天の塔

えまな

第1話



星まで届く天の塔があり、王子様が住んでいると言い伝えられていた。

ある時ひとりの旅人が、探し歩き続けた末に塔へ辿りついた。

見上げると、頂きがわからないほど高かかった。

それが本当に天の塔かわからないまま踏み入れた。


期待と不安を抱えて、気が遠くなるまで続く螺旋階段を上りきる。

行き止まりに立ち尽くし、目を凝らして見回せば隠し扉を見つけた。


扉の先に部屋があった。天井は丸く空いていて、壁は3箇所抜けている。

その向こうに星空が広がっていて、眺めるように子供が1人いる。

久しぶりに誰かと会った旅人は感激して声をかけた。


すると突然現れた旅人に子供は驚いて倒れた。

旅人が慌てて介抱した時、子供に体温も体重もない事に気づく。

旅人はその時、元いた世界からかけ離れた世界に来たのだとわかった。

ここが天の塔で、その人が王子様だと確信した。


王子様が目を覚まして2人はたくさん話をした。

王子様は旅人の話に憧れて、旅人は快く語った。


旅人は2人で塔を下りる提案をしたが、塔しか知らない王子様は怖くて辞退した。

それから王子様は、いつまで旅人と過ごせるかを考えるようになった。


交流しながら流れてくる雲や星屑を集めていると、それが新しい小さな星になった。

どんな星になるだろうと話す旅人は、すでに心が旅立っているようだった。

王子様も立派になっていく星を見ているうちに、塔の外へ行ってみたい気持ちが強くなっていった。


成長して大きくなった星を天井の吹き抜けから外に出して、2人で眺めて過ごした。

天高く昇っていき、1番に輝くほどになると、塔が揺れた。


2人は浮かび上がり星に向かってひっぱられていく。

塔と一緒に星へ落ちていった。


そして星に降り立った。天地がひっくり返ったので塔は逆さまになっている。

王子様は塔を下りて、旅人の知る世界を見ることはできなかったけれど、新しい世界にやってきた。


旅人は手を差し伸べ、王子様はその手をとって星を巡った。



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天の塔 えまな @emana_namae

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