されそう!!
すると令嬢は顔を話し
「ありませんわ…失礼致しました」
とギロリと睨み踵を返した。
俺は何だか判らないが、まぁ危機は去ったと思いほっとしていた。
ところが…その令嬢とまさか婚約することになろうとはこの時は思っていなかった…。
*
「見合いっすか?」
俺は団長に呼ばれて何かと思ったら見合いを勧められた。
「そうだよ…クラース。いつまでも尻尾振って女に餌(金)貰ってないでそろそろ身を固めろ。安心しろ、良いとこのお嬢様だ…金に困ることはないだろう」
とヴァイダル団長が勧めた。
はぁ?見合いだとう?
「いやいや団長…俺はそんな…好きな子だっていないしほら、恋愛結婚!あれ憧れるじゃないですか?団長と奥様も恋愛結婚ですよね?俺だってそれしたいのに見合いとかほんと浪漫もかけらもねっすよ…クソが」
と言うとヴァイダル団長は溜息をつき
「クラース…お前何歳だ?」
「23っす」
「23だぞ!?もうとっくに成人してるんだ!見た目だけなら16歳くらいにしか見えんがな!!」
「実際坊やって言われますねえ!へへん」
「へへんじゃないっ!この童顔童貞犬野郎!!」
とヴァイダル団長は怒る。
あんまり怒らすと訓練きつくなりそうだ。
「わ、判ったっすよ!行くだけ行けば良いんですよね?」
すると団長はガシリと俺の顔を挟んだ。もちろんそんな趣味はない。
「何言ってんだ?お前は?お前の為に縁組してやった俺のことも考えやがれ!!絶対に結婚しろ!!断りやがったら俺がお前を斬る!!」
と脅された。職権乱用じゃね?
「斬るってそんな…」
「…まぁ相手の令嬢も中々婿が見つからないそうでな。見合いしては逃げられてるから丁度いいだろう。お前が逃げなければ纏まる」
「何すかそれ!それじゃ俺はその女の飼い犬にでもなれって事すか?」
うわっ、絶対ブスだ。だから嫁の貰い手も婿の貰い手もないんだ。だからって何で俺に押し付けられなきゃならないんだ!!
「野良犬のお前にはピッタリだ!とにかく次の休みにセッティングした!行け!見合いに!!」
と独裁者に俺は従うしかなかった。
断ったら騎士宿舎の掃除三年の刑有り。
*
日曜日に俺はめかし込んだ。うん、誰が見ても可愛いワンコ系の美少年かね?
美少年は言い過ぎとしてもそこそこ顔はいいから可愛がって貰えるんだよね。綺麗なワンコ出来上がりっと。
俺の部屋のドアを蹴破り団長が怒鳴る。
「早くしろ!女みてーに時間かけんな!行くぞ!」
と首根っこ掴まれズルズルと引きづられる23歳童貞でーす!
馬車に久々放り込まれ団長が変わりに買っておいた赤い薔薇を渡された。
ったく!花だいは給料から引いておく!
「酷え!!」
と言うと睨まれた。黙ってよ。
俺の婚約者となるのはソーニャ・クリングバル伯爵令嬢だ。手軽なとこだなぁ。まぁ、公爵とか侯爵は流石に期待できないか。
家もそれなりに金持ちだった。
あーあ、何とか断れないものかと思案する。
部屋に通され待っていると伯爵と夫人に娘が出てきて俺はその娘が先日夜会でぶつかった怖い顔の令嬢だと気付いて
「あーっ!」
と声を上げた!!
瞬間ギロリと睨まれた!!
ひっっ!こえっ!
彼女…ソーニャは対面のソファーに両親に挟まれ座った。ガン見!そして睨みつけられ俺は恐怖しかない。
すると伯爵様が言った。
「ああ、この度はどうもうちの娘と会ってくれてありがとう。中々相手が逃げ…いや見つからなくてね」
逃げたんすね?判ります俺も逃げたい。
「勘違いしてるようだから先に言っておく。娘は…ソーニャは…目がめちゃくちゃ悪い!だからこんな睨みつけるような顔なんだ!」
とオロフ伯爵は言った。
思わず団長と2人目が点になった。
今もソーニャは俺をめちゃくちゃに睨みつけポンと手を打ち、
「ああ…あの時夜会で私にぶつかった方ね?ようやく判ったわ…」
と言った。
今!?今判ったのか!?
