EPISODE26:「実習」
授業が終わり昼休憩の時間となる。そう言う訳――
「お腹空いたな……」
弁当を広げるカイ。そこへ――
「一緒に食べよう、シンゲツくん」
今日もマリカがやって来た。更に――
「俺も一緒にいいか?」
リョウもこちらにやって来た。それに加え――
「キー君、いますか?」
「ウチもいるよ!」
サクヤまでやって来る。ナミがおまけでついて来た。なので――
「いいよ」
快く了承。そんな訳で五人で食べる事にした。
(こんな人数で食べるの久しぶりだな……)
そんな事を思いながら弁当箱を開ける。因みにカイの今日のメニューは御飯、唐揚げ、卵焼き、枝豆(革は剥いてある)である。飲み物は麦茶。まず枝豆を取り食べ始める。
「そういや今日凄かったな」
そんなカイにリョウが話しかける。因みに彼は登校中に買ったのり弁を食べている。飲み物は紙パックの野菜ジュースである。
「何が?」
「イブキ先生と渡り合っていただろう?」
「……凄かったよね。あの戦い」
「そうなのですか?」
マリカが思い出したように言い、サクヤがカイを見て訊ねる。頷くカイ。因みにマリカとサクヤも弁当持参である。メニューはマリカは混ぜご飯、一口ハンバーグ、サラダ(色々入っているせいかカラフル)で、飲み物はほうじ茶。サクヤは三つのお握りで具は鮭、明太子、おかかで、飲み物は抹茶。
「へえ。凄いね。流石サクヤと渡り合っていただけあるねえ」
「マジか!?」
ナミのコメントにリョウが食事の手を止めカイを見る。因みにナミのメニューはアンパンと牛乳のみ。小食らしい。
「一応ね。とは言ってもじゃれあいみたいなものだし。……なあ」
「そういう事です。私は『槍』を使いませんでしたし、キー君だって奥の手使っていないです」
「そういう事」
「まあ、貴方の場合は最後まで取って置いて使わない事も多いですよね。将棋とかカードゲームでも」
「否定できないけど……最近多少は改善してるぜ?」
実際昨日は悪友と親友の
「そうですか~」
「そうだよ」
仲良く会話する二人。
それに――
(仲良いな……)
(本当に幼馴染なんだ)
(……後でいじってやろう)
そんな事を思っていると……
「「何か?」」
「「「いいえ、何も」」」
その後、とある話題となる。それは――
「……そういえば」
「どうしました?ナミ」
「一年生はそろそろだよね」
「何がですか?」
「野外実習」
「そういえばそうですね」
一年生にとっては『交流戦』と同じ位大きなイベントである『野外実習』の事だった。だが全く知らない男が一人。それは――
「何それ?」
ズル!!
シンゲツ=カイである。そのコメントに全員ズッコケる。
「し、知らないのかよ……」
「もうすぐなのに?」
「キー君……」
何とか起き上がった三人から呆れられる中――
「イオリ先生まだ説明していないからしょうがないよ、きっと」
マリカだけはカイのフォローの回る。性格が表れている。
「フォローありがと。で……何なのそれ?」
「……。まあいいでしょう」
少し呆れながらもサクヤは説明する。時々他の面々もフォローを入れる。
野外実習。五大魔導学園で行われる行事の一つ。一年生にとって交流戦に並ぶイベントである。
校外――無論普通の街や郊外とかに出るのではなく、魔物が出る場所で一泊二日の遠足とキャンプが合わさった物を行う。因みに通過しなければならないチェックポイントがある為一ヶ所に留まっての籠城は駄目である。
「まあチームを組むし、行く所も比較的危険性のない場所だから大丈夫」
そういうナミ。実際下級の魔物が出る場所にしか行かない上、事前に教師や雇われた探索士が事前に見回ったり、魔物を間引きするのでほぼ安全。なのだが――
「……」
カイは無言。彼は知っている。千パーセント確実という物は無いと。
「本当に?」
疑わしい目線を二人の先輩に向ける。
「ウチらの時は大丈夫だったよ。会長の時も大きな事故もなかったそうだし」
「……」
じーーっ
眼つきを鋭くして二人を見ると――
「……確かに万が一あります」
サクヤが降参を示すように告げる。
「十数年前に他の学園の実習の際、特級クラスの魔物がそこに転移してきて……」
言葉を切るサクヤ。結果は言わずもがなだろう。それを聞いたマリカとリョウの顔が暗くなる。が……
「だからこそその教訓を活かして実力者を呼ぶんだよ。ウチらの時は“双射”が来たし、会長の時は“九無”が来たってさ」
「じゃあ今年も誰か来るのですか?」
ナミの明るい発言にリョウが期待を込めた声で言う。因みに先輩にはちゃんと敬語が使える彼である。
「確か……“七色”が来る手筈でしたよね?」
「うん。そのはず」
サクヤが思い出すように言うとナミが頷く。
「それなら安心ですね!」
マリカはそう言って笑う。何とか雰囲気が明るくなるが……
(ならいいけど……)
カイだけは内心心配していた。
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