EPISODE32:「家族」
沈黙するカイ。そんな中リョウは……
(やっべえ……。聞かなきゃ良かったかもしれない……)
カイの提案があり、暇だったとは言え軽々しく頷いた事を後悔していた。とは言え――
(残りも気になるんだよな……)
まだ幾人か残っていると思われる。だからこそ……
「……それで?」
先を促す事にした。
「……ああ。じゃあ次はあの二人だな」
「……さっきの馬鹿共みたいな?」
「ちょっと違う。あの二人は同族嫌悪同士だったけど、こっち二人は主従だったから」
主人と従者。お嬢様とメイド。
『オーホッホッホ!』
『よ、お嬢様。あんぽんたん!おたんこなす!土手南瓜!』
ベアトリクス。悪性は『■■』。リリアーヌ。悪性は『悪意』。
「まずは
「わかってるよ!?」
当たり前である。
「昔色々あって御屋敷でバイトする事になってね、その時のその主だった訳」
「そんな所でバイトしてたの?お前」
「うん」
ある理由……というか大方先輩のせいで雇ってもすぐに辞めていく。そんな中カイはそこで働く事になった。
「すぐに仲良くなれてね。元々アイツ自体は良い奴だから」
いつも明るいお調子者。偶に余計な事を言うが。だからこそ彼女との何気ない日常がカイの心を救った。だからこそ二人は愛称で呼び合うようになった。……まあ雇い主だったのでプライベート限定だが。
「でもなあ……アイツ……」
「嫌な事でもあったのか?」
「内も外もボロボロなのに生活習慣を一向に改善しなかった」
大酒飲みで幾つもボトルを開ける。
極めつけはアルビノなのに太陽を浴びるのを好んでいた。しかも日傘――彼女の
だからこそ全身癌に侵され余命僅かだった。
「好きに生きて好きに死ぬ。それを正に有言実行したんだ」
「……」
「真似するなよ」
「するか!?」
だが残される人の気持ちを考えて欲しかった。遠くで訃報を知った時は泣いてしまったのだから。
「そしてその従者が先輩」
「どんな奴?」
「口を開けば毒舌、煽り、悪口、暴言、罵詈雑言」
「最低だ!?」
これこそが心友の屋敷に使用人が彼女一人しかいない理由。口を開けば罵倒しか出ないので耐え切れなくなってやめていく。
「まあ俺は慣れていたし」
「……コメントに困る……」
カイの場合は
「でも口撃以外に手足が出る事はないし、結構優しい人だったよ」
「そうは思えねえ」
わからない事は教えてくれる。……毒舌混じりだが。
昼食はいつも作ってくれる。……暴言混じりだが。
困っていると助けてくれる。……罵倒混じりだが。
「心友とは主従以上の関係だったな……」
アレは友人同士と言っても過言ではない。
「一応聞くけど、その人にも……?」
「当たり前」
いつも主人に色々言っていた。それにツッコミを入れるのがお約束。……とは言え心友自体も余計な事を言うのでそれに関節技を掛けていた先輩でもある。
「でも――固い絆で結ばれてた」
だからこそ心友が死んだ後は後始末をしてから殉じたのだ。カイがそれを知ったのは全てが終わってからである。
「次は――団長にするか」
「……お前は夏休みに一体何をしてたんだ?」
「色々」
ツッコミを受け流し思い出す。
『男は男と、女は女と。同性同士で恋愛すればいいと思います』
アスト。悪性は『■■』。
「昔のトラウマで凄い男嫌いな人でね」
……まああんな目に合えば誰だって男嫌いになる。余談だが、盟友はこれを遥かに上回る酷い目にあっている。精神崩壊しなかったのが奇跡。
「でも――俺は何か好かれてた」
「……女顔だからか?」
「それもあるかもね」
元々カイは男性としては小柄な方。そして
「最初は俺を女と勘違いして
「そ、そうか」
「でも、交流していく中で隠し続けるのは嫌でね。カミングアウトした」
「……で?」
「ビンタされた」
「……それで済んだのが奇跡だよ」
槍での串刺しも覚悟していた。余談だが、彼女の
「でも……ちゃんと仲直りできた」
「そうか」
『何故でしょうね?ウチは貴方なら平気です』
因みに謝って来たのは彼女からだった。
「色々教わったな」
「ええと……何を」
「まず女性とのデートの仕方、悦ばせ方、後h」
「もういい」
遮るリョウ。ぶっちゃけそんな話聞きたくもなかった。
「じゃあ最後に……」
「誰だ?(最後なのか……)」
「相棒」
『地獄の果てまで相乗りしてね?』
アリス。悪性は『■■』。
「とても大切な友人」
戦友を失い途方に暮れていた時に運命の出会いをした。そこから友人――仲間や家族のような人達――との交流が始まった。
「……」
思い出していると無言になってしまうカイ。暫くして絞り出したのは……
「ずっと……ずっと一緒にいるって約束したんだ。なのに……」
その言葉だった。そしてそこからカイは黙り込んでしまった。
……一方リョウは――
(……止めれば良かった)
聞いた事を完全に後悔していた。
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