ほ、本当に目が悪いんだ!!
*
結局、その後席を外され、俺とソーニャ嬢は2人きりにされた。顔は相変わらず睨みつけ声も低い方だから絶対嫌われてると思いたくなる。
可愛らしさなんて何にもねー!!
「ソーニャ嬢…えっと…何か趣味とか好きな食べ物とかあります?」
仕方なく俺は青ざめながら聞いた。恐らくソーニャと見合いしてきたやつはこうやって怯えながら質問していただろうな。
「…………果物のベリーですね。趣味は…小説を読む程度です」
「小説ですか…何の…」
と言うとまた睨まれる!
「特に…普通のです」
と言う気はないらしい。
「ところで……クラースさんは…何というかまだお若いんですのね…私聞き違いでしたわ。23と聞いておりましたのに…」
と聞かれた。めっちゃ睨んでる!!いや…凝視しているのか!?
「あ…あの俺…23なんですけど…」
一応ポツリと言うとガタンと立ち上がったからビクっとした。
ソーニャ嬢は震えながら拳を作る。
なっ、なんだ?なんだ!?何?こわっ!
「貴方…23!?嘘でしょ?そんな…見間違いかしら?少年の様な…容姿をしているのだけど!?」
「えと…よく童顔と言われます」
いつの間にか叱られる子供みたいな図になっている。ソーニャ嬢はツカツカと近寄り
俺の襟を持ちまた顔を近づけた!
めっちゃ睨んでる。いやっ!凝視!
ダラダラと冷や汗が出る。こええし!
至近距離に見られて悪寒が走り、ようやく手を離し
「失礼しました…。随分と可愛らしいお顔をしているからてっきり何かの間違いかと思っていたのに」
まぁ、無理もない。
俺のワンコフェイスに身体の関係はなくとも落ちない女なんていないし。皆可愛がって沢山貢いでくれるし。
この女も顔は怖いが俺の妻になる以上はメロメロになって貢がせてやり、俺に本当に好きな女ができたら俺はあっさり逃げ出すかもしれない。団長には悪いけど仮面夫婦?そういうので今はいいだろうと思った。
しかし…
席に戻ろうとしてソーニャ嬢は派手に転んだ。ドレスの裾を踏んだらしく顔からいった!!
「ソーニャ嬢ー!?」
床にポタリと血がついて、鼻と額から血から出ていた。しかも助け起こすとギロリと睨む。い、いや凝視か。
そのせいで余計恐ろしく見えた。
「わっ!!」
思わず驚きつつも震える手でハンカチを渡して使用人を呼ぶと薬箱を抱えてメイドが
「お嬢様またでございますか!?」
とかけより手早く手当てをしている。
こういったことは良くあるらしい。危ないな。
ソーニャ嬢は鼻に丸めた布詰めながら
「お見苦しい所を…」
と言って睨む。何これ。
怖いけどちょっと面白い。
「ふはっ!あはははは!!ひっ!ひいい!あはははは!!」
と俺はもう大爆笑してしまった。
それを見て低い声と睨みで
「まぁ…失礼な方…」
と言われて俺は
「す、すいません…」
と謝っておいた。
結局その日はそれで終わり、帰りに団長は
「おいどうだ?」
と聞かれたが
「はぁ…まぁ怖かったです」
と言ったら
「………まぁな…。俺も姿絵と違うから驚いた。皆が結婚しないのも判ったわ。すまんよく調べもしないで進めて。今回は俺が悪かった。次はもっと普通の…」
と言うから俺は言った。
「次?次って?俺もうあの子と結婚でいいですよ」
と言った。だって、今からまた見合い何回もするのもめんどくさいしな。
「お前…いいのか?」
「はぁ…婚約すればいいだけでしょ?まぁ、式までに俺の好きな子が現れたら逃げますけど」
ととんずら宣言もしておくと首を締められた。
「おーまーえーはー!!そういうところが悪いんだー!気がないならきちんと断れ!!」
「はっはっはっ!勧めたのは団長じゃないですか!?俺は搾取できるものは搾取していくだけです!お金持ち大好き!!」
と言った。
「最悪だなお前は…」
紹介するんじゃなかったと団長は項垂れた。
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