第二部 勇者の核と鍵の者
第1章 心と記憶と核
第47話 目覚め
その村には、ごく平凡な青年がいた。青年は農業や狩猟などを職として暮らしていた。青年の両親は健在であり、平和に暮らしていた。青年には同い年の女性の幼馴染がおり、いずれは2人は結婚し、幸せな家庭を築くと思われていた。少なくとも、青年はそう考えていた。
しかし、その夢は儚く砕け散ってしまった。村には突如、人型の人形が現れ次々に住人を殺していった。青年の両親も殺されたが、青年と幼馴染は生き残った村人と共に、村を逃げ出すことに成功した。
苦しい逃避行の中で、青年と幼馴染は手を取り合いながら大都市まで逃げることをに成功した。しかし、それは希望をもたらすどころか、さらなる絶望を青年等に叩きつけたのである。
大都市は既に廃墟となっており、人の気配が感じない程に荒んな状態であった。逃げてきた村人の中にはこれは以上の逃亡は無意味と諦め、自ら死を選ぶ者や襲い掛かってくる人形に無抵抗に殺される者が後を絶たなかった。
青年と幼馴染は、そんな状況下でも逃げ続けた。何処かに必ず希望があるはず、と信じて前を向き歩み続けた。しかし、逃避行の中で幼馴染は青年を庇い致命傷を負ってしまった。
青年は必死に幼馴染の名前を叫んだが、幼馴染の体から熱が失われていくの感じ、その声は嘆きに変わっていた。青年は生きる希望を失い、全てを諦めかけたその時、青年の中に身に覚えのない記憶が蘇った。
それは、かつて自分が勇者として世界の敵や神と戦った時に記憶である。青年は大きく動揺したが、目の前には人形が自分を殺そうと迫っていた。青年は人形の攻撃を躱すと、持っていた短剣で人形の首を跳ね飛ばした。その動きは今までの青年の動きではなかった。記憶と同じく体が、いや心が覚えていた動きである。かつて何度も訓練した動きであった。そして、青年は自問していた。
「俺は・・・・・勇者?世界を・・・・救う者?・・・・・俺が・・・・救うのか」
かつて、自分に"諦めるな"と言った幼馴染がいた。共に苦しい戦いを生き抜いた仲間がいた。この世界にも大切な両親や大好きだった幼馴染がいた。その全てを失った青年は、いや勇者は戦うことを決意した。青年は歩き出していた。それは、今までの逃避行ではない。敵と戦うため、この悲劇を生みだした元凶を倒すために歩み始めたのである。
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