EPISODE37:「剣轟」
カイとイオリが移動していると、イオリの端末が震える。それを確認すると――
「生徒の避難は九割終わったって」
カイに伝える。それにカイは顔色を特に変えず気になった事を訊ねる。
「……死傷者は?」
「怪我人はいるけど、死者はいない」
「そうですか……」
少しだけ顔色が和らいだようにイオリには感じられた。
「ところで――」
「うん?」
「一割は?」
カイの言葉と視線にイオリは思わず視線をずらす。少しして……
「粗方は避難中。でも……一部と連絡が付かない」
「……もしかして」
「多分君の予想通り」
二人の脳裏に浮かんだのはとある男。
「あのゴリラですか?」
「うん。その一味。合計八人」
二人して溜息を吐く。
「これどうなりますかね?」
「無罪放免は無理。いくらなんでも迷惑かけ過ぎだからね」
「――死刑?」
「それはないね。退学とか罰金辺りかな?……殺したいの?」
その言葉にカイは……
「さあ?」
肩を竦める。
「
「(まるで前は面倒じゃない言い方。)そっか」
因みに、カイがいた異世界はほとんどの場所が法などないに等しい。だからこそ殺し殺されるなど日常茶飯事。……
しかし今はそんな事出来ない。法は存在するし恨みを買う。
なので――
「……一応殺さないようにはしますけど」
「絶・対・に!教師として流石に人殺しは容認できないよ?」
「……」
「何だい?」
「“剣轟”にそれを言われるとは」
「元だから。今は抜けた身だからね」
“剣轟”。剣士の群れである“剣轟衆”に所属する魔導剣士を指す。その最強格が“五剣”、そして“八■”の一人である。
「キミならできるだろう?」
「……はい。まあ手加減出来なかったら許してくださいね」
「ん?あの程度余裕だろう?」
「何か隠し玉あるかもですし」
出なければこんな事態を起こさない。それに窮鼠猫を噛むという言葉もある。それに
「……はあ。できるだけ頑張ってみて。ボクも手伝うからさ」
「それなr」
心強いと続けようとしたが続けられなかった。移動する二人の元に突如弾丸が降り注ぐ。それを防ぐ二人。カイは避け、イオリは風で逸らす。
「ゴーレムの次はロボか……」
「自然発生……な訳ないね」
「誰かが持ち込んだんでしょうね」
平然と会話する彼らの前にいたのは人型のロボット。大きさは三m程。右手が
『標的生存確認。排除続行』
再び
「チッ!」
カイはすぐさま歯車
「……どうします?」
「ボクがこれを引き受ける」
イオリの言葉に目を少し見開くカイ。
「いいんですか?」
「うん。キミは先行って」
「……わかりました。ご武運を」
そう言うとカイは歯車
「……」
それを無言で見送り思考する。
(
イオリの推察は間違えではない。だが――まだ足りない。そして何より――召喚ではない。
閑話休題。
そんな事を考えていると……
「おや」
再びミサイル攻撃。どうやら自動装填されるらしい。だが――
――剃刀風刃
風の刃がミサイルを撃ち落とす。再び爆発。そのままイオリは風刃をロボに向けて放つ。だが――
「うん?」
ロボの装甲に当たった途端に風が霧散した。
「もしかして……
特性としては加工によっては液体になる事と、もう一つの特性がある。それは魔力を打ち消す効果。つまり魔導術式の攻撃が一切効かない。それゆえ加工できる所と人はかなり限られる。だが、その有用な特性上にある程度は使われる。
「……もしかしてボク対策?」
なるほど。弾幕を張り、中距離・遠距離攻撃手段を潰して距離を取って潰せば自分を倒せると踏んだのだろう。だが――
「ハッハッハ。――ボクを舐めすぎ」
声が低くなる。腰から
「キミに良い事教えてあげる」
「確かにボクは“五剣”にはなれなかった」
後一歩で敗れた。しかもその相手は自分と切磋琢磨して来た友達。その時の悔しさは今でも思い出すたびに体を掻き毟りたくなる程。
「でもね」
弾丸が放たれる。
「少なくともキミより――ボクの方が強い!」
今の世界だからこその(?)戦いが始まった。
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