母をたずねて異世界へ~四つ子たちは元気いっぱいに大暴れしています~

テルヤマト

第一章:四つ子たち異世界に立つ

0-はじまりの語り

 その少年には語るだけの言葉を持たない――否、言葉を持たないのではなく語れないのだ。


 故に、彼の言動は他者からは理解不能なものに捉えられてしまう。


 この世界の魔術師、ルア・ラ=クオリア・マクナ・ストロハイムも例外ではなかった。


 その少年と初めて出会った時――彼が解き放ったとてつもない力の本流を目の当たりにした時彼女は、彼を自分と同じ人間だとは思えなかった。


「これが、異世界人の力……!?」


 彼の腕の一振りで森が消え、川が消え、そこにいた生命全てが消え去った。


 洗いざらい真っ平らに整地され、そこには何もないむき出しの地面だけが残った。


 彼女の常識ではそれはもはや人智を越えた神の所業としか思えないほどの絶大なる力の光景を、とても幼いたった一人の少年が為したのだ。


 まだあどけなさが残り、無力で無知で無垢な少年。


 傍から見ればそうとしか思えない彼に、彼女はただ萎縮した。【四元素クオリア】の称号を持ち、大魔術師と謳われた彼女ですらである。


「彼は……いったい、何なの…………?」


 荒野となったその場所で彼は一人立ち尽くし、そしてすぐ近くで見ていた彼女の方に振り返った。


 思わず肩をビクつかせ、冷や汗を流す彼女に、彼は満面な笑みを浮かべてみせる。それは無邪気でどこにでもいるような可愛らしい子供の笑顔。


「ハハハハハハ! アハハハハハハハハハハハハ!」


 彼は高らかに笑った。月明かりの下、己が消し去った景色の前に立ち、ただ一人で。


 少年は何も語らない、何も伝えない。故にその行動は常に周囲の人に不気味さをもたらした。時には奇怪さを。時には恐怖を。


 しかし、彼女は思った。


 それでも彼の笑顔がとても尊いものに見えたのはどうしてだろうかと。



 彼女がその答えを見出すのに、あまり多くの時間はかからなかった。

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