EPISODE35:「始動」
そして――それは始まった。
一番最初に気づいたのは何かあった時の為に呼ばれている探索士のパーティーの一つ。剣士、雷使い、支援の魔導士でバランスが取れている中堅どころ。今回の報酬が悪くない上、危険な事態はそう起こらないと判断して引き受けた。
ドドドドドド!
「ん?」
「何の音?」
「……何かが走って来るような音だな」
その方向にやって来たのは……九体のゴーレム。しかも普通のゴーレムよりスマートで武器を持っている。ずんぐりとした騎士のよう。
「ゴ、ゴーレム!?何で!?」
「おいおい、
「話は後だ!今は切り抜ける事だけを考えろ!」
リーダーである剣士の言葉に残り二人はすぐさま意識を切り替える。そして戦闘開始。
「オリャア!」
攻撃強化を載せた剣士の一撃は騎士ゴーレムに受け止められる。そのまま何合かの打ち合い後何とか斬る。そのまま返す刀で騎士ゴーレムを食い止める。支援使いはバフやデバフを掛け、回復させて剣士を支援する。そして雷使いは大技の溜めに入る。これが彼らのいつものやり方。だが――
(……硬っ!バフ掛かってなきゃ斬れなかったぞ!?)
騎士ゴーレムは周囲の土や石で作られた物であろう。だがそれらがかなり圧縮されているせいで結構硬い。恐らく素の強化だけでは途中で止まる。
余談だが、この剣士の使っている剣の素材は合金。魔法金属――
「この仕事が終わったら――
死亡フラグ全開な事を言いながらゴーレムを相手にする剣士。後衛である二人の元には絶対に通さない。
「準備完了!引け!」
「!」
雷使いの言葉にすぐさま下がる剣士。そして――
――――サンダー・オブリテレイト
荷電粒子砲が騎士ゴーレムに放たれる。まとめて全てを消し飛ばす。それを確認すると一息付く。
「ふう……」
「終わったわ」
「……いやまだだ」
一息付く支援使いと雷使いに対して剣士は気を抜いていない。
「きっとここだけじゃない。他の所でも起こってる!行くぞ!」
「「ええ~」」
「いいから!」
剣士は支援使いと雷使いを小脇に抱え次の場所に移動し始めた。
実際この剣士の考えは大当たり。
下級の魔物しか出ない所に大量発生した騎士ゴーレム。攻撃はまあまあ、速度は常人でも走れば何とか逃げ切れる程。だが防御が異常。
「喰らえ!」
斧使いが騎士ゴーレムに一撃を放ち、それを真っ二つにした。そのまま横に一閃してそれを更に両断。四分割にする。
こちらは教師と探索士の合同で突如現れた騎士ゴーレムの一団と戦っていた。後方に生徒達がおり彼女らを守って戦っているのだが……その防御力に苦戦していた。その上――
「!?」
「チッ、四つじゃ駄目か!」
四つに分けた騎士ゴーレムがそれぞれ再生する。まるでヒトデやプラナリアのように。
これがこの騎士ゴーレムの特性。斬られ、砕かれても破片がある程度の大きさがあればそれぞれの破片から再生する。……とは言え粉々や木っ端微塵だとアウトのよう。更に――
「糞!また増えた!」
時間経過で分裂していく。それこそがこの騎士ゴーレムの厄介な点である。だからこそ中級クラスにこの騎士ゴーレムは等級付けされるだろう。それが群れとなって襲い掛かる。質が悪い。
とは言え……彼彼女らとてやられっぱなしではない。
「……わかった」
一人の教員が緊急の通信を受け取る。そしてその内容をこの場の全員に伝える。
「ゴーレムは十等分以上にすれば再生しない!そして分裂は五分置き!それと……水系等は効きにくいが、風系統はよく効きやすい!最後に核を砕いても倒せる!」
その言葉に全員がその指示通りに動く。そして五分後……
「「「「「「はあ……」」」」」」
どうにか倒し終わった。だが――
「次行くぞ!」
「「はあ……」」
あちこちから救援要請が届いている。完全に大混乱である。
「負傷者も出ているらしい……」
「死者は?」
「今の所報告はない」
それのみが唯一の救いだろうか?そう言う訳で生徒達に緊急時の集合場所へ行くように指示し、探索士一名を護衛に付かせ次の場所に移動する一団。
その中で教師の一人が同僚に訊ねる。
「……なあ」
「何だ?」
「このゴーレム大発生の原因って何だと思う?」
ゴーレムの発生要因は二つ。自然か人為か。それに同僚の教師――魔物の博士と呼ばれている。授業でも魔物について教えている人――が即答する。
「絶対に人為的な物。賭けてもいい。それに品種改良されてるしな」
「「「「「「確かに」」」」」」
全員が同意。あの騎士ゴーレムはどう考えてもおかしかった。だからこその言葉である。
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