勇者に選ばれたけど無茶苦茶弱い俺が全てを救うまで

火臥王

第一部 勇者と神と世界の敵

第1章 10の世界の敵

第1話 勇者の誕生

「勇者!覚悟しろ!」

「こっちは勇者コール様だぞ!お前のような雑兵など余裕だ!」

と言って剣と剣が衝突した。そして、片方の剣が吹き飛ばされた。それは・・・・・・勇者の物であった。

「・・・・・あれ?」


----------------------

 壮大な神殿。そう、壮大である。自分の形容詞の乏しさに落胆しかないが、とにかく凄い絵が描かれたガラスや高い天井、我が家の何十倍、何百倍もある広場、何もかもが壮大な場所である。

 今日は成人の儀のために神殿まで来ていた。ここでありがたい御言葉を拝聴し、種々の儀式を完了すれば晴れて成人である。


「いつまで見とれているんだ、みんなは先に進んでしまったぞ」

「そりゃあ見とれるだろ。こんな建物は故郷には無かったからな」

 故郷の友達であるジンと共に進みながら、周辺を見て呟いた。


「俺はさっさと終わらして帰りたいぜ。こんな所にいると肩がこる」

「次の儀式で最後だっけ?」

「ああ、選定の儀だな。勇者かどうか確認する儀式だな」

「やっぱり剣とか抜けるか試すのかな?」

「お前、事前の説明を聞いていなかったな、剣など使わないぞ」

「え?じゃあどうやって選定するの?」

「はぁぁ。受付で渡された札があるだろ。持っている者が勇者だと儀式の際に色が変わるらしい」

「はぁ?!この札か?剣とか使えよ!」

「どうせ俺らには関係ないから別にいいだろ。伝承では札で選定できるらしいが、過去に選定された勇者はいないらしいぞ」

「こんな安っぽい札なんて使っているからだろ!やっぱり剣だろ!」

「そうは言ってもな。ほら、そろそろ始まるから黙ってろ」


「本日の儀式は選定の儀のみとなります。皆様、配られた札を手に持ち、目を閉じ、神に祈りを捧げてください」

 参加者は一斉に札を手に持ち、目を閉じ、祈りを捧げた。神官は参加者を煌びやかな光で包み儀式を開始した。


「目を開けてください。札の色が赤くなった方は手を挙げてください」


「やっぱり変わらないか。おい、コールはどうだ?聞くまでもないだろうが」

「変わった・・・。やばい・・・やばいやばいやばい!色が赤く変わってる!!」

「本当か?!確かに変わってる・・・・・」

「よっしゃあ!!俺が勇者だ!!」


 周辺の者たちが異常に気付き、騒々しく話している。

「赤い!」「勇者が現れた!」「勇者だ!勇者!」「マジで色が変わるんだ!!」


「へぇっへ!ついに俺の時代が来たぜ!」

「勇者様!こちらへどうぞ!!」

 神官に促され、舞台に登った。

「勇者様!今後は様々な装備や道具の受け渡しがありますが、まずはこの剣を受け取り下さい。これは勇者様しか持てないと言われる伝説の剣です」

「へぇ。よっと!これはかっこいいな!」

「おおおお!これは!皆の者!!勇者の誕生です!これで世界は救われる!!」


 その時、案内役であった者が剣を抜き勇者に襲い掛かった。

----------------------


 襲ってきた案内役はニヤリと笑い、そして叫んだ。

「何が勇者だ!弱いじゃないか!!これなら殺れる!」

「うわぁぁ!なんだ勇者に選ばれたら特別な力とか貰えないのか?!た、助けてくれ!!」

 逃げ出そうとした勇者は、後ろから迫ってきた案内役に斬られてしまった。勇者は背中を斬られ血が飛び出し床に倒れこんでしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る