第5話 じゃあ忘れるね

 「そのおじいちゃんは何で鈴音って名前を付けてくれたのかな?」


 若干イライラしながらも母親は悪くない。無邪気に聞いた。


 「さぁ…何でかな…」


 あれ?もしかして興味無いのかな。


 母親の視線は私から近くにいた龍也に移動した。


 何か、隠してる…?


 母親の目が曇ったかのように見えた。本当にどうでもいいんだ。


 悲しかった、率直に。


 もういいや、こんな事に真剣になるなんてバカバカしくなった。


 私だけだ、興味というか真相を知りたくなったのは。


 「そっか…どうでもいっか!こんな事」


 吹っ切るためにも大きめの声で言った。


 フツフツと腹の底では煮えたぎる物があったが、無視してやった。


 どうせ、人からすれば大した事ではない。


 それに悩む時間。


 どう考えたって無駄だ。


 この事についての情報をもう聞きません。


 あなたがそんな顔をするのなら、私は二度と聞きません。


 それから私は名前の由来の疑問も、名付け親の事への疑問も


 全て無いものとした。


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