My sweet home~恋のカタチ。9--mint green--
森野日菜
第1話 Spring has come(1)
萌香は夏希が出て行った部屋を掃除していた。
彼女がいたころは
けっこう散らかしていたけれど、きちんと掃除をしていってくれたのでわりとキレイだった。
夏希が思いっきりドアを閉めて、高宮の足首を骨折させてしまったときのあの騒ぎを思い出してしまった。
あの時はもう
必死だったけど
今思えば、悪いけど笑ってしまう。
萌香はひとりふっと笑った。
かつては自分もここに住んでいた。
彼と出会った頃を思い出すと本当に懐かしい。
「もう掃除はいいよ、」
斯波がやって来た。
「ここは、誰かに貸すんですか?」
萌香は雑巾を絞りながら言った。
「え? 別に。 おれがここに住むようになってから、萌と加瀬以外に貸してねえし。今のトコ考えてないけど、」
「そう、」
「それにあいつが戻ってきたりしたときのために・・空けといたほうがいいかな、とか。」
斯波が大真面目に言ったので、
「もう、何不謹慎なこと言うてるの。 そんなに簡単に戻ってきたら大変やん、」
萌香は笑った。
「あいつら、ケンカするとけっこう激しいし! そういうときに戻ってこれるところがあったほうがいいんじゃないかって、」
「大丈夫よ。 そんなに甘やかしたらダメよ。 『お父さん』。」
「お父さんじゃねえ!」
斯波は赤面してムキになった。
しかし
妊娠したことをまだ彼に告げることができず
萌香は密かに悩んでいた。
そして、もうひとつ彼女を悩ませていたものは・・
「志藤さん。 事業部から身を引くって、」
斯波はボソっと言った。
「え・・」
萌香は立ち上がる。
「・・おれに事業部の本部長を・・頼むって言われて。」
とうとう
彼にも言うたんや
萌香は
うつむいた。
「萌は聞いてたの?」
と言われて、
「・・この前。 ちょっとだけ。 まだ、あなたにはきちんとした状態で話したいからって・・黙っててくれって言われたし、」
萌香は斯波の目が見れなかった。
「そっか、」
斯波は大きくため息をついた。
彼も
不安そうだった。
何とか
後押しをしてあげたいけど。
何故だか
萌香は動くことができずにいた。
仕事上のことでは
もう、志藤本部長の代わりに何でも動かして来た人だけど
不器用な人だから
人付き合いだとか
部下とのコミュニケーションだとかを取ることができるか
それが心配で。
私も
この人の力になってあげなくちゃ
そう思えば思うほど
心が苦しくなる。
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