EPISODE46:「到来」
(わたしの……わたしのせい……?)
マリカの心の中は沈んでいく。彼女は善良な人間の上にそこまでメンタルは強くない。
(この異能が無ければ……)
ゴーレム発生やロボット降臨、怪物誕生はなかった。
誰も怪我をせずに済んだ。
そして――死者は出なかっただろう。
(こんなモノ……いらない!)
元々あまり好きではないチカラ。いっその事相手に渡してしまおうかと思った時だった。とある二つの言葉が頭を過る。
『チカラにはね、正誤も貴賤もない』
今は亡き祖母の言葉。
『指切り。もし何かあったら助けに行く。絶対に』
最近出来た友人の言葉。
そして――
(ああ、そうか……。やっとわかった)
今この瞬間に分かった。どうして彼――シンゲツ=カイと友人になろうと思ったのか。悪い人ではないという理由だけではない。
(シンゲツくんとお祖母ちゃん……そっくりなんだ)
彼は性別や年齢等は何もかも違うが雰囲気が大好きだった祖母に似ている。だからこそ交流をしようと思った。
「さあ能力をわt」
「助けて」
迫る相手にマリカは呟く。
「……助けは来ませんよ」
男は自信を持ってそう言う。何せ追跡防止手段を山ほど使った。更に転移まで重ねたのでほぼ不可能。
「さあ、渡しなさい!」
「助けて!シンゲツ=カイくん!」
叫ぶマリカ。それにすさまじく嫌な予感を感じた男は口を塞ごうとするが――
「ああ、任せろ。クオン=マリカ」
「ぐ!?」
聞き覚えのある声が響き人影がマリカの前に降り立つ。……ついでのように男を蹴り飛ばしてから。男は不意打ちで襲い掛かった蹴りを両手を交差させて防ぐも法則歪曲を攻撃極振りにした蹴りを喰らい吹っ飛んだ。
「し……シンゲツくん?」
「ああ」
降り立った影――カイに確認するマリカ。それに頷くカイ。彼女の無事を確認するとフウと息を吐く。
「良かった。間に合って」
そう言うとカイはマリカに近づき彼女の拘束を解く。【ジェノサイダー】の刃だけを部分的に展開して拘束を切断し引き千切る。……因みにそう簡単に千切れる物ではない。
「え?」
「言っただろ?俺はいつも間に合わないって」
「……」
「でも……今回は間に合った。ありがとう」
カイが微笑む。その笑みに釣られるようにマリカも笑う。
「わたしにお礼言うのは何か違うと思うけど?」
「じゃあ誰に言えば良いかな?」
「……」
その言葉に考える。首を捻るカイにマリカは苦笑して意見する。
「相棒さんでいいんじゃない?」
マリカはカイとの交流で名前がよく出て来る彼女の事を知っていた。
「それもそうか。ありがとう――
「アリスさんって言うんだ。……ありがとうございます」
今は
『気にしないでいいよ~』
一瞬誰かの声を聞こえたような気がする中……
「ふう……やれやれ」
第三者の声が聞こえた。カイが先程ぶっ飛ばした男だった。吹っ飛んだ先から戻って来た。特に外傷もないように見えたが奇妙な事になっていた。
「!?」
「お前……それ」
男の顔が剥げてそこから違う色の肌が見えていた。彼らの指摘に男は顔を触り……
「?……ああなるほど」
そう言うと皮を剥がした。そこから眼鏡を掛けた男の顔が現れる。それ以外に特徴のない男である。
「……成り代わっていた訳ね」
「ええ。昔手に入れたチカラでして、皮の持ち主の容姿と記憶、感情、技能に擬態できるのです」
「ふうん。それでバレなかった訳か」
納得しながらマリカを後ろに庇うカイ。
(さて……どうなる?)
相手の行動によって対応を決める事にするカイ。とは言え最終的な行動はカイの中では完結していた。後は過程がどうなるかだった。
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