第66話 白い鳥居に

 その日、私は朝を迎えた。


 無事過ぎる朝だった。


 体が軽く、まるで魂は自分の体から数センチだけ浮いてるかのように、意識はあるが余分なものは無い状態になっていた。


 日常を偶に掻き回すスパイス。そんなものいらないと、今この瞬間まで思っている。


 だが、このスパイスが血を活き活きとさせる。


 寝起きだが、多分今の私は自分で言うのも何だが、美しいだろう。


 顔はスッキリとし、髪もまだ触ってはいないが潤いに満ちていると思う。


 それだけいい夢を見れたんだ。


 もう忘れたけど。


 きっと、笑ってたんだ。


 幸せって、分かったんだ、きっと。


 暫く私は窓の外を見た。私の物語は、あの日ここから葉が入り込んだのがきっかけなのかもしれない。


 「分かった」


 重たい唇からはっきりとした言葉。


 今日は、会える日。それが伝わってきた。


 静かにベットから降り、何のダルさも感じず服を着替えて、出かける準備をした。


 そして、この場所。神社に来ていた。


 いつもは灰色の現代に馴染んだ鳥居が、今日は異国、いやこの鳥居が建った当初のように白く綺麗に光っていた。


 階段も心なしか綺麗で、まだあまり人に踏まれていないような輝きをしている。


 ゆっくりと足で踏み、その感覚もいつもより凹凸を感じる。


 一晩で何が変化するしたのか。


 風のささやく音。木の潤い、花の唄。


 言葉の表現が一気に落ちたようだ。何とも表し難い世界が目に広がる。


 数少ない階段を上り、見えた物に私は安心した。


 「おはよう、すずちゃん」


 私には大切な存在がいたんだ。そこには夜姫さんと仁さんが拝殿の前で、待ってたよと言わんばかりに立っていた。


 「おはようございます」


 気温が徐々に上がり、心はみぞおちの辺りで溶けた。


 

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